2005年12月19日

2000 Miles J(It Must Be Christmas Time)

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The Pretenders / Extended Play

僕とアキコは、アライグマ男のコートを借りてログハウスの近辺を散策していた。
雪はかなりの高さまで降り積もっていた。僕らはヨロヨロと足を取られながら歩いた。
アキコが大声をあげて雪上に尻餅を突いた。僕は呆れながらアキコを抱き起こした。
アキコは雪を払い落してケラケラ笑っている。僕はアキコが、尻餅を突いた場所を覗き込んだ。
「ずいぶんデカイ穴が掘れたな」
「気合の入ったお尻でしょ」アキコはお尻を振って笑った。

小高い丘の上から限りなく広がる雪景色を眺めた。雪の光で目が痛くなるほどだった。
「すごい景色よね」アキコは感嘆の声を上げた。僕も景色に見とれながら、うなずいた。

「雪景色を眺めていると<耳うさぎ>の話を思い出すわ」
「<耳うさぎ>って?」僕はアキコに聞いた。
「<耳うさぎ>はね。寒い・の夜に現れるのよ。・の星座の光を浴びると耳が族色く光り始めるの。
<耳うさぎ>を抱いた者は一つだけ奇跡を起こす事が出きるって言われているのね」
寒風が吹いて、僕らは肩を寄せ合った。

アキコは話しを続けた。
「誰もが、奇跡を求めて<耳うさぎ>を捕らえようとしたわ。でも<耳うさぎ>は、とても利口で、どんなに大勢の人間から追われても、どんな罠を仕掛けられても、決して捕まらなかった。
 
ある夜、年老いて身体の村った男が雪山にうずくまっていたのね。<耳うさぎ>は彼を助けようと彼の胸の中に飛び込んだのよ。
『あなたは奇跡を起こす事が出来ます。あなたが心から求める物事を思い浮かべるのです』そう<耳うさぎ>は年老いた男の心に語りかけたのね。

男は『私は全てを失って、もう疲れ果ててしまった。私の願いは消えるように死んでしまいたい。それだけです』そう願ったの。
奇跡が起きて、男は眠るように穏やかに死んでしまった。

<耳うさぎ>は愕然としたのね。彼の願いは叶えたけれど、結果的に<耳うさぎ>は男を殺してしまったからよ。
<耳うさぎ>は死んだ男のそばを離れる事が出来なかった。<耳うさぎ>は男と一緒に雪に埋もれて、死造事を選んだの」アキコの話は、そこで終わった。

「救いのない話だね。何かの本で読んだ?」僕はアキコに聞いた。
「ううん。今、私が思いついたの」アキコはニッコリと笑った。

次第に穏やかな太陽の光は、雪雲に遮られて行った。ハラハラと辺りに雪が落ち始めた。
それでも僕らは雪の舞い降りる雪原をボンヤリと眺めていた。

「ねぇ。今、私達がこうやって立っているこの世界は、ただの夢だと思う?それとも奇跡なんだと思う?」アキコは聞いた。
「どうかな。そのどちらでもあるような気がするよ」
「うん。私もそう思っているわ。きっと私達の周りには奇跡が沢山起こっているのよ。確かな奇跡がね。でも私達は、いつでもそれを見族ごしてしまう」アキコは僕の目を真っ直ぐに見つめた。

僕はアキコの肩に手を廻した。アキコの肩は小さくて、僕にはアキコの存在そのものが奇跡のように思われた。

ログハウスに戻ると、埼玉ネコは揺り椅子から腰を上げ、次ぎの場所に向かう事を告げた。僕らはアライグマ男に食事のお礼と別れの挨拶をした。
アライグマ男は、寂しそうに、うなだれてしまった。
僕とアキコはアライグマ男の大きな胸に抱きついた。アライグマ男は、赤い目をして耳をピクピク震わせた。

アライグマ男は、僕らを戸口まで見送った。
自転車に乗った僕らは、手を大きく振って別れを惜しんだ。自転車は雪道をスイスイと走り出し、哀しそうな顔をしたアライグマ男の姿は、直ぐに見えなくなってしまった。

埼玉ネコは、これから向かう場所を前カゴの中から告げた。
「未来へ行こう。未来の君達に会う為に。そして、これが最後の行き先だ」


posted by sand at 00:47| Comment(0) | 連作小説・アキコ物(2000 Miles) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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