日曜日の午後に仕事から戻ると、妻が玄関に出てきて、ゴホゴホと咳払いをした。
玄関床には見知らぬ男物のスニーカーがある。『上か? 下か?』僕は無言で親指を上下に動かす。
妻の親指が下を指した。下の娘の男のようだ。
娘たちのカレシが家に遊びに来るのは嫌ではない。むしろ嬉しい。青春って良いな〜と他人事のように思う。妻は少し心配そうだ。時々用もないのに部屋の様子を窺いに行く。
「悪趣味だよ」僕は言う。「モラルよ」妻は言う。
僕は風呂に入って、自室で缶ビールを飲む。パソコンでエリック・クラプトンの動画を眺める。日曜日の午後が持つ豊かさを堪能する。
2階からゴトゴト物音が聞こえた。僕は耳を澄ます。背中がひんやりと凍りつく。僕は焦っている。どう気持ちを整理したら良いのだろう?
急いで自室を出て、妻の元に駆け寄る。「今、2階で音がしたよ」
「聞こえた」妻は落ち着いてコーヒーを飲んでいる。僕は妻の顔を見て少し落ち着く。
「どんな子?」僕は親指を立てる。
「真面目な子みたいよ。でも愛想が悪いわね。恥ずかしがりや、なんだって」
「へぇ。俺に似てるね」僕は少し嬉しくなる。
「そうね。私もあの子に言ったのよ。お父さんに似てるんじゃない?って」
「そしたら何って言った?」僕は身を乗り出す。娘が何て返事したのか気になる。
「やっぱり父親に似た男を選ぶもんじゃない?って言ったわよ」妻は僕の背中を平手で叩いてカカカと笑った。
僕は呆然としていた。数秒、気絶していたかもしれない。それから僕は出来るだけ難しい顔をする。腕組みをする。頭を指先でゴシゴシ引っ掻き回す。肩をトントンする。
「民主党は期待外れだね〜」僕は難しい顔をしたまま自室に戻る。唇の隙間から新田・新田が零れ落ちそうになるのを必死で我慢しながら。
自室に戻ると慌てて辺り見回す。そして唇に付着した新田・新田を慎重に拭き取ってゴミ箱に捨てる。それから缶ビールを飲み、パソコンに写ったクラプトンに目を移す。僕はまたボンヤリする。しばらくして我に返った僕は唖然とする。口の周りに新田・新田が大量に繁殖しているではないか。僕は慌ててパソコンを落とし、寝室のベットに駆け寄り、辺りの様子を窺ってから、毛布を頭からかぶる。それから僕はこう呟く。
「さあ。思う存分新田・新田しようか」
★相当、甘いけどリハビリ中。また、たまに書いていこうと思います。完全に趣味として。色々思うこともありましたが、批判する側より批判される側を選びたいとか(どっちでも良いけど)。結局、書くのが好きなのです。最初の頃に書いてた軽いのも書いてみたいもんす。