2005年02月20日

Father of Night/Bob Dylan

New Morning.jpg ボケの花.jpg

その日、その時が来て、親父は死んでしまった。

病院の先生から「終わりました。」と。
「そうですか」「お手数かけました」私は悲しくはなかった。
まわりで、みんなが泣いてたので、泣いてるふりをした。

それから「帰りましょう」と泣きながら、みんなは言う。
家まで遠かったので「自宅まで運びましょう」と病院の人。
「よろしく、お願いします」と我々。

「今、車が出払ってますので、3時間くらいお待ち下さい」と病院の人。

それで私と弟だけが死体安置室に残された。
係りの人から、私がここに残っていますから外の空気を吸って来なさい。と言われた。
それで我々は死体を残して外に出た。

1月の空は、青く晴れ渡っていて、どこまでも高かった。
我々は大きく背伸びをして、なんだか良い気分になった。
看病が長かったんだ。

「それではラーメンでも?」「いいですね」

私と弟は、ラーメンを腹いっぱい食って、CDを買いに行った。
私はボブ・ディランの「ニュー・モーニング」を買った。
死体置き場に戻ってそれを聴いた。
親父の死体は、白いシーツに包まれていた。

終曲の「ファーザー・オブ・ナイト」を迎えた時に、突然それがやって来た。
「切り裂く」ようなの喪失感。
失う事は、やっぱり辛いものなんだ。
ぼんやり思って、その後、訳が分からなくなった。

やがて、係りの人がやって来て何か話しかけた。
この人は、何を言ってるのだろう?サッパリ理解できない。

それでも、注意深く聞いていると、彼が、ある一定の方向性を示唆しているのが、わかってきた。

どうやら、我々は行かなければ、ならなかった。
posted by sand at 16:46| 超短編小説@ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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