2011年05月29日

"1・2・3" 三つ数えろ

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Neu!


 「匂うね」福永は男の後を追って逆方向に歩き出した。
「やめとけよ」俺は福永を止めようと腕を掴んだが、福永はそれを振りほどいて進んだ。

 俺は迷ったが福永の後を追った。
男は見るからにヤバそうな目つきをしていた。脅えたような目だ。男は急いでいた。俺が知っている男の印象はそれだけだ。

 男は急いでいたが、それほど足は速くなかった。時々フラフラとよろめいて人や看板にぶつかりそうになった。
俺は福永の横に追いついた。「あの男は誰だ?」と俺は聞いた。「知らね」と福永は言った。
 男は繁華街で福永とぶつかりそうになった。それから福永は男の後を追った。男と福永の関係で俺が知っているのは、それだけだ。

 男は荒れた地区に足を踏み入れた。だんだんと人が疎らになり、男を尾行するのは簡単になった。俺は嫌な予感がした。
男は雑居ビルが集まる路地裏に入込んだ。風俗店や飲み屋が立ち並ぶ地区だった。ここらは昼間でも冷ややかな空気が立ち込めていた。

 男は路地奥の見るからに荒れ果てた雑居ビルの中に消えた。福永は躊躇せずに男の後を追おうと中に入りかけた。今度は身体を張って福永を止めた。
俺は福永を羽交い絞めにして「どこまで行くんだよ?」と聞いた。「中の様子を見に行く」と福永は平然と言った。
「わかるだろ? どう考えてもヤバイだろ?」と俺が言うと
「行って見なきゃ分からない」と福永は言った。
「俺らは刑事でも行政の人間でもない。一般人だろ。関係ないだろ?」
「どうして関係ない? 自分にとって利益にも不利益にもならない事は関係ないで済ますのか?」
俺は言いよどんだ。福永はストレートな男だった。

「お前の選択肢は2つだ。俺に付いて来るか、ここで引き返すかだ」福永はお前が決めろと俺に決断を迫った。
その時の俺には迷いよりも何か大きな流れのようなものを感じていた。あの場所で福永が男に会った時から。俺と福永が今日会った時から。ずっと昔、俺と福永が知り合った時から。今という時間は決められていたような気がしていた。

 俺はそれ以上躊躇はしなかった。
福永を離すと後を追って雑居ビルの中に入った。階段の踊り場あたりから話し声が聞こえていた。男がもう一人いた。片言の日本語で外国人だと分かった。

「さて、何をやってるのか聞いてみようか」福永は俺に言った。
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。福永は俺の肩をポンと叩いて言った。
「行くぞ。相棒。1.2.3。三つ数えろ」

DODOSUKO3部作(その1)



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posted by sand at 06:17| Comment(0) | 超短編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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