2005年02月23日

She's Leaving Home

サージェントペッパー.jpg 椎.jpg

その日は、朝寝してしまい起きたのは、お昼近くになった。

顔を洗って髭を剃り、髪を整えて、新しいシャツに着替えると、ずいぶん良い気分になった。
窓から見える空は、雲一つなく晴れ渡っている。
私は妻に散歩に行って来るよ。と告げると、サンダルを履いて外に出た。
まだまだ寒い季節なのだが、今日は、陽射しが強いので、それほどでもない。
空を見上げて、大きく背伸びしながら深呼吸をした。

河川敷の土手沿いをポケットに手を突っ込んで、ブラブラ歩いた。
向こうから大きな身体をユサユサゆすって、木が歩いて来た。
椎の木だった。

「おはようござます」私は彼に声をかけた。
「おお、気が付きませんでした。おはようございます。」
椎の木は、頭を下げてニッコリ微笑んだ。

「良い天気ですね」私は椎の木を見上げて言った。
「いやはや、まったく、晴れ渡る青空!素晴らしい日になりましたね〜!」椎の木は、胸をそらして野太い声を上げた。

私と彼は、ここ何日か降り続いた雨の事や、椎の木が体調を壊した時期があった事などを話し合った。
「それは大変でしたね。でも、完治してなによりでした。くれぐれもお大事に。では、今日は、これで。」私は、そう言って立ち去ろうとした。

椎の木は、恐る恐る私を呼び止めた。
「あの〜。実は、お願いがあるんですが・・」
椎の木は言い難そうにしている。
「どうぞ、遠慮無く」私は彼に言った。

「あっはは。大変お恥かしいのですが、私の日記を読んでいただけ無いかと思いまして・・。いや、日記とは本来、自分の為につける物なのですが、何かそれだけでは、日記に書きつけられた文字に悪いような気がするのですよ。
なにか日陰の身って言うんですかね。文字を明るい場所に、本来、文字が持っている社交性って言うんでしょうか。それを発揮させてあげたい。そんな気になりましてね。」

「それなら喜んでお読みしますよ」私は椎の木に言った。
「あ、それは、ありがとうございます。では、早速、自宅から取ってまいります。しばらく、ここでお待ち下さい」
椎の木は慌てて家まで引き返して行った。


私は自宅に戻るとテーブルに座り、コーヒーを飲みながら、椎の木の日記に目を通した。
妻が後ろから、興味深そうに覗き込みに来た。

日記に書かれた<文字>は、踊りながら、椎の木の生活を歌い綴った。
posted by sand at 04:32| 超短編小説@ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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