2005年05月14日

かものはし村旅行記

かものはし.jpg

僕とバアチャンは、かものはし村に到着した。

かものはし村には、当然のごとく、大勢のかものはしが行き来していた。
バアチャンは目を細めて言った。
「おお。おお。勤勉な、かものはしさんじゃの〜。バアチャンが若い頃もな。そりゃもう朝から晩まで働いたものじゃよ」
「わかった。わかった」僕は言った。バアチャンは大正生まれで、もうすぐ90歳だ。それでもメチャクチャ元気で、しゃべり始めると止まらない。

かものはし村の村長が、向こうからやってきて、僕らのツアーの主催者と挨拶している。

僕はバアチャンに言った。
「バアチャン、あれがこの村の村長さんだよ」

「おお。村長さんですか。はじめまして・・」
バアチャンは、呼ばれてないのに村長に近づいていった。

僕はバアチャンの襟首を捕まえて言った。
「バアチャン、バアチャン。呼ばれてないって。あんた、呼ばれてないから」

次にセレモニーが始まり、村長は演台に立って挨拶をはじめた。

「本日は、我、かものはし村にご訪問頂きまして、誠に、ありがとうございます・・」

やっぱりバアチャンは、話しかけられていないのに大声で返事を言い出した。
「ああ。そんな。まぁ。あなた。福引で旅行券が当たっただけだもんで。まあ。ご丁寧に。へへ。そりゃもう。こちらこそ、ありがたい・・」

僕はバアチャンの口を抑えて言った。
「バアチャン、バアチャン。話しかけられてないって。あんた、話しかけられてないから」

セレモニーが終わって僕らはホテルに案内された。
どうした事か、バアチャンがついて来ていない。

振りかえると、バアチャンは、さっきの場所で、うずくまっている。
あら、死んじゃったのかな?
慌てて駆け寄ると、膝を抱いて眠っている。

「バアチャン!バアチャン!こんな所で、寝ちゃダメだよ」私が起こすと。

「なに!何を言うか!わしは寝とらせんよ!だれが、眠るか!」バアチャンは、すごい剣幕で逆ギレした。

これだからバアチャンと旅行に行くのはイヤなんだ。
posted by sand at 02:36| 超短編小説@ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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