2005年03月09日

Time After TimeB

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Tonight

アキコは、時々、僕の部屋に一人で来るようになった。
最初は、ビックリしたが、ただレコードを聴いて帰るだけだと分かると、僕は音楽友達が出来たみたいで嬉しかった。

僕らは、いろんな音楽を聴いた。
ポリス、グレン・フライ、U2、キュアー・・・。
アキコは、デビット・ボウィが気に入ったようだった。
僕は、「ジギー・スターダスト」「ダイヤモンド・ドッグス」なんかをテープに落として聴かせたが、結局、アキコが一番好きなのは「トゥナイト」だった。

「キタヤマダ君、そんなにレコードばっかり聴いてて楽しい?」ある日、アキコが聞いてきた。
「うん。楽しいよ。音楽の事は、よく分からないんだけど、音楽にくるまれてると落ち着くね。」僕は答えた。
「ふ〜〜ん。くるまれるね・・。ちょっと厳しい事言うよ。それって、だた逃避してるだけなんじゃない?」
「うん。間違いなく、そうだよ。でも、人生には歩く時期と走る時期があるんじゃないかと思うんだ。どっかで読んだ。それで、今は、焦らず歩けば良いのじゃないのかと思うようにしたんだ。」僕は言った。
「なんだか騙されてる気がするな。前向きな逃避って事よね。それ。」アキコは納得いかない顔をした。
「意味合いは違うけど、内容は似ているかもね。」
「キタヤマダ氏は、<意味合いは違うけど、内容は似ているかもね>と言う訳ね。どっちでも良いけど、あなた、間違いなく変人よ!」アキコは笑いながら言った。



アキコは、先に来て待っていた。
我々は、どちらの家庭からも遠い場所にある百貨店の駐車場で待ち合わせした。
アキコにも家庭があった。
子供は高校と中学の二人だと言った。
「ずいぶん、はやく結婚したんだな。」私はアキコに言った。
我々は、私の車の中で話しをした。
「意外でしょ?」アキコは笑った。
「キタヤマダ君は、理想通り、流通関係の仕事を続けているのね。」アキコは続けて言った。

「いや。理想とかじゃなくて、働かないと食っていけないからね。ただ惰性みたいなものかな。」
「結局、私は、何も見つからなかったわ。どうしても、長続きしなかった。でも、だから結婚したって訳じゃないのよ。本当に好きな人が出来たから。それは間違っていなかったわ。結婚して子供が出来て、凄く充実してたわ。今でも、それは変わらない。」アキコは、そう言った。

「良かったじゃないか。ウチも楽しくやってるよ。」私は言った。

「でもね。最近、思うの。私は、どっちにしても、こんな人生を送ってたんだろうな〜ってね。どこかで、曲がり角を間違えても、結局、同じ場所に着いてしまうんだろうな〜ってね。ゴメン。なに言ってるか分からないでしょ。」
「いや。分かるよ。同じようなものさ。同じように不思議な感じがするんだ。」私は言った。

「ねぇ。今でも音楽聴いてるの?」アキコは聞いた。
「ああ。聴いてるよ。でも新しいのは、ついて行けないよ。昔と同じだね。」
「昔と同じか・・。懐かしいよね。」

昔と同じ。たいして変わらない。でも変わってる事があった。アキコは、昔より、ずっと綺麗だった。
posted by sand at 03:31| 連作小説・アキコ物(Time After Time) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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