2005年03月06日

Time After TimeE

Say Say Say.jpg
Say Say Say

ポール・マッカートニー&マイケル・ジャクソンの「セイ・セイ・セイ」が車内に流れた。

「ああ〜、聴いたね〜。憶えてるよ。」アキコは言った。
「懐かしいよね。」私は言った。

アキコは、確かに、歳を取っていた。若い頃のアキコとは違う。でも別の種類の魅力を彼女は身に付けていた。
それを彼女が知ってるのか。私は気になった。

「キタヤマダ君。人生には歩く時期と走る時期があるって、あなたが言ったの憶えてる?」アキコは聞いた。
「あ〜、そんな事言ったかな?でも、当時、そんな事を考えてたのは憶えているよ。」私は答えた。

「最近、それって本当だよな〜って思うんだよね。」アキコは遠くを見るように言った。
「うん。就職してからは、ずっと走りっぱなしだもんな〜。」
「私も、そうなの。ずっと走ってきて疲れたわ〜。
あの頃、どっちに行って良いのか分からなくて、ウロウロ歩きまわってた時期が懐かしいし、あの頃の私が凄く羨ましいのね。
・・でも、まだ歩く訳には、いかないよね。」
「ああ。今は無理だね。もう少し走らなくちゃね」
私は、そう言った。

「帰れないと分かると帰ってみたくなるのよね〜あの頃に。帰っても、なんにも無いのにね。」アキコは溜息混じりに、そう言った。
「そうだね。なんにも無かった。なんにも無かったのにね。」私は、返事をした。

あの頃には、なんにも無かった。全てがフワフワと宙に浮いてるようだった。
その中で我々は途方に暮れているだけだった。
言葉を換えると我々には失うものが、なにも無かったんだ。

今、なんの感情の整理も出来ないままに、ある気持ちだけが強く胸を打った。
アキコを二度と失いたく無い。
posted by sand at 02:46| 連作小説・アキコ物(Time After Time) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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