2006年09月10日

象が舞い降りた日(後篇)

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Osibisa / Osibisa

★駄作です!途中から、とんでもない所に話しが飛んでいった。難しかった。



「俺はこの人生に『証』を求めて生きて来た」父さんは苦しみながら話し続けた。話す事で<恐れ>から気を逸らそうとしていたのかもしれない。

「俺は不平・不満を口にせず、黙々と働いて、お前を育ててきた。誰もが俺を変わり者だと馬鹿にした。でも、一握り、ほんの一握りの人が父さんを認めてくれた。
 それで、俺はそれが正しいと信じてきた。…いや。俺はそんな風にしか生きられなかっただけかもな。
どっちにしても俺は、ずっと耐え忍んで、ずっと自分を殺して、いつか、いつか、この世に産まれて来た『証』を手に入れようとしていた。それさえあれば、父さんの人生は『無』ではなかったと証明出来そうに思えたんだ。
 だが、お前を、その『証』にする訳にはいかなかった。お前は、お前で、俺のものじゃない。お前は、俺の全てであっても、俺は、お前の全てではない。あってはならない。

 それで俺は勤勉に働いた、手を抜かず家事をこなし、お前に愛情を注いだ。その姿を誰かが認めて、俺に『証』となるものを授けてくれる。そう信じた。そう願ってきた。それを求めて生きてきた。

 結果を言えば、それは見つからなかった。
俺はいつまでたっても貧乏で、若くて能力のある部下達に追い抜かれ窓際に追いやられてしまった。お前に幸福な生活も分け与える事が出来なかった。俺は負けたんだ。どんなに真面目に働き、生活しても、父さんには、それは授けられなかった。能力がなかったんだ。

 俺は、このまるで無価値な人生に別れを告げ、本当の『無』になろうとしている。どんな世界だろう?本当の『無』とは、今のこの人生と、どれほど違うものなのだろう?

 なあ。父さんは、お前には、どんな姿に映ってきたんだろう?
俺が、どんな風に見えるか?」


『俺が、どんな風に見えるか?』象は、もう一度、オイラに尋ねた。オイラは、その言葉を前に一度聞いた事があった。
 父さんが死ぬ前にオイラに尋ねた言葉だ。でも…でもオイラは何も答える事が出来なかった。
オイラは涙をボロボロ零すだけで、馬鹿みたいに、ベットの横に突っ立っていたんだ。

『俺達は願いを叶えた成功者だった。地上の誰もが俺達を羨望の眼差しで見上げた。だが、俺達はそこに降りて行く事が出来なくなっていた。もう戻れなくなってしまっていたんだ。
 空の楽園は、俺達の望みの全てを授けてくれた。
だが、それは俺を俺として在らしめるものではなかった。それは、どれほどの時が過ぎ去ろうと宙に浮かんだ『願い』でしかなかった。
 俺は望みの全てを手に入れる為に、全てを手放してしまったのだ。俺が俺であり、お前ではない。と言う当然の事をだ。

 俺は、このまるで無価値な一生に別れを告げ、本当の『無』になろうとしている。
お前の目玉に映る、俺は、一体どんな姿に映っている?
 俺が、どんな風に見えるか?』


 象は繰り返しオイラに聞いた。だが、象にはオイラの姿が見えていない。象はオイラの言葉なんか求めていない。
 でも、オイラには言うべき言葉がある。言わなければならない言葉がある。
オイラには父さんに言わなければならなかった言葉があった。でも父さんは「黙ってりゃ良いよ。無理なんかするな」とオイラに言った。だからオイラは黙っていた。黙って泣いていた。そして父さんの瞳は永遠に閉じられた。オイラは一人ぼっちになっちまった。

 今、オイラは声を出して、それを伝えなければならない。永遠の終わりの前に、それを叫ばなければならない。

 オイラは腹に力をいれて、象に向かって大声を張り上げた。

「オオオ、オイラは、あんたを知っている!オイラは、あああ、あんたに気がついていた!オイラと父さんは工場の裏の丘から、あんたをずっと見ていた!オイラと父さんは、あんたを目で追いかけ、大空を泳ぎ回った。オイラ達は、あんたと一緒に空を泳いでいたんだ!あんたはオイラ達の夢だった!
オイラ達が、ここに生きている『証』だったんだ。あんたの存在がオイラ達がここで生きているって事を全部、証明してくれる!
あんたが空を泳いでくれたからオイラ達は、地上で生きてこれた!

 死んだ父さんが、こう言ったよ。
「黙って一つの事をずっと続けろ。誰かが気がついてくれる。誰かが俺達に気がついてくれる」ってね。

だからオイラは、あんたに気がついてた!遠い地上から、あんたの姿に癒され、勇気付けられて来た。そして、それはオイラ達だけじゃない!この地上のあらゆる生き物が、あんたの姿を追っていたんだ!

 あんたは無価値なんかじゃない。父さんも無価値なんかじゃない。そしてオイラもそうだ!
あんたも父さんもオイラも、もっとずっと大きな存在の一部なんだ。もっと、ずっとずっと大きて輝いている存在に含まれているんだ!
ずっと誰かが気がついている!ずっと誰かがオイラ達に気がついてるんだ!」


 象は始めてオイラに顔を向けた。象はオイラの顔を見つめた。象はオイラの姿を認めたのだ。
それから象は大きな溜息をついた。それは安堵を感じさせる溜息だった。

『生き物の声って良いな』象は再び話し始めた。でも声のトーンが違う。とても落ち着いた声に変わっていた。
『俺は生き物の声が持つ力を知らなかった。俺達は所詮、不完全な存在でしかないのか。だから、声が必要なんだな。声を掛合う事で、俺達は、その存在を確認しているのかもしれない。
一人では不完全なのだ。誰かの声を聞く事で、俺達が俺達自身で在る事を知る。

お前は、俺を俺自身だと気付かせてくれた。その声でだ。

お前は良い声をしている。俺にしっかり届いたよ。
歌ってくれないか?俺が消えても。歌い続けてくれないか?』


象はニッコリとオイラに微笑んだ。それから真面目な顔になって、こう続けた。

『お前と話しが出来て良かった』

直ぐに象の身体は二倍くらいにまで膨れ上がった。『バン!』と破裂音がして、象の身体は跡形もなく弾け飛んだ。後には何も残らない。だが、象の言葉はオイラの胸に残された。

 その破裂音の後、オイラの中でも何かが弾け飛んだような気がしていた。
もう以前のように話す事が怖くはなくなっていた。オイラは気持ちを伝える事が出来る。
オイラは街に溢れる言葉を上手に並べる必要なんかなかったんだ。オイラはオイラの言葉を産み出せば良かったんだ。誰かが必要としている言葉を。

 オイラは空を見上げた。空には大きく力強い太陽が燦燦と輝いている。
オイラは太陽に手を伸ばす。そして太陽とオイラの間にビッシリと連なる『名も無き存在』を感じ取る。

 オイラは一人じゃない。オイラは歌い続けなければならない。誰かに届くように。


posted by sand at 17:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 超短編小説C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
全っ然、駄作じゃないです。私は久々に感動しました。本業はドラマウォッチャーの変態だけど、このおじさん、良いこと書くね。親殺し子殺しに走る奴らに読ませてやりたいよ。というより自分の子供に読ませたい。あんまり漢字読めないけど。
『Sunshine Day』って、ずっと
「Everybody,do what you're doing,Smile will bring you sunshine day」
って言ってますよね。妙に心に残りますね。
Posted by ショコポチ at 2006年09月10日 23:27
こんちは。読んでいただいて、ありがとさんどぇす。おおきに。感謝。感謝。

え〜書いてるうちに訳がわからなくなって、考え込んだりしてました(仕事しろ)

>本業はドラマウォッチャーの変態

ストーカー歴も長いんですよ!

>自分の子供に読ませたい

こんなオッサンのタワ言読ませちゃダメですよ。お嬢はピュアなガールだから大丈夫よ。旦那さんは、ちょっと心配(ってオイオイ。秀才に向かって何を言うやら)

>「Everybody,do what you're doing,Smile will bring you sunshine day」

あ、凄い。聴き取るね〜。歌詞検索したら本当に繰り返しに終始してますね。そんな深い意味ないのかも?だったらゴメン。
Posted by sand at 2006年09月11日 17:23
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