2005年03月11日

Tunnel Of Love(1987)Bruce Springsteen

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Tunnel of Love

「ダイヤや金は山のように持っている 銀行に保管できないほどの有価証券を持っている 国の端から端までいたるところに家を持っている みんなが俺の友達になりたがる この世で誰も持てなかったような富を持っている が、持っていないものがひとつある おまえを持っていないんだ」Ain't Got You

メガ・ヒットとなった「Born In The U.S.A.」がもたらした物は、強固なナショナリストとしてのイメージ、「Springsteenタイプ」とも言えるマッチョなフォロアー、そして巨万の富だった。

「Born In The U.S.A.」に続くオリジナル・アルバムとして(間に総決算ライブ盤を挟むが)「Tunnel Of Love」がリリースされたのは、そんな過剰な風潮の真っ只中だった。

私は、このアルバムが、何より好きだ。最高傑作とかそんなんじゃなくて、とても愛着の持てる作品だ。

冒頭に記載した歌詞を読まれても、彼が当時の状況そして混乱を率直に歌い綴っている事が理解できると思われるが、その方策は、いかにも田舎臭いものだ。こんな歌詞を歌ったところで、どんなリアクションが返ってくるのか容易に想像できそうなものだが、彼は彼のやり方を通した。その無骨さが好きだ。

「若いうちに死にたいやつもいる 若くて羽振りがいいうちにね はっきりしときたいが いいかい俺はそうじゃない やりたいことがあるんだ だからえりを正し 胸をはって歩くんだ」All That Heaven Will Allow

「The Joshua Tree」でビック・バンドとなったU2もまた、当時のSpringsteenと同じような状況下にあった。しかし彼らは、「Achtung Baby」で自虐的なまでに醜悪なポップ・スターを演じる事で、彼らの根底に潜む潔白性を浮き彫りにさせる方法をとった。ボノが、いかがわしく傲慢なポップ・スターであればあるほど、痛々しい誠実さを感じずにはいられなかった。

しかし、Springsteenは、真っ直ぐに歩き出した。馬鹿げた行為だ。ミック・ジャガーにしても、ボウィにしても、もっと上手く、すり抜けて来ていると言うのに・・
そんなところが、泣かせてしょうがない。私もバカなファンだから。

「簡単で単純なことのはず 男が女に会い、愛し合う だが、ここはお化け屋敷で 乗り心地は耐え難い 手に負えないものと生きることを学ばねばならない この愛のトンネルを通り抜けたいのなら」Tunnel Of Love

不運に終わった最初の結婚生活から男女間の気持ちの行き違いを歌ったパーソナルな曲が多く収められている。タイトル曲は、そんな臆病で手探り状態の情けない男が上手く描かれている。

サウンドは、落ち着いた独白調のナンバーと、E Street Bandのメンバーが最小限のバック・アップを行うシンプルなナンバーで構成されている。
メガ・ヒット・アルバムの次ぎの作品としては地味な感触は避けられないが、当時の過熱した状況をクール・ダウンする効果は充分だった。シンプルながら味わい深い粒揃いの作品群であり、戸惑い、ためらい、不安、そんな等身大の感情が率直に表現されて胸を打つ。

「自分自身をながめてみると 俺がなりたかった男はそこにはいない どこかで道に迷い 1歩前進 2歩後退」One Step Up

前記したように、このアルバムが、とても好きだ。評論家の評価は散々だったが、充分満足できるものだった。さぁー、次ぎは、ご機嫌なR&Rアルバムの登場を待とう。誰もが、そう思った。他ならぬBruce自身もそう思っていただろう。
しかし、事態は最悪の方向へ動く。辛い時代のはじまりだ。
posted by sand at 02:19| 音楽コラム・Bruce Springsteen | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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