
Robert Plant / Dreamland
夢の入口からは、暖かい風が、吹き出していた。
僕は、背を屈めて、その門をくぐった。
Dreamlandは、真夏を思わせる、メマイがするほどの暑さだった。
僕は、大都会の雑踏の中にいた。群がる蟻のように多くの人が、ひしめき合い、交差点では車が列をなし、クラクションが鳴り響いている。店舗からは、大音量の音楽が流れ、人の笑い声が木魂した。
僕は、それらの雑音が耐えられなかった。うだるような暑さが耐えられなかった。ギラギラと容赦無く照りつける太陽の光が耐えられなかった。
僕は、道行く人に、「暗闇は、どこですか?」と聞いた。
彼らは、みんな、どこかが欠けていた。
ある者は、目が無く、その場所を見つける事が出来ない。
ある者は、耳が無く、その質問を聞く事が出来ない。
ある者は、口が無く、その道順を教える事が出来ない。
僕は、質問を諦め、雑踏を歩きまわった。
顔を白く塗った少女が近づいてきて、こう言った。
「Dreamlandの掟は、一つだけ、決して暗闇に近づいては、ならない。」
大空をイヌワシが何羽も飛びまわっている。彼らがDreamlandの掟を監視しているのだ。
その時、通りの向こうを、赤いドレスの女が通り過ぎた。
あの女は、以前、夢の中で僕が殺した女。
僕は、彼女の命と引き換えに「言葉」を奪われた。
僕は、赤いドレスの女を追って、走り出した。
女は、蝶のように飛び跳ねながら、通りを逃げ回った。
僕は、必死で彼女の後を追いかけた。
女は、スターバックス・コーヒーの横にある、洞穴の中に逃げ込んだ。
僕も、その洞穴に駆け込もうとした。
その瞬間、白塗りの少女が、僕の前に立ちはだかって叫んだ。
「暗闇に入り込めば、お前は、二度と、夢から覚める事が出来ないぞ!」
僕は決然と叫んだ。
「夢から覚める事に、どれほどの価値がある!言うべき言葉を持たない現実に何の意味がある!」
僕は、少女を突き飛ばして、洞穴に飛び込んだ。
そこには、暗闇だけがあった。
僕は、暗闇の中で、女の湿った唇に触れた。
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