2006年10月13日

曲がり角にあった10枚(そのB)

MetalBox.jpgSecond Edition.jpg
Public Image Ltd. / Metal Box - Second Edition

 ジョン・ライドンは『ROCKは死んだ』と告げてPublic Image Ltd.を結成した訳だが、結局それはROCKがかって確実に生きていた事の証明に成り得た。
 私は当時、ROCKとは程遠い生活をおくっていた。どんなに足掻いてもROCKにさえなれなかった。当時の私にとってROCKとは『暗い一人ぼっちの部屋』の事だった。
ROCKにも劣るクズ人間だ。ROCKが死に絶える前に私は既に死んでいた。

 80年代初頭。異臭が漂う暗闇の中に、黒い鳥が舞い降りた。『Albatross』。
希望とも絶望とも呼べない。死人による死人の為の音だ。
 私は、その死人の声を身動きもせずに聴き続けた。人が青春と呼ぶ、その時に私は死人の声に寄り添っていた。


 『Metal Box』は当初、缶入り12インチ3枚組として79年にリリースされた訳だが(見た事も無かった)、当然、私が聴いていたのは80年に再発された『Second Edition』だった。このアルバムは、後にライドン本人が語っているようにカンの『モンスター・ムービー』、ノイ!の『ファースト』それにダブからの影響が色濃くうかがえる。ただ、当時、そのような脱ROCK的なサウンドを指向するオルタネイティブ色の強いバンドは他にも見受けられた。
 それでも、このアルバムで聴けるPIL.のサウンドは他のどのバンドよりも傑出した輝きを放っていた。当時のPIL.だけが持ち得たマジックとは何だったのだろう?

 破格の存在感と自由に地上を蠢き回るJah Wobbleのベースにその秘密を見出す人もいるかもしれない。キリキリと鋭角的に突き刺さるKeith Leveneの繊細で壊れそうなギタープレイを評価する人もいるのかもしれない。
 だが、それを束ねるライドンの振り絞るような気迫こそ、このアルバムに特別な力を与えている。その事に異論を挟む者は、少なくとも当時を知る者の中には存在しないであろう。

 ピストルズ解散から、このアルバムに至るまで、ライドンは生き急ぐように自身の限界に挑み、強圧的なプレッシャーと対峙して来た。それ故に、このアルバムには重く垂れ込めるようなサウンドと共に快活なPOP感をも含んでいるように感じられたのだ。その地響きするような音圧の狭間に、明瞭な肯定の光が織り込まれていたように思われた。

 私をこのアルバムに引き寄せ、また同時代の他の作品と大きく引き離したのは、実はその極々微量の明確な光。それ故の事だったように思われる。

 ライドンはROCKの死を宣告し、自らを葬り去り、捨て身の死人となる事で、ROCK本来のダイナミズムを再びこの地に引きずり出そうとしているようだった。そこには打算や落とし所の入り込む余地はなかった。ライドンは未来を切り捨てる事で、今を燃焼させようとしていた。実際、彼は燃え尽きてしまったのだが…。

 今になって思えば、ライドンこそが、最もROCKに囚われていた男だったのではないだろうか?その後の彼を見るにつけ、その不器用さだけが目に付いてしまう。いつでも不必要なほど裸になってしまうのだ。ブザマと呼んで良いだろう。

 だが当時の彼を知る者は、誰も今のライドンを笑ったりはしない。
何故なら我々も不必要に裸になりたがる同じ馬鹿者に違いは無いからだ。




 私はその暗闇の中に身を潜め、ライドンの声を頼りに、自分の身体がメラメラと燃え上がる。その瞬間を待ち続けていた。


★え〜思い入れが強過ぎて、冷静な文が書けない好例となりました。ブザマなり。


posted by sand at 20:02| Comment(2) | TrackBack(0) | コラム・音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 パリでのライブでのポップトーンズの前のシャラ〜ップが話題になりましたよね。次作をいつも買おうと思いながら、これは時代を背負った作品だよなとおもって手が出せない自分です。今、聞くとすごくいい作品ですが、これをすごくいい作品として評価して良いものか。「パンク以後」という時代を通しての評価じゃないといけないような気がします。ただ楽しめればいいんだけどね。
Posted by ITORU at 2006年10月15日 21:38
>ポップトーンズの前のシャラ〜ップ

そうそう。PILで一番有名なのは、このMCかもしれませんね。とても分かりやすい切り口ですからね。象徴的に書きやすいし。
『ロックは死んだ』もそうだけど。ライドンはそんなの全部背負ってしまたんじゃないかと。で行き詰まってしまったような。BOWIEだったら忘れてるし、ミック・ジャガーだったら言ってないとか言い張るとかね。

やっぱりライドンにはブルースとかR&Bとかのバックボーンが無いですからね。解体しかなかった。で、組み立ててみると普通だったとか。

ポップグループ一派がしぶとく生き残ったのに、ライドンはどうも精彩をかいている。
結局、ライドンはロックの人だったんじゃないかな。

私は後期の普通のロックバンドになったPILも好きだったんだけど。ライドンも居心地が良さそうだったし。でも、ジョン・ライドンのパブリック・イメージはそう言うの許さなかったとか。それでピストルズ再結成で自爆してしまったと。

勝手な憶測だから全部違うかもしれないけど。

結論を言うと、そういうジョン・ライドンって人。全部丸ごと好きなんです。性格は悪そうだけど(^O^)
Posted by sand at 2006年10月16日 17:34
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