2006年12月13日

瓦礫の茶漬け(第2回)

〓〓〓〓2.jpg

 私は玄関に入ると姿見でワイシャツの汚れをチェックする。何度も何度も角度を変えてチェックし続ける。大丈夫。今度も上手くやれる。何度もあった事だ。そして、その度に忘れてしまう。裏切りも悪意も偽証も何もかも忘れる。もちろん寝た女も。私は慎重に女を選んだ。そこに愛情はなく、ただ肉体のみが存在する女を選んで抱いた。

 玄関から廊下へ続く扉を開いた。「ん!」キッチンから明かりが漏れている。妻は起きているのか?私は素早く腕時計に目をやる。「午前2時40分」。
おかしい。妻は遅くとも午前12時には寝てしまう。12時を過ぎると目を開けていられなくなる。若い頃からそうだった。猫みたいにベッドに潜り込んで寝息を上げている。陽気で屈託が無く、単純明快で朗らか。良い妻だ。最高の妻だ。
 ただ、私はそんな妻を、たまらなく思う時があった。その単純さが、たまらない。その明快さが、たまらない。その優しさが、たまらない。私は分かっている。自分が間違っている事に。それでも、私は過ちの中にある、背徳の中にある蜜のごとき滴りを求めた。私の心の奥底に潜む泡みたな物がそうさせる。パックリと開いたアケビの実のようにドロドロとした分泌物がそうさせる。
 私は間違っている。だが、私は慎重だ。慎重にそれを処理し続けてきた。



☆つづく。文章よりもお茶漬け画像を楽しみましょう。


posted by sand at 17:04| 超短編小説C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。