2006年12月16日

瓦礫の茶漬け(最終回)

Strange Times.jpg
The Chameleons / Strange Times

 私は汗をかいていた。どうやら妻は感づいたようだ。どうする?どうやって、この状其を切り抜ける。頭を使え。考えろ。時間が必要だ。冷静にならなければならない。今、全部をブチ撒けるのは拙い。属き伸ばそう。出来るだけ冷静に。出来るだけクールに対応しなければ。
 だが、それより気にかかるのは妻の様子だ。おかしい。どこか狂気じみている。ストレスから精神症になったのか?だとしたら私の責任だ。私の罪だ。
 
 妻が私に差し出した『お茶漬け』は、白く濁っていた。ムッとした異臭が漂ってくる。私は胃の奥から込み上げて来る物を必死で我慢する。
「どうぞ。熱いわよ。気を付けて」妻は私の向かいに座って微笑む。

 落ち着け。冷静になれ。怯まず受けとめる。
私は出された茶碗に手を伸ばす。冷たい!お茶漬けの茶碗は氷のように冷たかった。陽動だ。怯むな。私は白く濁ったお茶漬けを、ゆっくりと持ち上げ、もう片方の手に持った箸を浸す。コツン。箸はお茶漬けの中の異物にぶつかって音をたてる。私はその異物を箸で挟んで持ち上げる。現れたのは、白い骨だった。何の骨だ? 鳥か? 豚か? それとも人なのか?
 その瞬間、私の中で何かが弾け飛んだ。身体の奥底から震えがやって来た。そして、それは直ぐに私を飲み込んだ。私の身体はブルブルと激しく震え始めた。自分では止められない。震えは加速的に大きくなって行く。もう、茶碗を持っていられない。お茶漬けの茶碗は、私の手から滑り落ち、床に落下して割れた。中から現れたのは白い骨と黒髪だった。長い髪だ。グルグルに巻かれてある。女だ! 女の髪だ!
 私は悲鳴を上げた。その瞬間、切り裂くように妻の笑い声が響き渡った。妻の口は大きく耳まで裂けていた。化け物だ! 私は腰を抜かして床に這いつくばった。股間から小便が音を上げながら噴出す。「ごめんなさい! ごめんなさい! 悪かった! 悪かった!」私は床の上を悲鳴を上げて逃げ惑う。

「何を謝ってるんだよ! 何が悪かったんだよ! うひゃひゃひゃ〜!」妻は恐ろしい口を開けて笑った。それからリビングに通じる扉を開けた。
 扉の奥は暗闇だった。目を凝らすと、その暗闇に真っ赤に光る二つの目玉が見えた。猛獣のような低く押し殺した呻き声が聞こえる。
 妻は、暗闇の化け物に何事か話しかけた。
「ねぇあんた。そこに寝てる男。私に謝ってるんだよ。おかしいね〜。ねぇあんた、そいつを食っちまいなよ。うひゃひゃひゃ〜!」

 妻は暗闇の化け物と親しそうだった。いつからだ? いつから、そいつは、そこにいたんだ? いつから、そいつと出来てたんだ? いつから、私を欺いていたんだ?

 まったく情けない事に、その時、私が感じていたのは、恐怖よりも嫉妬だった。



おわり。


☆まったく、お粗末な内容でした。すいません。次ぎは、もっと頑張ります。
posted by sand at 16:02| Comment(3) | TrackBack(0) | 超短編小説C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 イチゴの回がすごく怖かったです。化け物が出てしまうと「ああ、化け物だったから怖かったのね」となってしまいますが、本当に怖いのは人間です。お茶漬けが白かったのはもしかして骨のスープだから?さすが豚骨スープの九州人。
Posted by ITORU at 2006年12月16日 17:08
 トンカツ茶漬けは?もしかしてトンカツサンドに代わったとか?
Posted by ITORU at 2006年12月16日 17:08
いや、どうも。どうも。早速、感想ありがとうございました。

イチゴの箇所は自分でも良いな〜と思いました。ども誉めていただいて、ありがとう。
オチを出来るだけ情けな〜くしたかったので、化け物を出しました。途端に緊張感が無くなったな〜と反省していました。ま、また挑戦してみます。

トンカツ茶漬けは美味しいかな?脂濃そう。
Posted by sand at 2006年12月16日 17:44
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