2006年12月20日

December Will Be Magic Again

Kate Bush.jpg 冬の公園.jpg

 僕は、彼女の部屋に来ていた。
彼女は、台所でシチューを作ってる。さっきまで一緒に買い物に行っていたんだ。
ブロッコリーとマッシュルームのホワイト・シチューを食べようか。彼女は、僕にそう言った。
買い物を済ますと彼女のアパートまで歩いて帰った。ずいぶん寒くなってきた。歩道には銀杏の葉が降り積もっていた。葉の散ってしまった木々は、見ているだけでも心細く感じられた。

「冬の街って、なんだか寂しいね」彼女は僕に言った。
「そうだね」
「冬の街を眺めていると耳ウサギの話を思い出すわ」
「耳ウサギって?」
「耳ウサギはね。寒い冬の夜に現れるのよ。冬の星座の光を浴びると、耳が黄色く光り始めるの。耳ウサギを抱いた者は、一つだけ奇跡を起こす事が出来るって言われているわ」

 木枯らしが吹いて僕らは肩を寄せ合って歩いた。
「誰もが奇跡を求めて、耳ウサギを捕らえようとしたわ。でも耳ウサギは、とても利口で、どんなに大勢の人間から追われても、どんな罠を仕掛けられても、決して捕まらなかった。
 ある夜、年老いて身体の弱った男が、雪山にうずくまっていたのね。耳ウサギは彼を助けようと、彼の胸の中に飛び込んだのよ。
『あなたは奇跡を起こす事が出来ます。あなたが心から求める物事を思い浮かべるのです』そう耳ウサギは、年老いた男の心に語りかけたのね。
 男は『私は、全てを失って、もう疲れ果ててしまった。私の願いは消えるように死ぬ事です。それだけです』そう願ったの。奇跡が起きて、男は眠るように穏やかに死んでしまった。
 耳ウサギは愕然としたのね。彼の願いは叶えたけれど、結果的に耳ウサギは男を殺してしまったからよ。耳ウサギは、死んだ男のそばを離れる事が出来なかった。男と一緒に雪に埋もれて、死ぬ事を選んだの」彼女の話は、そこで終わった。

「う〜ん。救いのない話だね。何かの本で読んだの?」僕は彼女に聞いた。
「ううん。今、私が思いついたの」彼女はニッコリ笑って言った。

 部屋の戻ると、ケイト・ブッシュの「12月は魔法の季節」を、かけてくれた。「これもクリスマス・ソングなのよ」彼女は言った。
 僕は、ジャガイモの皮を剥くのを手伝った。シチューの鍋がコトコト音をたてた。
 ふと窓の外に目をやると雪が降り始めていた。僕らはガラス窓に顔をくっ付けて、それを眺めた。
「不思議ね。冬の街は寂しいのに、雪が降り始めると途端に暖かな気持ちになるわよね。」彼女は、外を見ながら言った。
「そうだね。不思議だね」
「きっと私達の周りには奇跡が沢山起こっているのかもしれないわね。私達が気付いていないだけで」

 僕は彼女の肩に腕を廻した。彼女の肩は小さくて、僕には彼女の存在そのものが奇跡のように思われた。



☆2年前に書いたクリスマス関係。あれから2年経ちますね。どんどん悪くなったような気もするし、幾らかマシになったような気もします。
どっちにしても、どっちでもいいです。
で、この文章は書いた時は愛着があったのに、今読むとヒドイです。
posted by sand at 18:23| 超短編小説C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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