2007年01月04日

13月目のジム・モリソン@

Doors-13.jpg
The Doors / 13

 年が明けると、すぐにオイラはジム・モリソンを探しに出かけた。

 それは冷たい朝。吐く息も凍る頃。指先が、かじかんで上手く動かない。そいつはクリスマスのフライドチキンみたいだった。オイラはクソッタレの指先を苦労してポケットに詰め込んだ。
「出かけるよ。母さん」オイラは通告する。
「どこへでも行きな。音楽が終わっちまうよ」母さんは変なセーターに首を通してる最中だった。そのセーターには最初から首なんて付いてなかった。それでも母さんは一日中、首のないセーターに首を突っ込もうとしていた。バカげている。でもオイラは母さんを笑えない。オイラだって首の通る穴さえあれば、いつだってそこに潜り込むつもりさ。だけど、この家には、そんな穴は開いてねぇんだ。あばよ、母さん。鳴り止む前に行くよ。オイラの音楽がさ。

 大地に触れずに。たぶん、少しも大地に触れずに。オイラは決まりきった約束事を綺麗さっぱり放り投げて、スパニッシュ・キャラバンに飛び込んだ。
「ヘイ。ローディ。どこまで行くんだい?」そいつが団長か。長く色鮮やかな鳥の羽根を帽子に挿している。骨ばった細長い顔は、砂に汚れた髭に覆い隠されている。
「ローディ。答えろ!」団長らしき男は、馬の手綱を強く引く。まあ、そうカリカリするな。オイラは男の背後に忍び寄る。
「12月が終わる頃。13月目の季節が始まる。そこにあの男が待っている。知ってか?」
オイラは団長らしき男が、そいつの名を口にするのを、そわそわしながら待っている。言え! 口にしろ! その悪魔の言葉を持つ男の名を!
 オイラは呪文のように繰り返す。『突き抜けろ。向こう側に。突き破れ。向こう側へ』

「ヘイ。ローディ。忘れるな。音楽が終わる前に帰ることさ。ママの腕の中にな」
 やがてキャラバンはオイラを置いて姿を消してしまう。オイラは一人砂漠に残される。
 そして、その音が聞こえる。オイラの後ろでその音が聞こえる。扉が閉まる音だ。
 たった今、その扉が閉ざされたんだ。
posted by sand at 20:55| Comment(3) | TrackBack(0) | 超短編小説C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 ジムモリソンって本当に絵になりますよね。物語の中の人のようです。人気が下降していく中で最後の傑作を出し死んでいくところなんて、まるでマークボランです。ロックミュージシャンと言うよりも詩の世界を体現した男という感じです。
Posted by ITORU at 2007年01月05日 19:22
わーい、新年早々カッコイイですね〜!!
「変なセーター」って、日常の中の不気味。ぞぞぞ…っていう快感がある場面です。
そういえば、私も昔ヘンなセーター作ったことあります。証拠写真も残ってます。編んだセーターパーツを何も考えず接いで、気付いたら首の部分に袖が付いちゃってて、異様な形状に仕上がってました。ちょっと怖かったです。

お正月にドアーズって、すごくいいですね。
昔昔中学生か高校生の頃、松の内の渋谷陽一サウンドストリートお正月特集で「ドアーズ」やったんです。それがドアーズとの出会いでした。
いきなり「ピープル・ア・ストレンジ」がかかって、DJ氏の「この1分かそこらの曲で正月気分も真っ暗に」みたいなコメントがあって、大変にインパクトありました。ホントに1分の暗黒を見ました。地獄の底から聞こえて来る虚無的な声だと思いました。
お正月にドアーズ、ホント絶妙の取り合わせです。

今年もよろしくお願いします!

※ 晩ご飯の後で、ボウイのとこにも書きに参りますv
Posted by 志穂美 at 2007年01月06日 18:48
ITORUさん

いつも、ありがとうございます。
カッコ良いですよね。いつも題材にしたいと思いながら、なかなか設定が出来ません。存在がドラマチックな人ですからね。この文章も上手く行きませんでした。やっぱりドアーズの音楽に勝る物はありませんね。

志穂美さん

あけましておめでとうございます。今年も宜しく。

>気付いたら首の部分に袖が付いちゃってて、異様な形状に仕上がってました。ちょっと怖かったです。

これは凄そうですね。しっかり証拠写真が残ってるのが余計怖かったりします(^_^;)
公開してくれますよね?うひひ。

>お正月にドアーズって、すごくいいですね。

良いですかね?そう言われれば、そんな気がしてきた。

>「この1分かそこらの曲で正月気分も真っ暗に」みたいなコメントがあって

渋谷氏だったら、やりそうですね。あの人は急にキレる人でした。

>地獄の底から聞こえて来る虚無的な声だと思いました。

こんな正月も有りますか?お盆なら似合いそうですよ。絶対、お盆だ。ドアーズお盆親近説を提唱します!さ、運動員集めよう。
Posted by sand at 2007年01月07日 12:54
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