2007年01月29日

帰ってきたクリスマス

 参加している超短編小説会さんの年末企画2006年超短編小説会年末祭に投稿した当方の駄文が戻ってまいりました。
管理人特別賞は、言わずもがなの大傑作「吸殻の風景」 sleepdogさんに決まったようです。もう全然、力が違います。お口あんぐりしてしまう傑作短編です。

 ま、そんな訳で私の駄文を掲載しておきます。描写が異常に荒いです。勢いだけで書いてます。とほほ…。
 今回のルールは、指定されたワードを含んだ小説でした。
以下のワードから5つ以上選んで書かれています。
ニヤリ・鶏・突破・東京・時計・嘘・人生・名前・空き缶・受信料・紅白・
クリスマス・ファイル・北海道・アイドル・てst

 では、今回のテーマはズバリ演歌でした。まるで、たいしたことないけどね。ま、下手でも文章書くのは面白いし、超短編小説会さんってフォーラムそのものが面白いです。

クリスマスが託したもの


 五年前に死んだ、あの人から手紙が届いた。
『元気で暮らしているか? 苦労してるだろ? 本当に、すまん。今はまだ俺は生きている。そしてこの手紙を書いている。俺が死んで五年経ったら、この手紙をお前宛てに投函してくれるように知り合いに頼んだ。どうしてそんな事をするのか、お前は疑っているだろ?だが、お前の事を思うと、こんな方法しか考え付かなかった。クリスマスの日にお前に渡したい物がある。来てくれるか?』
 手紙には、そんな文章と見知らぬ街の住所が記されていた。あの人の字だ。あのバカ、どうして死んでまでも私を苦しめる。私は手紙をズタズタに引き裂いてゴミ箱に投げ捨ててやった。

 あの人はバカみたいにお人好しで、バカみたいに人に愛されて、バカみたいな早さで死んじまった。癌だった。気がついた時はもう手遅れってやつだ。それでも、あの人は私に辛そうな顔は一度も見せなかった。『すまない。すまない』何度も何度もそう言って、さっさと死んじまった。私はどうしたらいい? 幼い子供を抱えて、私はどうすりゃいいんだ?

 だいたいクリスマスに休みなんて取れやしない。朝から晩までフルタイムで働いて、それでも生活は一杯一杯だ。『俺が死んだら早いうちに再婚してくれ』あの人は死ぬ前にそんな事を言った。冗談じゃない! そんな右から左に飛び移れるか! それに私は、あの人が忘れられない。あの人じゃなきゃダメなんだ。どうして死んだんだよ。バカ。
 そりゃ私にも言い寄ってくる男の一人くらいいるさ。職場に年下の男がいてね。名前は鈴木ってんだ。優しくて真面目でね。私なんかを好いてくれてるのさ。この前プロポーズされたんだ。でもダメさ。あの人の顔がちらついて、まともに相手なんか出来やしない。あの人のせいだよ。あのバカの仕業さ。

 クリスマスのスーパーマーケットは、朝から引っ切り無しに人が押し寄せて、大忙しだったよ。私はいつものようにレジ係をやってたんだ。その日は気分が優れなくてね。お昼のピークを回った頃にはメマイがしてきた。それで休憩を貰って控え室で一眠りしてたのさ。そしたら、あの人の声が聞こえたような気がしてね。私は飛び起きたよ。あの人が呼んでる。ここをクビになっても構わない。生活なんて、どうなったって良い。やっぱり、あの人に会いに行かなきゃ。
 私は制服のまま職場を飛び出してバスに乗ったよ。手紙に書かれていた住所を忘れる事が出来なかったんだ。バスから電車に乗り換えて、東京を飛び出した。行った事もない港町。そこに、あの人が待っている。バカげた話しだよ。嘘みたいな話さ。でも私は信じる事しか出来なかった。

 電車は港町に着いた。可笑しな事に私はその街を知ってたんだ。見知らぬ港町のはずが見覚えがあったんだ。それで、私はどこに行けば良いのか直ぐに分かったんだ。海岸通にあるレストラン。そこには風見鶏のあったはず。海岸線を小走りで進むと風見鶏が見えてきた。あそこだ。
「おい!」海の方向から誰かが私に声をかけてきた。海岸に男が立っている。私は目を疑った。あの人だ。あの人は生きてたんだ。私は持ってたバックを放り投げて、あの人の元に駆け行ったよ。それから両手を広げてね。あの人の胸に飛び込んだ。暖かい、あの人の胸にさ。
「バカ! バカ! 生きてるなら、どうして知らせない! 寂しかったんだから! 寂しくて死にそうだったんだから!」
「すまない。すまない」あの人は五年前と同じ言葉を繰り返した。

「なあ。聞いてくれ」あの人は泣きじゃくる私の両腕を掴んで顔を覗き込んだ。
「俺は死んでる。これはお前の夢の中なんだ。俺はお前の夢の中に忍び込んだ。俺が手紙を出したのも、お前が手紙を受け取ったのも、お前の夢の中の出来事だったんだ。いいか。よく聞け。俺は大丈夫だ。何も心配するな。お前はお前の人生を生きなきゃならない。死人には何の力もないんだ。いいか。目が覚めたら俺から最後の贈り物が待っている。お前は、それを受け取らなきゃならない。俺はお前を永遠に愛している。だからお前はそれを受け取る必要があるんだ。いいな」それだけ言って、あの人は跡形も無く消えちまった。
 ひどいじゃないか。あんまりだよ。私はまた一人ぼっちだ。私は泣きわめいた。
「バカ野郎〜〜! クソ男〜〜! 死んじまえ〜〜!」そして私は意識が薄れていった。

 目を覚ますと職場の控え室で寝ていた。「大丈夫ですか?」誰かが私の顔を覗き込んだ。鈴木さんだ。心配して見に来てくれたんだ。それから私はしばらく鈴木さんと見詰め合っていた。どうした事だろう? あの人の顔がちらつかない。そして、もっと驚いた事に私の中で何かが変わろうとしている。何かが芽生えようとしている。私の中に大輪の花が、今にも咲き誇ろうとしている。
「この前の事。もう一度、考え直してくれませんか? 私は貴方が……」私は鈴木さんの言葉を制して「もう少しだけ待って。もう少しだけでいいから」と告げた。

 私は瞳を閉じて、死んだあの人に声をひそめて話かける。
「バカね。本当にお人好しなんだから。でも有難く受け取る事にするわ。あなたが託した恋ならば」


☆本日のオマケは、はるみちゃんだ! 演歌は苦手だけど、この曲はジャンルを超えた名曲だと思うな〜。泣いてくれ〜!

都はるみ - 北の宿から
posted by sand at 17:34| Comment(5) | TrackBack(0) | 超短編小説C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。轟二郎です。某サンドイッチ屋さんにそう命名されました。
私の演歌スピリットの琴線に触れるストーリーでしたね。私はこういうの好きだけどなあ。
ああ、幸せになりたい。
Posted by ショコポチ at 2007年01月30日 01:30
まいど、なかなか面白かった。sandさんの文章が技術的にどうかは知らんけど、いつも最初の方で想像力をかきたてられる。死んだ男からの手紙?プレゼントはいったいなに?って。
そもそも5年後の手紙なんてのが存在したのかもよくわからない。そういうところが想像力をかきたてられる。
死んだ男は「再婚してくれ」と言いながら5年後に手紙出すなんて、なんか矛盾した奴だ、と思ってたら最後にこうなるとは、してやられた。
完全なハッピーエンドではなく、ハッピーエンドの予感で余韻を残すのも良いですね。
Posted by TWANG at 2007年01月30日 12:37
まいど。読んでいただきまして、ありがとうございます。

ショコポチさん

>轟二郎です。

冠二郎やろ! あんたチャレンジボーイかよ!
たはは。

>演歌スピリット

やはりパンクスと演歌は背中合わせでしたか。むむ納得。どうもご感想ありがとうね。

>ああ、幸せになりたい。

ああ。なぜかホームレスと話してる気分です。

TWANGさん

おお〜感想いただいて感激しています。まことにありがとさ〜ん。

>sandさんの文章が技術的にどうかは知らんけど

あ、僕は文章下手ですよ。なんか奇抜な題材や設定で誤魔化してるだけです。
文章上手いのはショコポチさんみたいな人です。↓の文章なんて良いですよ。さすがプロですね。
http://konore.seesaa.net/article/32090655.html

>最後にこうなるとは、してやられた。

どうもありがとうございます。この構成は、わりと気に入ってるんですよ。短い文で動きのあるものにしたかったからですね。文章は粗いけど、勢いのあるものにしたかったし。まあまあ満足なんだけど、何か足りないような気がするな〜。文章力だけじゃなくて、何でしょうね?ん〜よく分からん。ま、また書いてみますので、時間のある時にでも。それでは本当にありがとうございました。
Posted by sand at 2007年01月30日 20:45
どうも。
コメントありがとうございます。
クリスマスの物語、読みました。
すごくよくまとまっていて
ひねりもきいていてすごいですね。
女心もよく表れていてすてきですね。
今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by 星霜敦 at 2007年02月05日 16:51
どうも感想ありがとうございます。
とても嬉しいです。ちょっと忙しいので落ち着いたら、また伺います。
Posted by sand at 2007年02月06日 17:54
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