2005年06月04日

暗黒星の秘密C

焔.jpg

熱風に吹き飛ばされた埼玉ネコとアライグマ男は、背中を炎に包まれながら海面に叩きつけられた。
身体が嫌な音をたてて軋しみ、焦げつくような痛みが全身を這い回った。

海中の奥深くまで投げ出された埼玉ネコは激痛に耐えながら、泳いで水面まで達した。
咳込みながら息を継ぐと、急いで位置を確認した。湾岸道路に炎上する車が見える。少し離れた場所にアライグマ男の顔が見えた。「大丈夫か?」
アライグマ男は、右手の親指を上げた。
「敵が見えるか?」埼玉ネコは、苦しそうに咳込みながら聞いた。
「煙で見えない。沖まで泳いで様子を見たほうが良い」

埼玉ネコとアライグマ男は、鉛のような身体を懸命に動かして沖まで泳いだ。
埼玉ネコは途中で胃の中の物を嘔吐した。

やがてパトカーのサイレンが遠くから聞こえた。
「もう去っただろう」アライグマ男は、泳ぎを止めて埼玉ネコに言った。
「そうだな。あの埠頭まで泳ぐか。」埼玉ネコは苦しそうな表情で右側の埠頭を指差した。
「ハードな仕事になったな」埼玉ネコは愚痴るようにアライグマ男に言った。

「男の仕事は常にハードだ。命なんて、ちっぽけな物だろ」アライグマ男は淡々と泳ぎ始めた。
「命は大切にして金庫に閉まっておくもんだぜ」埼玉ネコも気力を振り絞って泳ぎ始めた。

埼玉ネコは懸命に泳ぎながら昨日会った女の事を思った。
全ては、そこから始まった事だ。

昨日の午後、その女が扉をノックした瞬間に始まる。
posted by sand at 12:54| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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