2007年06月01日

あの頃の僕らを包んでいたのは、まだ温もりの残る"カレーうどん"だった

J.bmp

 カレーうどんがテーブルに届いた。以下、内容を書き記してみよう。

1.大ぶりのどんぶり(直径約45cmで深さも充分ある)にうどん麺が横たわり、上から大きめ野菜と角切り肉をコトコトと煮込んだカレールーがかけられている。この時点では、まだスープは入っていない。通常のカレーライスのご飯がうどんに変わった状態。

2.白ご飯がお茶碗(小)に一杯。

3.熱いうどんスープ入りのヤカン。

4.タクワン2切れとキムチ適量が盛られた小皿。

5.青ネギが鉢に山盛り(自由に入れて良い)

6.紙ナプキンとレンゲ

以上。これでお値段510円はリーズナブルと言えるのかもしれません。

 この店ではカレーうどんをオーダーするとこのセットが出てくる。従って余計なご飯類のオーダーはタブー。麺は堅めを指定。すこし場所をとるのでお昼時の混み合った時間帯には不向き。午後1時45分が最適な入店時間だと思われる。これ以上、早いと混んでて食べにくい。これ以上遅いとお昼時の活気が損なわれて少々寒々しく味気ない。

 紙ナプキンを焼肉店のように胸にかける事も出来るが、私は推奨しない。なにか大袈裟な気がする。カレーうどんに余計な装飾は必要ない。

 では、まず初期段階のカレーうどんを頂こう。
この時点でのうどんは、堅く硬直して、なかなか動こうとしない。上から熱くドロドロと粘着質なカレールーが乗せられているのだから、なおさら意固地に動く事を拒み続ける。
 辛抱強く、うどん麺を解きほぐす。まず1〜2本のうどんを要領良く抜き取り、充分にカレールーを絡め、スパゲッティミートソースの要領で口内に押し込む。
 堅く弾力のあるうどん麺に濃い目のカレールーがネットリと纏わりつき弾むようなハーモーニーを産み出している。一般的なカレーうどんと呼ばれる味よりも、さらに濃厚で歯応えに勝っている。カレールーとうどん麺のガチンコ対決と言えそうだ。ドッシリとした味わいを堪能する。美味い。

 続いて第2段階に入る。所謂、一般的なカレーうどんの状態にうどんスープを注ぐ事で徐々に近づけて行く。一度に大量のスープ投入は厳禁。あくまで麺とカレールーの状態を見極めながら、少量に分けて、うどんスープを注ぐ。
 スープの投入は、どんぶり内のカレーうどんに柔和をもたらす。堅く拒み合っていた両雄が次第に心を開き、肌を寄せ合う様は、まさに圧巻。うどんスープは、カレーうどんの緊張緩和に一役買ったようだ。麺とカレールーが十分に浸された状態でスープをストップ。さらに上から青ネギを大量に投下。実に瑞々しいスタンダードタイプのカレーうどんが完成。

 ここで麺とカレールーとうどんスープをグチャグチャと掻き混ぜる行為は遠慮したい。麺は麺。カレールーはカレールー。うどんスープはうどんスープと、それぞれの尊厳を保つことが肝要と考えられる。我々はこれを『基本的食権の遵守』と呼ぶ。
 3者はお箸の先で微妙に混ざり合い。それぞれの個性を発揮する。先ほどの生の状態より格段にクリーミーであり、まろやかでもある。カレールーとうどんスープ。この一見不釣合いな両者が産み出す味のコントラストは、まさに絶品。深遠なる陰影の世界。言わば1958年あたりのマイルス・グループ。マイルスとコルトレーンの光と影を思わせる極めてシリアスな絡み合いを髣髴させると言っていいだろう。濃厚にして清涼。辛みと甘み。弾力性と柔軟性。
 これまた美味い。

 さて作業は最終局面を迎える事になる。
これに備えて、麺だけを綺麗に食べ尽くし、カレールーとうどんスープと青ネギの混ざり合った液状勢の摂取は必要最小限に抑えておく。麺を食べ終わった段階で、まだ充分な液状勢が残されている事を確認してから後、どんぶりの中にお茶碗から白ご飯を投入。さらに追加のうどんスープを適量注ぎ。さらに青ネギの再投入。とどめにタクワンとキムチを投入して、今回は良く混ぜ合わせ、レンゲを用いて食す。
 カレーうどんは最終的にカレーおじやに姿を変える。これが事の外、美味い。なにしろカレールーとうどんスープの混入物がベースなのだから、まさに多重的な味わいに満ち溢れている。幾十にも折り重なる味のタペストリー。ここではキャロル・キング&ジェームス・テイラー的な新鮮さと懐かしさを味わうことが出来る。『この道は〜♪いつか来たみ〜ち〜♪』そんな唱歌が口をついて漏れ出す、実にノスタルジックにして甘く切ない。これ以上望むべきものがない味わいを表出する。

 感触後、満ち足りた溜息と共に口元を紙ナプキンで拭い、全工程の終了となる。 

 終わり。


posted by sand at 18:37| Comment(4) | TrackBack(0) | コラム・食い物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
カレーうどん、食べたいです、猛烈に!
ただ、私にはうどん後のご飯は多すぎですけど。

読みながら、どの段階でたくあんが参戦するのかと思い、どきどきしましたね。
せっかくのこのコンセプトを中途半端に終わらせないために、胃下垂の女性のために、ミニカレーうどん付きバージョンもメニューにしてほしいな。ああ、食べたい。
Posted by ring-rie at 2007年06月06日 10:23
ういっす!よく来たな!さくらんぼ君(誰それ?)

>カレーうどん、食べたいです、猛烈に!

よし!食え!

>私にはうどん後のご飯は多すぎですけど

バカヤロウ!!ウンコしてから食え!

>たくあんが参戦するのかと思い、どきどきしましたね。

ドキドキしたのか!ガサツな人には似合わないな〜ドキドキ。

>胃下垂の女性のために、ミニカレーうどん付きバージョン

あ、胃下垂だったのね。それでスタイル良い訳ね。も〜悔しいったらありゃしない。私なんかプヨプヨよん。(なんや、このレスは…コメントは減る一方やね)
Posted by sand at 2007年06月06日 15:12
お久しぶりです。
書くことがsandさんは本当に
お好きなんですね。
笑いながらここのところ(近日の)テキスト
読ませていただきました。
相変わらずやっています私ですが
本当にかなり好き勝手やってます。
Posted by evergreen at 2007年06月09日 09:29
遅れました〜すいません〜。

最近はビール飲みながらリラックスして書いてますのでバカバカしいです。
トボトボやってますので、気がついた時にはヨロシクです!
Posted by sand at 2007年06月11日 16:54
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