2005年06月22日

暗黒星の秘密K

やがてパトカーのサイレンが遠くから聞こえた。
「もう去っただろう」アライグマ男は、泳ぎを止めて埼玉ネコに言った。
「そうだな。あの埠頭まで泳ぐか。」埼玉ネコは苦しそうな表情で右側の埠頭を指差した。
「ハードな仕事になったな」埼玉ネコは愚痴るようにアライグマ男に言った。

「男の仕事は常にハードだ。命なんて、ちっぽけな物だろ」アライグマ男は淡々と泳ぎ始めた。
「命は大切にして金庫に閉まっておくもんだぜ」埼玉ネコも気力を振り絞って泳ぎ始めた。

波止場.jpg

埠頭の舟と舟の隙間に、埼玉ネコとアライグマ男は転がり込んだ。全身ずぶ濡れで、足や腰を負傷している。
荒い息をつきながら、埼玉ネコは防水ケースから携帯電話を取り出しエリザベスに連絡を取った。
最初の言葉は電話を取ったエリザベスからだった。
「生きてるのね!どこにいるの!」

「生きてるようなのだが、地獄との違いも分からなくなった。」
埼玉ネコは、これまでの経過を説明した。

「誰か車を手配してくれないか」
「いいわ。ティミーって子を向かわせるわ。まだ16歳だけど、とても頭が切れるの。もちろん運転も大丈夫。」
「ガキなら怪しまれなくて良いかもな。頼むよ」
「他に必要な物は無い?」
埼玉ネコは、薬品と着替え、食べ物を頼んだ。

「それから・・」埼玉ネコは言いかけた。
「警察の事なら心配ないわよ。父に頼んで圧力をかけてもらうわ。それからアジトのベイサイド・ビル跡地には、ウチの警備員を送って張り込ませておくわ」
「君は頭が切れるんだな。たいしたお嬢様だ」
「憶えておいて、女は、いつでも捨て身になれるものよ」
エリザベスは、そう言い残すと電話を切った。

2人は、その場で迎えの車を待っていた。
空は夕陽で真っ赤に染められている。冷たい風が吹いて二人は身体を震わせていた。

湾岸道路の方向に人影が動いた。夕陽を浴びて何かがキラリと光っている。
埼玉ネコは飛び起きて、アライグマ男に声をかけた。

「スナイパーだ!」
posted by sand at 13:48| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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