2007年07月10日

タコの惑星

okuto.jpgsyabu.bmp
Gentle Giant / Octopus

 俺と助手のオサムが乗る宇宙船は、タコの惑星に到着した。

 宇宙船の窓からは、大海とそれに接するゴツゴツとした岩場が見えた。見渡す限りの岩場には無数のタコが(おそらく億単位)ビッシリと隙間なく張り付いていた。

 俺はオサムに準備を急がせた。
「準備はどうだ! オサム?」
「OK!教授。乗り込みましょう!」

 俺は興奮で武者震いしながら宇宙船の扉を開け、タコの群れの中にに飛び込んで行った。機材を抱えたオサムが後に続いた。

「ハローハロー。私達地球から来ました。王様に会いに来ました。王様どこですか? 私達フレンドで〜す」俺はそこらに転がってるタコ達に聞いてみた。そう、この惑星は一匹の王様によって統治されていたのだ。王の名は『ピエール・タコ3世』と呼ばれた。

 タコ達のダラダラした道案内に従って、岩場を進むと小高い岩の上に体長1.3倍の大きめサイズのタコがグッタリしていた。
「どうやら、あのタコが『ピエール・タコ3世』のようだぞ。いくぞ! オサム!」俺は興奮で心臓がバクバク鳴り出した。アドレナリンが大量に噴き出しているのが分かった。

「ハローハロー。ピエール。私達、地球から来ました。友好、友好。私達フレンドで〜す」俺は興奮で震える手で『ピエール・タコ3世』に握手を求めた。タコのピエールは、大きめサイズの蛸足をノロノロした動きで差し出したのだった。
 俺は「むんず」とピエールの蛸足を掴み取った。
「よっしゃあああ! 捕獲したぞ!オサム!」俺が叫ぶとオサムは俊敏な動作で背負っていたバックから「カセット式のガスコンロ」「鍋」「ミネラル・ウォーターの瓶」を取り出し、鍋に水を注ぎ、ガスコンロに火をつけた。さらにバックから「まな板」と「包丁」を取り出し、俺に手渡した。「はいよ!」俺は一声かけてピエールの蛸足をトントントン!と小気味良い包丁さばきで、ぶつ切りにしていった。「はいよ! 上がった!」俺がぶつ切りピエールをオサムに差し出すと「はいな!」とオサムは叫び、沸騰したお湯の中にポンポンポン!とリズミカルにピエール蛸足を投げ込むのであった。

 ぐつぐつピエールが湯気を上げている間に、オサムはポン酢を取り皿に注ぎ、柚子胡椒をタップリ入れて掻き混ぜた。「ハイハイ。煮え過ぎちゃダメ。煮え過ぎちゃダメよ」俺達はピエール蛸足をサッとお湯に通してポン酢に浸し、口の中に放り込んだ。「ホヒホヒ。アチチ。コリコリひて、おいひいね〜♪」「ホヒホヒ。アチチ。はすが、王のあひですな〜♪」俺達は岩場にアグラをかいて、タコしゃぶを腹いっぱい食い尽くすのであった。

 俺の興奮は頂点に達していた。『なんとも天晴れな男達だよな〜。見ず知らずの惑星にズカズカと上がりこみ、事もあろうに、その星の国王を国民の前でバクバク食っちゃう訳ですからね〜♪惚れ惚れするほど粋だよ』俺は自画自賛し自らを褒め称え、のぼせ上がるのだった。

 腹いっぱいタコを食い尽くし「もう食い飽きた。タコ見るのも嫌」という状態になると、俺のテンションは急速に落ちて行くのだった。猛烈な脱力感が湧いてきて物悲しい気持ちになってきた。「俺はこんな星まで来て、何をやってたんだ」「まったく何をのぼせ上がっていたんだ。大人気ない」俺を強烈な罪悪感が襲った。
「おい、オサム。俺なんだか力が抜けて…」見るとオサムも口からヨダレを垂らした腑抜けの顔をして呆然となっていた。
「きょうじゅ〜。 僕、腰が抜けてしまいました〜」オサムは目の下に隈を作って疲労の局地にあるようだった。

 俺は岩場に脱力したまま座り込んで、辺りを見渡した。タコの惑星は日が落ちて夕焼けに空が染まっていた。赤い夕陽を浴びて、テカテカと光り輝く無数のタコたちを見ていると、なんだか大量に放出された精液を見ているような気持ちになった。それで俺の気持ちは益々落ち込んで行った。

 俺は朦朧とした頭で身体を横たえた。もう座っている事さえ出来ないほど体がダルかった。「おい。オサム」俺はオサムに話しかけると、「もう今夜は勘弁してください」とオサムはダルそうに答えた。
「なにを勘弁するのかね?」と俺は再度オサムに聞くと、「もう今日は出来ませんよ。もう立ちませんから」とオサムは辛そうに答えた。
「なにが立たないのかね?」と俺はもう一度オサムに聞くと、オサムの返事はなかった。

 俺はダルい身体を、なんとか動かしてオサムの方を見やると、オサムの身体にはビッシリと無数のタコが乗っていた。それどころか顔の上にも無数のタコが乗り上げていた。「ああ。オサムは死んでしまったのかな?」俺はもうあまり考える事が出来なくなっていた。

 オサムから目を離し自分の身体を見ると、やっぱり無数のタコ達がビッシリと乗り上げていた。それからゾワゾワと顔面にもタコの吸盤が吸い付き始めた。タコ達は俺の顔の上にも容赦なく乗り上げてきた。やがて蛸足が口や鼻の穴や耳の穴や目の穴から、ズルズルと俺の中に入ってくるのが分かった。俺は穴と言う穴を蛸足によって責められ、恍惚とした快感に酔っていた。俺は薄れていく意識の中で最後の思考を結び合わせた。それはこんな言葉になった。

「避妊だけは、お願いしますね」
posted by sand at 18:26| Comment(4) | TrackBack(0) | 超短編小説C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 ちょっと気持ち悪いです。足がいっぱいの生き物は嫌いです。デレク・シュルマンは何か暑苦しいので、今日のような天気の時には会いたくないですが・・・。
Posted by ITORU at 2007年07月10日 18:40
こんばんは。メチャクチャ、コメントが早いですね〜。毎度ありがとうございます。確かに気持ち悪かったですね。タコしゃぶも食べたくなくなったな。読み直してたらザーメンの匂いがしてきて吐き気がしました。次はロマンチックで行きましょう。
Posted by sand at 2007年07月10日 18:53
のこぎりの次はタコですね、タコの逆襲。

タコはね、何回かちっちゃいのをまるごと料理しましたけど、イカよりはるかに気持ち悪いですねえ。でもタコしゃぶは美味しい。あの落差が魅力ですわ。

えっと、下のコメントで、名前を入れずに送った後の訂正の件ですが、なぜか、送信したら、送信時間が逆行したのですよ。不思議〜!!
それを言い訳したかったけど、どれだけ暇やねんこの人!と思われたくないので我慢してましたが、やっぱり、言い訳したくなりましたのでお伝えします。
ミステリーを呼ぶサイトのようですね、ここは。

次回はタイムスリップものをお願いします。
Posted by ring-rie at 2007年07月11日 14:53
わんばんこん。

>のこぎりの次はタコですね

当然でしょう。

>タコの逆襲

逆襲させるな。

>イカよりはるかに気持ち悪いですねえ

俺の顔もイカより気持ち悪いよ。

>送信したら、送信時間が逆行したのですよ。不思議

はいはい。不思議。不思議。

>それを言い訳したかったけど、どれだけ暇やねんこの人!と思われたくないので我慢してました

どれだけ暇やねんこのブタ!あ、ブタとか言ってなかったね。失敬失敬。

>ミステリーを呼ぶサイトのようですね、ここは

おばちゃんの頭がミステリーですやん!顔は可愛いけどね(大人のフォローですぞ)性格もメチャメチャ良い(これはフォロー抜きで)

>次回はタイムスリップものをお願いします。

タイムボカンでも見とけ。ウソウソ。今度、考えてみますね。ありがとさ〜ん。

Posted by sand at 2007年07月12日 18:46
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