2005年07月08日

Everything Is Broken

白サギ.jpg

見事な白サギだった。
細い足に雪のように白い羽毛を身にまとい。
黄金に光り輝く長いくちばし。小さく弱々しい目。
そして白く長い蛇のように、しなる首。
私は、その白い首の美しさに魅せられてしまった。
それは、長襦袢を着た妙齢の美女のように官能的でさえあった。

私と埼玉ネコは、田園地帯の沼地に来ていた。
見渡す限りの緑を湛えた水田の中に、その沼はポツンと存在した。
沼には1羽の白サギが、長い首を折りたたむように佇んでいた。

白サギを見つめたまま、放心したような私に向かって埼玉ネコは声をかけた。
「あなたも男だ。あの白サギの首を締めたいのですね。良いですよ。
殺しなさい。あなたの気が済むように」
埼玉ネコは、ニヤニヤと笑った。

私は夢を見るように沼の中に入り込み、白サギの前に立っていた。
白サギは、怯えた目で私を見た。
私は、その目を見ていると身体の中から熱い熱い物がこみ上げてくるのが分かった。
私は、我を忘れて白サギに絡み付いた。白サギは、奇妙に甲高い声を上げた。
その声は、ますます私を狂わせた。私は、痛いほど勃起していた。
私は、白サギの首に手をかけた。首は、熱く脈打っていた。
私は、こみ上げる感情を抑えられないまま、白サギの首を締め上げた。
白サギは、苦痛の声を上げた。
私は、興奮で気が遠くなりながら、白サギの首を締め上げ、ねじり上げた。
白サギの断末魔の声を聞きながら、私は白サギの首を引きちぎった。
白サギの首からは、おびただしい血が噴出した。私は引きちぎった勢い余って、沼地に尻餅をついた。

手には白サギの頭が握られていた。私は、ようやく我にかえる事が出来た。


突然、引きちぎられた白サギの頭は不気味に笑いはじめた。そして押し殺した声で言った。
「どんな塩梅だい?私を壊した気分は?」

私は急いで、その首を投げ捨てた。
慌てて立ち上がろうとした私は、下腹部に大量に射精している事を知った。
それは異常なほどの異臭を放った。
私は、たまらず胃の中の物を嘔吐した。
吐き気は、次から次に襲って来た。私は、何度も何度も嘔吐を続けた。
それでも吐き気は、収まる気配を見せなかった。私は黄色い胃液を吐き出した。
こらえがたい苦痛に泥の中を転げまわった。
吐いても吐いても吐き気は収まらなかった。黄色い胃液に血の色が混じった。
私は、すがるように埼玉ネコに助けを求めた。

埼玉ネコは、ニヤニヤ笑いながら言った。
「真実の姿とは、時として滑稽であるものです。打ち砕かれ形を失った魂も、また然り」


 折れたカッター、折れたのこぎり
 壊れたバックル、犯された犯罪
 くずれた肉体、砕かれた骨
 壊れた電話から、つまった声
 深呼吸してごらん
 息がつまりそうだろ
 何もかもが壊れているから
   「Bob Dylan/Everything Is Broken」
oh mercy.jpg
posted by sand at 03:10| 超短編小説・埼玉ネコシリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。