2005年07月11日

エリオット式トンボ捕獲術(前編)

Strawbs Dragonfly.jpg

「山下君。どうやら僕達は、エリオット式トンボ捕獲術を試みる必要がありそうだよ」
教授は、研究室の黒板の前をウロウロ歩き回りながら話し続けた。

「エリオット式トンボ捕獲術。夢にまで見た捕獲術だ。おお。何と言う伝統。何と言う品格。
麗しい。流暢なる鐘の音が聞こえるようだよ。
僕は長年この捕獲術を研究してきたんだ。その起源は18世紀のウェールズ地方まで遡る事になる。
エリオット・グルードマン。
彼によって、この捕獲術は、この世に生を受ける。その格式ある捕獲術は瞬く間に英国全土に広まったと伝えられる。
しかし、その優雅な捕獲術が後世まで伝えられる事はなかった。
その時代だけに咲き誇った、儚い「あだ花」だったんだね。

なんという浪漫だろうね〜。
僕は文献を漁って、その捕獲術を調べまくったね。そして遂にその全貌が明らかになったんだよ。

いいかい?良く聞いてくれよ。
我、光沢のある猫を用いて、その者を手の内にす。
黄金の陽翳る時、その者の背に乗りし光沢のある猫。
きらめく空を舞う宿命を背負いし、その者。
やがて大地はその者を抱き、柔らかな休息を与えるなり。


「う〜〜ん難解ですね〜。光沢のある猫と言うのが、どういう猫なのでしょう。
<その者の背に乗る>という事は、トンボの背中に乗るような猫がいますかね?」私は教授に疑問を投げかけた。

「そこなんだよ。僕が長年、理解出来なかった点はね。
それがね。つい先日、別な文献から、こんな記述を発見したんだ。ここ。ここ。読んでみて」
教授は慌しく文献を開いて私の前に指し示した。

「ああ。光沢のある猫の説明が書いてありますね。
読んでみます。
光沢のある猫は、川辺に生息する小動物なり。緑の身体はヌルヌルとし、人の手の平に乗るほどの大きさが、よく見られる。
ケロケロと鳴き。大勢で鳴くと非常にうるさい。後ろ足でピョンコ、ピョンコと跳ねるなり。

・・教授。これは、もしかしてカエルじゃないでしょうか?」

「おおおお!君もそう思ったかね!それだよ!絶対!カエルに違いない!
おお。僕は歴史のトリックに絡め取られていたようだよ。青カエルならトンボの背中に乗れそうじゃないかい。そうだんだよ〜。ちくしょう!長い間騙されてしまったよ。」

「教授。では早速」
私達は研究室を飛び出し、歴史の中に飛び込もうとしていた。
posted by sand at 03:32| 超短編小説A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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