2007年08月05日

The Kinks Present"小さな夏のメロディ"

Percy.bmpthe great lost album.jpg
The Kinks / Percy [Soundtrack]

 暑い。灼熱の夏、到来です。外に出ると地獄だ。それでも…

 それでも配達中なんかに、クーラーの良く効いた車中から、陽炎が立ち上るアスファルトや青々とした街路樹を眺めながら…。はたまた横断歩道を日傘をさして横切って行く夏服の女達を眺めながら…。
 あるいは少し日が翳った夕暮れ時、木陰に佇んでいるとヒンヤリした微風を感じた時。田舎の広いお座敷で高校野球を見ながら冷たい生ビールを流し込む時。

 そんな時、夏はその厳しい顔を少しだけ緩める。そして耳を澄ませば、その時その場所に聞こえてくる音楽がある。私にとって、それは"The Kinks"であると。そういうことになる訳だ。

 たとえば、それは『The Way Love Used to Be』であり、『Sunny Afternoon』であり、『Lavender Hill』であり、『Mister Songbird』であり、『Too Much on My Mind』であり、『Do You Remember Walter?』であり、『Picture Book』であり、『Sitting by the Riverside』であり、『She Bought A Hat Like Princess Marina』であり、『Apeman』であり、『Come Dancing』であり、『Good Day』である。

 レイ・ディビスは、四季を書く天才である。キンクス・ファンであれば、それぞれの季節ごとにお気に入りのキンクス・ナンバーを持っている(ストーンズやザ・フーであっても、そういう意味合いには乏しい)。

 それはレイ・ディビスという人が徹底的な傍観者であるという事だろうか。であるからして、であるならば当然、彼は誰よりも孤独であった。
 四季を歌うキンクス・ナンバーは(今回の場合は"夏")、まるで手のひらに乗るほどの小さなメロディを持っている。小さく可憐で、今にも壊れそうなほど美しい。そして絶望的に孤独でもある。
 
 我々は古いアルバムをめくるように、レイ・ディビスお手製の絵葉書に視線を落とす。くるくる回る扇風機の羽根。氷の溶けかけたカルピスのグラス。窓辺に揺れる風鈴。我々はテーブルに頬杖をついてレイからの夏の便りを眺め続ける。そして、じっと耳を澄ます。

 キンクスの"小さな夏のメロディ(小夏メロ)"を最も楽しめる作品集とは? 誰かが、そう聞いたとして、私なら『The Great Lost Kinks Album』を推そう。隅から隅まで『小夏メロ』が詰まった極めて美しい作品集だ。
 ただ残念な事に、このアルバムは廃盤なのだ(これは全ROCKファンにとって最大級の損失です)。

 気を取り直して『Percy』は、どうだろう? このアルバムはサントラとして世に出て以来、誰もその価値を認めたがらない。
 確かに散漫で、寄せ集めで、やっつけ仕事で、ROCK的な迫力に乏しく、これと言ったキャッチーな楽曲もない。
 だが『The Great Lost Kinks Album』に最も似た雰囲気を持っているのは、このアルバムなのだ。

 その『The Great Lost Kinks Album』にも収録されている『The Way Love Used to Be』を聴けるだけでも、このアルバムの価値は有り余るほどだ。この繊細で孤独で、静かな夏の湖を思わせる憂いを帯びたメロディはどうだろう? これは現存する最も美しいメロディの一つだ。

『God's Children』は、キンクス流英国フォークの到達点だ。これ以後、彼らはアメリカ音楽との融合を目指す。そして二度とこの場所には戻らなかった。

『Moments』は美しいストリングを伴ったセンチメンタルな曲だ。後に大仰なロックオペラの一大絵巻が繰り広げられる直前。シンプルで短い構成でありながら、スケール感を感じさせる。ラフなスケッチであるが故に完成度とは違った意味の魅力を持った曲。

『Just Friends』は、ジャック・タチ監督の映画「ぼくの伯父さんの休暇」を髣髴させる、ユーモラスな楽しさに溢れた曲。そして当然、夏の終わりの寂しさも忘れてはいない。

『Dreams』も不思議な雰囲気を持った曲だ。ある場面では、寂しさと哀しさが描かれる。ある場面では、辛辣で攻撃的。ある場面では、前向きで快活。それが"夢"であるのなら、当然、そうなのだが。

 動画は『Sunny Afternoon』しか、ないな〜。

The Kinks - Sunny Afternoon


posted by sand at 19:17| Comment(4) | TrackBack(0) | コラム・音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。キンクスへの愛に満ちた、とっても素敵な文章に感激、なのです。

「Percy」、実に分裂症的なアルバムで(笑)、畢生の名曲と言っても過言ではない「God's Children」の後に、「Lola」のどうしようもなくチープなインストという展開にガックシという感じだったのですが、今改めて聴き直してみて、「The Way Love Used to Be」が最高に良かったのです。sandさん仰るとおり、「繊細で孤独で」なんだかしみじみと夕暮れた気分になってしまうのです。
Posted by nyarome007 at 2007年08月05日 22:46
ご無沙汰です。お引越しされてたみたいですね。お疲れ様です。うちも去年やりました。重労働ですよね。

>「God's Children」

これは良い曲ですよね。埋もれさすには勿体無い。

>「Lola」のどうしようもなくチープなインスト

これは粗いですよね。やけくそって感ありますよね。

>「The Way Love Used to Be」

良いですよね〜♪こういうのがポロンと転がってるのが天才の所以ですね。まったく素晴らしいですね。
Posted by sand at 2007年08月06日 17:17
The Great Lost Kinks Album欲しいなぁ、パーシーもなぜか持っていません。
 四季とキンクスか・・その通りですね。
Posted by ITORU at 2007年08月06日 19:46
PercyとThe Great Lost Kinks Albumは、いつか会う時にCDRに焼いて渡しましょう。
Posted by sand at 2007年08月07日 19:01
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