2005年10月07日

秋のコロッケ

コロッケ.jpg

季節は秋。
君は、その事に、もう気付いている。
秋には秋の装いがあるように<秋のコロッケ>もまた存在する。

さて、<秋のコロッケ>とは、どんな物だ?

1.捜索

<秋のコロッケ>の捜索には、夕暮れ時を要求される。
空が赤く染まるようなら好都合。
君は、忘れ去られようとしている商店街に自転車を走らせる。
「昭和」の匂いのする商店街だ。
細い路地に数件の商店が軒を連ね、中の2〜3件は寂しくシャッターが下りている。
薄暗い電灯に照らされた、老夫婦の営む、小ぢんまりした総菜屋。
軒先を小さな子供達が三輪車に乗って走り回る。庶民的な精肉店。

君は、そこでコロッケを購入する。

2.選択

<秋のコロッケ>の選択は、基本的に無条件だ。
肉じゃがコロッケだろうと、かぼちゃコロッケだろうと、クリームコロッケだろうと。
まったくの無関係。
全ては<秋のコロッケ>たりうる。
<秋のコロッケ>は寛容なのだ。何もかもを、分け隔てなく包み込む。

3.放置

<秋のコロッケ>の最大の特徴とは放置を言う。
<秋のコロッケ>にとって、熱こそが大敵なのだ。

君は、コロッケを購入する。包みはホカホカと暖かい。
今、かじり付けば、サクサク、ホコホコして堪えられないはずだ。
君はゴクリとツバを飲みこむ。

さぁ我慢だ。今、食べれば、それは<秋のコロッケ>では無くなるのだ。

君は<秋のコロッケ>を自転車の買い物カゴに投げ入れ、自宅まで車を走らせる。
部屋に戻ると食器棚(冷蔵庫はダメだ)に、それを仕舞い。
<秋のコロッケ>の存在を忘れ去る。そう、忘れ去る必要がある。

4.時刻

<秋のコロッケ>の時刻は、午後10時頃到来する。

君は、大ぶりのグラスに焼酎を七分目まで注ぎ入れる。
焼酎は、麦または蕎麦が好ましい。

次に、急須に熱いお湯を注ぎ入れよう。ほうじ茶を立てるのだ。
熱々のほうじ茶を先ほどの焼酎グラスに注ぎ入れる。

<秋のコロッケ>には、焼酎のほうじ茶割り。それだけが、あれば良い。

焼酎.jpg

5.<秋のコロッケ>

君は、<秋のコロッケ>の包みと焼酎のほうじ茶割りをお盆にのせ、窓ガラスを開けて、ベランダに出る。
外は、ひんやりとした空気が支配している。遠くから虫の鳴き声が聞こえるようなら好都合。

君はベランダに腰を下ろす。
包みを開け<秋のコロッケ>を取り出す。すっかり冷めて少しばかりネチョとした感触だ。

今こそ<秋のコロッケ>を、味わう瞬間だ。
熱のないコロッケは、まるで物分りの良い子犬のように従順だ。君の恰好にヒッソリと寄り添う。
甘いと言えば甘いく。辛いと思えば辛い。柔らかいと思えば柔らかく。歯ごたえがあると思えば歯ごたえがある。
<秋のコロッケ>は、君の思うように装いを変え続ける。
それこそが<秋のコロッケ>なのだ。

君は、暖かな焼酎のほうじ茶割りと共に<秋のコロッケ>を味わい楽しむ。

それは至福の一時。
君は秋そのものを味わい。秋そのものを楽しむ事になる。


posted by sand at 17:18| Comment(0) | コラム・食い物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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