2011年04月03日

Lonesome Reverie

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 アライグマ男は寝ていた。私は腰を下ろして彼が起きるのを待った。
窓からは、木漏れ日が差し込んでいた。遠くで誰かが釘を打つ音が聞こえていた。
ここは森の中のアライグマ男の家で、今日は日曜日だった。そして私はどんよりしていた。

 アライグマ男が起きる間に頭を整理しようとした。夫であったり、父親であったり、長男であったり、事業主であったり、様々な役割を引き受けていた。それで頭が混乱していた。どこかで立ち止まって考えようといつも思っていた。

 腰を下ろして考えをまとめようとしたが、何も浮かんでこなかった。何に混乱しているのか具体的には思い浮かばなかった。ただ漠然と混乱していた。情けないと自分を責めたりした。

 アライグマ男の家に立ち寄ったのは久しぶりだった。彼と会わない間に色々あったような気もするし、たいした事はなかったような気もする。実際あまり覚えていないのだ。思い出してみようとしても何も思い出せない。ただ漠然とした疲労が脳の中に広がっていた。

 確かなのは私が歳をとった事だけだ。歳をとると何か大切な事を、いつも忘れているような気がする。思い出せない大切な事が、どこかにあるような気がするのだ。

 アライグマ男はあの日のままだった。私と彼との歳の差は、ずいぶん縮まってしまった。もうすぐアライグマ男の年齢に追いついてしまいそうだった。それは少し寂しいことなのだが、今の私は長生きをしたいと思い始めていた。
 私は望んだ時にアライグマ男に会うことが出来た。いつでも私は彼の顔を見に行く事が出来た。ただ、アライグマ男が私に会いたいと思っているのかは分からなかった。

 少しも起きる気配がないので、冷蔵庫から缶ビールを失敬して飲んだ。テーブルの上にあったコーンフレークをポリポリと摘んで食べた。オーディオラックをアレコレ物色して、Nick Loweの『Dig My Mood』をかけた。最近の彼では一番気に入っていた。古いチェストの上に広げてあった缶バッチのコレクションを眺めながらビールを飲んだ。昔、思い描いていた夢がボンヤリと浮かんだが、形になる前に萎んで消えた。

 アライグマ男は急に上半身を起こして、むにゃむにゃと呟き始めた。寝ぼけているのだ。私は彼のそばに近づいて耳を澄ました。
小さな声で「たまごとうふ」と呟いていた。夢をみているのだろう。私は少し躊躇したが、彼を起こして夢から覚ますことにした。人の見る夢が羨ましかった。その夢がまぶしかったのだ。

 アライグマ男の両肩を抱いて彼を前後に揺すった。「おい。起きろよ」私は大きな声をだした。
アライグマ男は驚いたように両手を広げて私にしがみついた。そして私の耳元に「大好き」とささやいた。

 アライグマ男はバタンと仰向けに倒れて動かなくなった。眠ってしまったのだ。私は動揺していた。胸がドキドキした。多分、彼が大好きなのは「たまごとうふ」なのだが。

 私は慌てふためいて逃げるように彼の家を出た。扉を閉める時に彼が目を覚まさないようにソッと閉めた。
多分、目覚めないと思うけど。

posted by sand at 06:11| Comment(0) | 超短編小説・アライグマ男シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月23日

クリスマスのアライグマ男

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Laura Nyro / Christmas And The Beads Of Sweat

 今夜も西の山から地面を揺らすような声が聞こえます。街のみんなは、それが誰の声なのかを知っています。そして、その声の主が、どんなに獰猛で、どんなに残忍なのかを知っているのです。西の山の奥深く、ケイルの谷底から、その声は聞こえてきました。そこに住む、その声の主を、みんなは迷惑そうに眉をひそめて、こう呼びました。
『アライグマ男』と。

 ローラは清掃会社を経営しているJJの娘です。でも、家族達は(もちろん父であるJJでさえも)ローラを家族の一員とは思っていませんでした。JJ一家は裕福でしたが、ローラは、そうではありませんでした。いつも汚れたボロ着をまとい、クモの巣が張り巡らされた屋根裏部屋で暮らしていました。ベッドの上は、ネズミのフンだらけで、ローラの身体からも異臭がしました。
 ローラは死んだお母さんを思い出して泣きました。ローラは誰とも会話する事がありませんでした。一日中。一年中。いえ、ローラは生涯一度も、お母さん以外の人間と話した事がありませんでした。ローラの声は誰にも聞こえなかったのです。ローラの声が聞こえたのは、お母さんだけでした。でも、そのお母さんも死んでしまいました。ローラの声は誰にも届かなくなったのです。

 ローラは本当のお父さんを知りません。お母さんは本当のお父さんの話を一度もしませんでした。ローラが、まだ小さい頃、お母さんはローラの異変に気がつきました。「この子の声が聞こえるのは、私だけなんだ」とお母さんは気が付いたのです。
 それからお母さんは方々の病院にローラを連れまわしました。でも結果はいつも一緒です。「異常はありません」お医者さん達は首をひねることしかできませんでした。

 やがて、ローラの母は金持ちのJJに見初められて、彼の後妻に入る事になりました。でもJJは最初から不気味なローラを嫌っていました。それからしばらくして、ローラのお母さんは、あっけなく死んでしまったのです。ローラを一人残して。

 JJや兄弟達はローラを疎ましく扱いました。JJが新しい妻を迎えると、いよいよローラの居場所はなくなってしまいました。ローラは屋根裏部屋に追いやられ、家族の誰もがローラを忘れようとしました。

 クリスマスの夜。JJ一家は盛大なパーティで盛り上がっていました。屋根裏部屋のローラはと言うと、やはりベッドの上で一人泣いていました。そして、その夜、ローラは心を決めました。
「私は生きたくない。もう私は生きたくない。あの獰猛なアライグマ男に食べられて死んでしまおう」と。それは可哀想なローラが始めて示した自分の意志でした。

 ローラは裏口からJJの屋敷を抜け出して、西の山を目指して駆け出しました。やがて空から冷たい雪が降ってきました。裸足のローラの足は、すぐに血だらけになってしまいました。でもローラは痛みを感じません。足の痛みより心の痛みの方が、ローラには辛かったからです。

 何時間も歩き続けて、ようやくローラはケイルの谷底に辿り着きました。谷底には丸太で作った粗末な小屋がありました。そこにアライグマ男が住んでいるのです。ローラは恐る恐る小屋を覗き込みました。その時、ローラは後ろに気配を感じました。急いで振り返ると大男がローラに覆い被さるように立っていました。

 ローラは恐ろしさのあまり誰にも聞こえない声を張り上げました。
「ああ、どうか私を食べてください。私は生きている必要の無い人間です」
そしてローラは目を閉じました。

 意外な事に聞こえてきたのは優しい声でした。
「僕は君を食べたりしませんよ。それに生きている必要の無い人間なんか、この世にはいませんから」
 ローラが目を開くと、優しく微笑むアライグマ男の顔が見えました。

 ローラはアライグマ男と向かい合ってテーブルに座っています。テーブルにはアライグマ男が作った料理や果物が沢山並べられていました。アライグマ男はローラのグラスに自家製のワインを注ぎます。その夜のローラは溜め込んでいた物を吐き出すかのように喋り続けました。不思議な事にアライグマ男にはローラの声が聞こえたのです。小屋は二人の笑い声に包まれました。でもローラの声が聞こえるのはアライグマ男だけなのです。この世にたった一人だけなのです。

 夜が更けて行くと、次第にアライグマ男の顔は曇って来ました。彼は寂しそうに話し始めました。
「僕が優しい気持ちになれるのは、クリスマスの夜だけです。何故だか分かりません。クリスマスの夜だけ僕の声は小さいのです。でも明日の朝には僕の声は、いつものように大きくなってしまいます。獰猛に吼えてしまうのです。そうしたら僕は、とても残忍で凶暴になってしまうのです。僕は、僕の大きな声に支配されてしまうのです。それは本当の僕ではありません。でも僕はそうする事しか出来ないのです。
 明日の朝。貴方が僕と一緒にいたら、僕は貴方を食い殺してしまうでしょう。引き裂いてしまうでしょう。僕は貴方を愛しています。だから、今すぐ、ここから出て行って欲しいのです」

 ローラは彼の話を聞き終えると首を振って応えました。
「いいえ。私は貴方と一緒にいます。神様は私に一晩だけ幸せを分けてくださったのです。私は、それで充分です。私は自分の意志でここに来ました。それはとても大きな冒険でした。そして、それに見合うだけの幸せを手に入れたのです。たとえそれが一晩だけでもです。私は今夜、生きている意味を見つけました。私の生涯は無駄ではありませんでした。どうか、私を貴方のおそばに置いて下さい」

 ローラはアライグマ男の胸に顔をうずめて眠りにつきました。ローラの瞳から涙が一粒こぼれました。その涙はいつもの涙とは違いました。幸せの涙です。

 二人の枕元に、神様が現れました。神様はいつも公平な方です。時にそれは残酷なほどでした。

 神様は眠っているアライグマ男に向かって言いました。
「アライグマ男よ。お前に優しい心を授けよう。そのかわり、お前の獰猛な声を持ち帰る事にする。お前は、いつでも優しい心を持ち続けられる代わりに、大きな声を失う事になる。私は常に公平なのだ」

 それから神様はローラに向かって言いました。
「ローラよ。お前にどんな人にでも聞き取れる声を授けよう。お前の声は誰の耳にも届くであろう。そのかわり…そのかわり…」そこで神様は考え込みました。この女の子から何を持ち去れば良いのであろうと。この孤独で貧しく、侮辱や虐待を耐え忍び、涙を流し続けてきた女の子から。その時、神様はハッと気が付かれました。そしてローラに向かって言いました。

「ローラよ。お前にどんな人にでも聞き取れる声を授る代わりに、お前の涙を持ち帰ろう」と。

 翌朝、二人は光に包まれて目を覚ましました。クリスマスの奇跡は二人に明日を与えたのでした。それから二人は生涯その谷で幸せに暮らしました。

 ローラの瞳から涙がこぼれる事は二度とありませんでした。

2007年09月09日

揺れるヘチマは、まるで"気まぐれヴィーナス"なのでありまして。

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★中途半端で気になっていた書きかけを、とりあえず終わらせました。ただ終わっただけです。

「これはな。元々は糸瓜(いとうり)と呼ばれていたんじゃな。それが訛って「とうり」となった。この「と」はな。『いろは歌』で「へ」と「ち」の間にある。それで「へち間」。「へちま」と呼ばれるようになったんじゃな」法事に来た和尚は、俺にそう話してヘチマの種をくれた。
 和尚が帰ると、俺は裏庭の花壇に種を植えた。空を見上げると雨の予感がした。俺は雨の匂いを嗅ぎ、風の音を聞きながら花壇の前に立っていた。

 8月は、記録的な猛暑を引き連れてやって来た。今年の8月が気合が入っていた。まあ、所謂、物事を強引にねじ込むタイプだろうか。皆は8月の暴挙に眉をひそめながら、なんとか、そいつをやり過ごそうとしていた。決して関わりたくないタイプなのだ。

 裏庭のヘチマはずいぶん背を伸ばし、大ぶりの実をつけていた。ギラギラとした太陽に照らされたヘチマは、なんだが余裕ありそうな雰囲気をしていた。単純で直ぐに感情的になる太陽を、せせら笑うかのように、その庭に立っていた。
 俺はクーラーの良く効いたリビングからヘチマを眺めた。そしてビールを飲んだ。ヘチマを眺めていると何故だか耳の穴が痒くなった。俺は救急箱から綿棒を取り出し、耳の穴をコリコリしながら、再度ヘチマを眺めた。そして良く冷えたビールを飲んだ。

 お盆休みの最終日。俺はまだ日が昇る前に起き出して、洗濯機を回した。部屋に掃除機をかけてから庭に出た。8月もこの時期になると夜明け前は幾分涼しい。俺は背伸びして、まだ星の残る空を仰いだ。裏庭をホウキで掃いた後、ホースで水をまいた。大粒の水滴が、ヘチマの実をユラユラと揺らした。そして青臭いキュウリのような匂いが辺りに立ち込めた。もう一つの夏の匂いだ。

 裏庭の木戸が開く音がして、誰かが無断で入ってきた。
「やあやあ。どうもどうも。暑いですな。切ないですな。そんな切な過ぎる僕はヘチマ水を分けてもらう所なのです」一升瓶を抱えたアライグマ男は、俺に断りもなく、用意してきた剪定ハサミでヘチマの蔓を切った。それから切り口を一升瓶に差し込んで、一仕事終わったように額の汗を拭った。

 その後、アライグマ男は、またも無断でズカズカと台所に上がり込み、冷蔵庫を開けてゴソゴソと物色し始めた。俺はホースの水を止めるとアライグマ男の後を追ってリビングに入った。

「やや。この炊飯器の中に冷ご飯が入ってるようです。お腹が減りました。切ないですな。そんな切な過ぎる僕は冷ご飯を分けてもらわなければなりません」アライグマ男はお茶碗に冷ご飯をよそって、モサモサと食べ始めた。俺は冷蔵庫から梅干の瓶を開け、彼の前に差し出した。アライグマ男は涙目でそれを受け取り、嬉しそうに冷ご飯の上に乗せた。
 「切ない。切ない」と彼はつぶやき、何度も冷ご飯をおかわりした。

 俺はレコードラックの前に移動し、桜田淳子さんのシングルを引っ張り出した。『夏にご用心』『気まぐれヴィーナス』『17の夏』『サンタモニカの風』…。夏になると淳子さんの曲が聴きたくなった。もう30年近く前の曲だ。どうして、そんな昔の歌謡曲が聴きたくなるのか?詳細は不明だが、淳子さんの脚が綺麗なのに関係があるのかもしれない。

 今聴くと『気まぐれヴィーナス』の「プピルピププピルア♪」は魔法の言葉のように感じられた。アライグマ男は未だ冷ご飯と格闘している。彼には魔法は無用のようだ。

 『プピルピププピルア♪』俺は魔法の言葉を低い声で陰気にささやく。今年42歳になる中年には魔法がバケツ一杯必要なのだ。俺の周りには魔法でしか片付かない問題が山積していた。

 窓の外のヘチマにも魔法の言葉は届いただろうか? 風が吹いてヘチマの実を揺らし、40男の心までも揺らした。

 台所でアライグマ男が梅干の種を吐き出す音が聞こえた。炊飯器にもご飯茶碗にも冷や飯は残っていない。残ったのは種だけだ。
 まるで役に立ちそうもない。種だけだ。


桜田淳子 気まぐれヴィーナス 動画

2007年06月19日

雨音のシンシア

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原田知世 / Flowers

 雨が続く日。オレは一人部屋に篭っていた。
オレは恋をしていた。メチャクチャ、ヘビーな恋だ。恋のマッチョマンはオレの首根っこに獰猛なスリーパーホールドを決め続けた。タフなオレだったが、すでにもうメロメロだ。歩く事さえ、話す事さえ、考える事さえ出来なかった。オレは部活をサボり、窓際にズルズル・デレデレと横たわり、アキコをずっと思っていた。彼女に会いたい。でも会えると苦しい。会えないともっと苦しい。『好きだ』その言葉を早くも5000万回つぶやいていた。ああ、今夜はいったい何万回つぶやけば良いのだろう? オレは絶望的な疲労感を味わっていた。

 オレは息も絶え絶えに、雨を眺め続けた。雨は狂ったように降り続き、オレの心に晴れ間を与えなかった。そしてオレの心を切なさで水浸しにした。

「おーーーい! 降りといで! 友達が来てるよーーー!」母さんが階下から叫んでいる。どうせ友人のバカ男たちだろう。放っておこう。オレは死の淵にいるのだ。

「早く降りといで! クマの人だよ! クマの人が来てるよ!」
なんだと! クマだと! オレは飛び起きて階段を転げ降りた。

 学生服に身を包んだ。アライグマが立っていた。
学生帽を目深にかぶり、皺一つない学生服を几帳面に着こなしていた。多分、学ランの下からは目の覚めるように真っ白なカッターシャツが現れるはずだ。
 オレは一瞬、彼が誰だか分からなかった。玄関先で彼と長い間見つめ合っているうちに次第に思い出してきた。彼は同じクラスの生徒だった。たしか…ん〜? 何て名前だっけ? 彼とは今年初めて一緒のクラスになったばかりだった。だが彼を良く知る友人達は皆一様に、彼は良いヤツだと褒め称えた。彼は控え目な性格だったが、不思議と人望がある事は聞き知っていた。

「あ、始めまして。たしか初めて話しますよね」オレは人見知りで初対面は苦手だった。
「ども」アライグマの彼も恥ずかしそうに小さく頭を下げた。

 彼とオレは、それからしばらくモジモジと黙って、向き合っていた。オレは彼が、どうしてオレの家なんかに来たのか知りたかったが聞けなかった。ああ、彼から話し始めてくれたら良いのに…。オレは悶々としながら足を棒のようにして玄関先に立っていた。

「はいはい! 上がって上がって!」母さんがお盆に瓶入りのプラッシーを2本のせて現れて、オレとアライグマの彼を2階の部屋に追いやった。オレ達は意味も分からず、すごすごとオレの部屋に入って行った。

 それからもアライグマの彼は畳に正座して貝のように口を閉ざしたままだった。彼の額から洪水のように汗が滴り落ちて行くのが分かった。オレも窓際に座り込んだまま、身動き取れないでいた。緊張のあまり酸欠になって行くのが分かった。オレはゼイゼイと荒い息を付きながら、人見知り同士が陥る"生き地獄"の恐ろしさを身を持って体験していた。
ああ、今すぐにでも、ここから逃げ出したい。ここから駆け出したい。雨の中に飛び出したい。その場の緊張感は、オレをそんな妄想へと駆り立てた。

 突然、ウウウウウ〜〜! と地鳴りのようなうめき声が聞こえた。アライグマの彼だ。彼が動き始めた。オレは飛び上がって驚いた。何が始まるんだ? 何だ? 何だ? オレは恐怖で頭がおかしくなりかけていた。アライグマの彼は、ドドド! と轟音を発して立ち上がると、もんどり打って倒れ込んだ。ズドーーン! と爆音が木霊した。痺れてる。痺れてる。アライグマの彼の足が正座で痺れている。アライグマの彼の足はピクピクと痙攣していた。それからアライグマの彼は何度も何度も起き上がり、何度も何度も倒れ込んだ。5分近く彼は立ったり倒れたりを繰り返した。彼はいつしか泣き始めた。不甲斐ない自分を哀れんだのか、正座で痺れた足が痛かったのか。
 オレは何度も何度も、倒れは立ち上がるアライグマの彼を見ていると無性に熱い気持ちになっていた。頑張れ! 頑張れ! 立て! 立つんだ! オレは立ち上がって拳を振り上げていた。

 長い長い格闘の末、ついにアライグマの彼は立ち上がった。
立った! 立った! アライグマが立った! オレは部屋中を駆け回って喜びを表した。

 アライグマの彼は、真っ赤に顔を紅潮させオレに向かって大声で怒鳴った。
「行け! 雨の中を駆け抜けろ! 3丁目の酒屋の軒先でアキコが雨宿りしてるぞ! 僕は知ってるぞ! 僕は知ってるぞ! 僕は君を知ってるぞ!」

 オレは体内の血液が猛烈に沸騰するのを感じていた。血がたぎっていた。オレは脱兎のごとく駆け出そうとして、慌てて思いとどまった。
「ありがとう。その前に君の出席番号を教えてくれ」オレは気が動転して、彼の名前を聞くはずが出席番号を聞いてしまった。
「も、も、もちろん1番だ」アライグマの彼の返事を聞くと俺は駆け出した。雨の中を傘もささずに駆け出していた。

 1丁目の交差点を走り抜け、2丁目のスーパーマーケットを駆け抜けた。3丁目の交番の角を曲がると酒屋の看板が見えた。アキコはオレの姿を見つけると「北山田く〜〜ん!」と声を張り上げた。俺はその勢いのままアキコの隣に滑り込みゼイゼイと息を切らした。アキコは持っていたタオルをオレの頭に被せた。オレはビックリした。まるでオレを待っていたようだ。

 オレは、そのままアキコと並んで酒屋の軒先に立ち、黙って雨を眺めた。オレは、どうしてだか、ずいぶん落ち着いた気持ちになっていた。オレは自然にアキコの隣に立ち、彼女の存在をごく自然に肌に感じていた。ずっと前からオレ達はここに立っていたような気がした。ずっと前からオレ達は、ある約束を交わしていたような気がしていた。
 オレはその言葉が自然と身体から零れ落ちる瞬間を待っていた。

 アキコがオレの脇腹を突いて、通りの向かい側を指差した。アライグマの彼だ。彼はポテポテと向かい側の歩道を歩いていた。アキコはアライグマの彼に大声で叫んだ。
「オサムく〜〜〜ん! ありがとう! 本当にありがと〜〜う!」

 オサム? アライグマの彼はオサムって言うのか? 待てよ。出席番号1番は青木恵一だ。間違いない。ヤツはオレの親友だ。やっぱり違う。オレ達のクラスにはアライグマなんていなかった。そんなヤツがいるはずがない。ヤツは何処から来たんだ。アライグマの彼は、いったい何処からやって来たんだ。
 だが、何処から来ようとヤツはオレの友達だ。オレとアキコの生涯の友人なんだ。

 オレとアキコは、アライグマの彼の姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていた。彼の姿が消えてしまった時、オレの身体からその言葉が転げ落ちた。
「好きだよ。オレはずっとアキコが好きだったよ」

 その言葉はオレの身体から心から、雨だれのように零れ落ちた。オレの言葉はアキコの心に降り注ぐ事が出来るのだろうか? オレの言葉はアキコの心を潤す事が出来るのだろうか? 

 彼女の返事は聞こえない。雨が一段と強くなってきた。バチャバチャ、バチャバチャ。雨は水溜りを打ち続けた。聞こえない。何も聞こえない。雨の音しか聞こえない。
 でも良い気持ちだ。メチャクチャ良い気持ちだ。



原田知世 - シンシア

2007年02月11日

Don't Answer Me

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The Alan Parsons Project / Ammonia Avenue

 僕を乗せた自転車はバランスを失って左右に揺れた後、力なく転倒した。

 アスファルトの上に投げ出された僕は、膝を打ち切っていた。ジーンズが破れて血がにじんでいる。ついてない。まったく、ついてない。僕は道路に唾を吐き捨てて自転車を抱え上げた。
 2月の始めにアキコは出て行ってしまった。
どれくらい一緒に暮らしただろう? なのに終わりは、いつだって心の準備を許さない。その日(彼女が出て行った日)部屋に戻ると、アキコはスーパーのチラシ広告の裏側にビッシリと何事か書き溜めていた。「今から私が貴方を許せない理由を50項目指摘するわ。そして私はココを出て行く。もちろん止めても無駄よ。この50項目が私に確信を与えてくれたの。いくわよ! ボヤ〜としてないで座りなさいよ!」アキコはサインペンで項目を読み上げる毎にチェックマークを入れた。僕は座って、それを聞いた。

 アキコが出て行った部屋には、僕の欠点を50項目書き出したスーパーのチラシ広告が残された。僕はその紙を画鋲で壁に貼り付けた。そしてアキコの面影が僕の胸に襲来し、苦悶をもたらした時、その紙を見上げた。僕はその50項目を眺めると納得してしまった。彼女が僕を捨てたのは間違いじゃない。むしろ捨てて当然といった内容だった。そして僕はヘナヘナと床に倒れ込んだ。

 膝に怪我をした僕は自転車を手で押してアパートに向かっていた。しばらくすると後方から物凄い爆音が鳴り響いた。真っ赤なフィアットが僕の横を通り過ぎ、10mほど先で停まった。僕はヨロヨロとよろめきながらフィアットの横を通り抜けようとしていた。僕とフィアットが並んだ時、運転席の窓が開いて黒いサングラスをしたアライグマが顔を出した。

 アライグマ男は派手な柄のシャツを着て襟をピンと立てていた。首にはジャラジャラと3Kgくらいありそうなゴールドのネックレス。髪(頭部の体毛)と長い耳をベットリとポマードで塗り固めていた。僕に視線を向けるとニッタリといやらしく微笑んでこう言った。
「転がしてる場合じゃないぜ」

 僕はフィアットの助手席に乗せられていた。アライグマ男は、きついオーディコロンの匂いをプンプン漂わせながら、気障に片手でハンドルを切った。口にはマルボロの煙草がくわえられている。彼はまるでTVドラマ『華麗なる刑事』の草刈正雄のように口にくわえ煙草をしたまま何事か話を始めた。だいたい普段から滑舌が悪い訳だから、まるで何を言ってるか分からない。どうせ、くだらない事だろう。僕は無視して窓の外を眺めていた。

 フィアットは商店街の近所にある駐車場で停まった。「ついてきな。ショーが始まる頃だ」アライグマ男は胸焼けがするような脂ぎった笑顔を残して車から降りた。僕も彼の後を追う。平日のお昼過ぎの商店街は、人通りも疎らで、歩いてる人の気持ちも疎らにした。 商店街の真ん中あたりに寂れた映画館が見えてきた。アライグマ男は、その映画館の入り口へと向きを変えた。「なんだ。ショーってのは映画か」僕は期待が外れてガッカリした。しかも、一昔前に封切られたパッとしない映画だった。アライグマ男は内ポケットからズッシリと重そうな皮の札入れを取り出すと、中から切れるような1万円の新札を抜き取り、僕に差し出した。どうやらチケットを買えと言う事らしい。僕は気乗りはしなかったが、無料なら悪い気はしないのでチケット売り場の小窓に万札を差し入れ「大人2枚」と告げた。チケット売り場は黒い壁に覆われて、外からは中の様子を見る事が出来なくなっている。多分、中からは外が見える特殊な仕様になっているはずだ。

 チケット売り場の小窓の中に消えた1万円札の代わりに、2枚のチケットとお釣りが出てきた。それに続いて映画のチラシが2枚差し出された。そのチラシを見て僕はハッとした。1枚目のチラシは表向きだが、2枚目のチラシは裏返しにされて白い余白に何事かビッシリと書き込まれていた。
 アキコの字だ。この壁の向こうにはアキコが座っている。

 僕は振り返って、後ろに立っているアライグマ男に視線を向けた。彼は大げさに肩をすくめて満足そうに笑っている。あの男が仕組んだのか。どおりで間が抜けた仕切りだ。

 僕は呼吸を整えてから壁の向こうのアキコに向かって話しかけた。
「すいません。このチラシ、落書きしてるんだけど」
「あら。ごめんなさい」壁の向こうからアキコの声が聞こえた。「あんまり暇だから、チラシの裏に私の欠点を50項目書き出してたところなの」
 僕はニッコリ微笑んで、彼女の欠点に目を通す。

 それから僕はもう一度、壁の向こうのアキコに向かって話しかける。
「あの〜、すいません。もし貴方がお暇だったら、貴方にまだ時間が残されているのだったら、僕にペンを貸してくれませんか? 僕はこの欠点を書いた人が持ってる、凄く素敵な箇所を55項目書き出すことが出来そうです」
 僕は今、もの凄く恥ずかしい事を言っている。アライグマ男は身体を折りたたんで笑い転げている。でも僕は必死なのだ。

「僕に答えなくて良いですよ。沈黙のままで良いですよ。僕に勝たせなくて良いですよ。ペンを下さい。僕はペンを待ってます」僕は壁の向こう側に心をこめた。

 やがてチケット売り場の小窓から女性の指が伸びて来た。その指にはペンは握られていない。でもその指には、すぐに僕の指先が握られた。

Alan Parsons Project - Don't Answer Me


☆久しぶりに甘酸っぱい物ですが、構成が強引でした。

2006年12月27日

言いだせなくて(ティモシーBに)

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Eagles / The Long Run

 それはお昼過ぎ。呼鈴に呼ばれて、玄関の扉を開けた。外には誰も立っていない。私は辺りを見回してから首をひねる。諦めて扉を閉じようとすると扉の陰から人の気配がした。
 ポーチに飛び出して覗き込むと、アライグマ男がモジモジと申し訳なさそうに立っていた。『超』が付くほどシャイな人だ。「ああ、ごめんなさい。気がつかなくて」私は彼に向かって御辞儀する。

 アライグマ男は扉の陰から、包装紙に包まれた箱をソロソロと差し出した。
「あ。御歳暮ですか。ありがとうございます。嬉しいな〜。あ、どうです? 中でお茶でも飲まれませんか?」私は気軽に声をかけてみた。
 それを聞いたアライグマ男の顔面は、みるみる赤らんで硬く強張り、次第に身体がプルプルと震え始めた。『おわ! 返事に困ってる。言い出しかねてる!』

「ごめんなさい。誘い方が良くなかった。是非、中に入ってお茶を飲まれて下さい。頼むから飲んで行って下さい!」私は強引にアライグマ男を室内に招き入れた。
「ふーっ」と深い溜息を付いて、アライグマ男はホッとした表情を浮かべた。『どうやら安心したようだ』私も心の中で溜息をつく。

 私はアライグマ男をリビングのソファまで案内し「どうぞ。おかけ下さい。今、コーヒーを入れてまいりますので」そう言い残してキッチンでコーヒーの準備を始めた。コーヒーカップを並べながら、ふとリビングに目をやるとアライグマ男がソファの前でプルプルと震えていた。
『おわ! 迷ってる。どこに座れば良いのか決めかねてる!』

「ああ〜ごめんなさい。ここ。ここに座って下さい。そうそう。そこです。どうぞリラックして下さい。自由にして下さい。……あ、具体的な方が良いですね。窓の外、眺めても良いですよ。足を伸ばしたりしても良いです。背もたれに、もたれかかっても結構です。それから。それから。……あ! 雑誌。雑誌、読まれても良いですよ。どうぞ。どうぞ。リラックス。リラックスして」アライグマ男は私の手渡した雑誌を開いて目を落とした。私はそれを見届けてからキッチンに戻ろうとしたが、言い忘れた事を思い出して途中で立ち止まった。
「ページ。めくって下さいね」

 ソファに腰掛けたアライグマ男は穏やかな表情で、コーヒーをすすっている。私は、そんな彼の表情をニコニコしながら見守っている。私はアライグマ男と一緒にいると心が洗われる思いがした。彼に会えて良かった。一生の友人だ。
 しばらくアライグマ男の顔を眺めていると、ある人の顔と声が浮かんだ。

 私はレコードラックに近寄って、滅多に聴かないイーグルスのアルバムを引っ張り出した。このアルバムはティモシーBの為にある。彼が主役だ。最も地味な男の為にある。私はティモシーBの声を目がけてレコード針を落とす。やがて響き渡るウットリするような甘い声。
 私は大いに満足してソファの方を振り返ると、アライグマ男が口に手を当ててプルプルと震えていた。
『おわ! 何だ? 何をしたいんだろう? 何を言い出しかねてるのか?』

 私はアライグマ男に近寄ると矢継ぎ早に質問を繰り出した。
「くしゃみ? ハクション?」アライグマ男は首を横に振った。
「せき? ゴホン、ゴホン?」アライグマ男は首を横に振った。
「げっぷ? ゲボッとか?」アライグマ男は首を横に振った。
「何々? わからない。何でもOKです。何でも解放して! 何でも送り出して!」
私がそう言うと、アライグマ男は溜まらず口から手を離して、震えながら言葉を発した。
「のあああああ〜〜あああ」
「なるほど。眠くなったんですね」アクビだった。

 私はキッチンのテーブルに腰掛けて窓の外を眺めている。外の景色は、次第に夕闇に飲み込まれていく。だが室内にはティモシーBの、ほのかな灯りのような声が満ちている。それにアライグマ男の寝息も聞こえる。

 私はソファで横になって眠っているアライグマ男に、ある言葉を言い出しかねていた。その言葉は私の舌の上でコロコロと転がり続けている。私はその一時を名残惜しむように、その言葉を言い出せなかった。
「そろそろ帰る時刻ですよ」と。

2006年11月10日

河熊

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Grateful Dead / Dead Set

 『なあ、船頭さん』
 『はいな。お客さま』
 『今、行き違う船。様子が変だね』
 『ああ。あれなるは河熊にございます』
 『あれが河熊?どうだい。風流じゃないか…』
 『風が出てまいりました。どれ、先を急ぎますかな』

 
 地図を覗き込んだ。古い地図だ。所々破れている。
「M交差点を左に折れて、環状線に出る。K川までは真っ直ぐだな」
ひとりごと。

 今年の秋は暖かい。私は薄いシャツの袖を捲り上げ、テーブルのコーヒーに手を伸ばす。マグカップは日溜りの中に浮かんで見える。 
穏やかな陽射しが差し込んでいる。日が暮れるまで、私はそこに逃げ込もう。

「K川の堤防沿いを下る。運動公園を過ぎると、川は一つになる」
ひとりごと。

 風を切って自転車を漕ぐ。M交差点で信号待ち。ミニスカートの女の子が前を通り過ぎる。悪戯好きの秋風がフワリとスカートを持ち上げる。
「何をお持ちで?」
私は女の子がスカートの中に隠し持っている『種子』に思いを巡らす。
 「彼女がその不在に気付くまで、私が預かっていても良いな〜」私は顔のニヤケを止められない。

 交差点を横切って、川の方向に自転車を飛ばす。橋のある場所から誰かが歩いてくる。肩に長い竿竹を担いでいる。
 船頭だ。

 彼とすれ違う瞬間。彼の口から言葉が漏れた。
私は急ブレーキをかけて自転車を止める。ブレーキパットは細い声を上げる。
「なにか?なにか言われましたか」私は振り返って船頭に尋ねる。

 船頭は歩を止める事なく、声だけを張り上げる。
「河熊に会うぞ! 河を知るが良い。流れに身を任せ、力を消せば、そこに辿り着く」

「河熊??」私はその名を繰り返す。

 K川にかかった橋を半分ほど進んで、自転車を降りる。欄干にもたれて海の方向を眺める。この川は海へと続いていた。海から吹き上げる風が私の頬を撫でる。
 良い気持ちだ。

 振り返って、山の方角に目を向ける。彼方に見えるのはA山だろうか。
山はシンとした気配を運んでくる。私は耳を澄まし、その気配を聞き分ける。

 川上で何か動く物が、私の視線を捕らえた。
私は、ハッと我にかえり、目を凝らす。

「船だ!」
私は欄干から身を乗り出して、怪しい船の正体を見極める。
黒い人影が見える。一人だ。頭に赤い笠を被っている。
ん!知ってるぞ。その男を知ってる!
 私は弾かれたように飛び上がり、全速力で橋を渡り切り、川へと繋がる堤防を駆け降りる。

「何してるんだ! アライグマ男! 転覆するぞ!」
昨日の雨の影響で川の流れは、かなり早い。水かさも普段より増している。

〓〓〓.jpg 良く見るとアライグマ男は両手を前に突き出して、オールなど手にしていない。
「つかまれ! 船につかまれ! 倒れるぞ! 落ちるぞ!」
私は慌てふためく。汗が噴出し。喉がカラカラに乾く。心臓が高鳴り。息が切れる。

 アライグマ男は、ぼんやりした視線を宙に投げ上げて、身体をユラユラ揺らしている。両手は前に突き出したままだ。

 不安定だ。あまりにも不安定だ。
私は、その状況が許せない。安定させなきゃ。安定させなきゃ。私は半狂乱になって叫び続ける。
「つかまれ! 身を伏せろ! 状況を見ろ! 自分の状況を把握しろ!」

 船が揺れる度に、私は悲鳴を上げる。私は泣き叫んでいた。
「頼むから、どうにかしてくれ! どうにかしないと、どうにかなりそうだ! 頼む! 頼むから、そのままにしないでくれ!」

????§.jpg アライグマ男は右に揺れれば、少しだけ右に揺れ、左に揺れれば、少しだけ左に揺れた。船が飛び跳ねると、ピョコンと飛び跳ね。船が川底の石を避けると、それに従った。
 彼は流れに身を任せ、何の力も加えなかった。それでも彼は進み続けた。
私の思惑とは裏腹に。

 私は走り疲れて、堤防の草むらに倒れ込んだ。アライグマ男が悠々と川を下って行くのが見る。
 私は愕然とし、雑草の中で、うな垂れる。

「何を分かっていたんだ?私は何を分かったつもりになっていたんだ?私は幾つかの経験を繰り返し、何を学んだつもりになっていた?」
私はつぶやいていた。

 河熊…。私は河熊を見たのか?私が見たのは河熊だったのか?
私は海へと繋がる河口へと視線を向ける。

 幾つかの曲折を経て、河は海と一つになった。


 『なあ、船頭さん。まだ、河熊は見えますかな?』
 『いいえ、お客さま。もう日暮れの時刻です…』



〓§¬??.jpg

2006年10月17日

マーティン・スコセッシの夜(後篇)

Greatest Hits band.jpg
The Band / Greatest Hits

 アライグマ男は疲れも見せずに歩き続けた。
僕は何度も立ち止まり、息を整えてから彼の後を追う。

 暗闇に星明かりが差し込んできた。雲が晴れて満天の星空が顔を見せ始めたのだ。僕は星を仰ぎ見ながら、その頃、付き合っていた女の子の事を思った。
 僕は彼女と離れていると彼女に会える事ばかりを考え続けた。だが、実際、彼女に会えると僕はいっそう孤独になった。彼女と一緒にいればいるほど、僕の心は彼女の元から離れて行った。多分、彼女もそうだろう。
 僕らは離れ離れの心を抱えたまま、それでもお互いを求め合っているかのように思われた。

 アライグマ男は突然、崩れ落ちるように倒れ込んだ。レールの間に首を突っ込んでピクリとも動かなくなった。
僕は、ゆっくりと彼に近寄って聞いた。「どうした?」
「睡魔だ。睡魔にやられた」アライグマ男は呻き声を上げた。眠くなったようだ。

 僕は、彼に並んでレールに腰を下ろした。ポケットからクシャクシャになったセブンスターを取り出して残っているタバコを探した。端に押し潰されたタバコが一本だけ残っていた。皺を伸ばして火をつける。こんな時のタバコほど美味いものはない。僕はユックリと煙を吸いこみ肺にしばらく貯めてから、星空に向かって吐き出した。夜空に向かって白い煙が昇っていく。もう直ぐ夜が明ける。

 「お〜い。本当に寝たのかね?死んじゃうよ」僕はアライグマ男を靴の先で突つく。彼は顔を上げない。
「誰が哀しむかな?俺らが、ここで列車に轢かれたら?俺らには哀しんでくれるような人がいるのかね?
 ま〜親父とお袋は悲しむだろう。それより怒るだろうな〜。それから…山内は変わり者だから泣くかもね。山内スケキヨ。あいつ岡田由希子が自殺した時、号泣してただろ?あいつ訳がわかんねェからな〜。それで…そんなもんかな・・」

「アキコさん」アライグマ男は眠ってはいなかった。アキコは僕が付き合っている女の子だった。

 仲の良い男友達の間では女の話しはタブーなのだ(何故だか知らないけど)。どうして今日に限ってアライグマ男はアキコの話しを持ち出したのか?ま、どっちでも良い。もう直ぐ夜が明ける。

「アキコとは、もうダメだよ」僕は正直に言った。
「そうか…」アライグマ男は顔を上げずに小さくうめいた。

「俺はね。ダメなんだよ。普通の男って言うか。普通の人間らしく振舞えないんだよ。人間として、まずダメなんだ」

「例えば、どんな所?」アライグマ男はしつこく聞いて来た。しつこい男なんだ。
「例えば…息が臭いとか」
「致命的だな」アライグマ男は愉快そうに言った。

 アキコと僕は良く似ていた。僕らは地味でグループの端に影のようにくっ付いてるタイプだった。僕はアキコの考えている事が何も言わなくても隅々まで理解出来た。彼女にもそれが分かるようだった。僕らは、その事実に驚いた。僕は最初からアキコを全部知っていて、アキコは僕を全部知っていた。
 僕らは相手の思っている事を一つ一つ確認する作業に勤しんだ。それはお互いが常々思っていた事と寸分も違わなかったからだ。僕らは、それを恋だと思った。実際、恋だったのかもしれないが。

 僕らは、二人で映画を観に行ったり、街を歩き回ったりするようになった。最初は楽しかった。僕らは同じ場面で泣き、同じ場面で笑い。同じ場面で腹を立て、同じ場面で相手を愛しいと思った。

 だが次第にそれは苦痛に変わって行ったのだ。僕らはお互いを知り過ぎる。僕らは長い間一緒にいると相手を知る過ぎるが故に、ずっと先へ先へと考えを巡らすようになっていた。
 僕は彼女を傷つけないように先の先まで言葉を選んだ。だが、それを言われた彼女は、それが選ばれた言葉で有るが故に、その裏の意味まで分かってしまうのだ。それはお互いを傷つけた。何故なら僕もアキコも一人前の人間では無かったからだ。僕らはお互いに山のように欠点を抱えていた。それらを全部受けとめるには、僕らは幼すぎた。

 僕とアキコは二人でいる間も無口になって行った。知られたく無いものが、お互いには有り過ぎた。分かち合いたいものよりも、ずっと多かったんだ。

 僕は時々アキコを抱いた。アキコは目をきつく閉じて、決して濡れなかった。彼女は挿入の段階になると「痛いから」と言って僕の身体を離した。
 僕らは乾いた雑巾みたいな気持ちのまま、背中合わせに眠りについた。
時々振り向いて、アキコの細い肩を眺めた。僕はアキコを傷つけている。
でも、僕はアキコを離したくは無かった。アキコを失うのが怖かった。どんなに傷ついても僕はアキコを渡したくはなかった。どんな男にも。


 もう直ぐ、夜が明ける。アライグマ男は本格的に眠ってしまった。
僕の頭の中には映画『ラスト・ワルツ』で聴いた『It Makes No Difference』がグルグルと渦を描くように鳴り響いていた。

 リック・ダンコみたいに無垢な心を歌えたなら。心から直接転がり落ちる言葉を、その人にそのまま伝えられたなら。

 僕はアライグマ男の厚い胸に頭をもたれて、次第に眠りに落ちようとしていた。


 It makes no difference where I turn
 I can't get over you and the flame still burns
 It makes no difference, night or day
 The shadow never seems to fade away

 And the sun don't shine anymore
 And the rains fall down on my door

   The Band / It Makes No Difference



★脱力3部作。第2話。お粗末でした。今回はチビチビ書いて行ったので、流れが悪いって言うか、全然流れなかった。とほほ。

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2006年10月14日

マーティン・スコセッシの夜(前篇)

Last Waltz.jpg
The Band / The Last Waltz

 その頃、僕はまだ若く、アライグマ男もまた若かった。

 僕らは映画館の中にいた。『マーティン・スコセッシの夜』と題されたレイト・ショーを観ていた。
プログラムは三本立。『ミーンストリート』『タクシードライバー』 そして『ラスト・ワルツ』だった。

Mean Streets.jpgTAXIDRIVER.jpgワラテ.jpg

 映画が、はけたのは午前3時過ぎで僕らは寒風の中を颯爽と歩き出した。
僕はデニーロのようにブルゾンに両手を突っ込み、肩をすぼめ、うつむき加減に歩いた。アライグマ男は、ガース・ハドソン!のように胸を張り、腹をそれ以上に突き出し、仰け反るようにして歩いた。

 僕らは、どこにでもいる、つまらない若者だったが、少なくとも、その夜だけはイカしているような気がしていた。
黄色いネオンが灯る店の前に着くと、僕は立ち止まった。
「どうだい?」僕はドアに向かって顔を振る。
アライグマ男は大袈裟に肩をすくめて答えた。
「ボブ・ディランなら、こう言うだろう。Baby Let Me Follow You Down(連れてってよ)」

 僕らは扉を押し空けて吉野家の店内になだれ込んだ。
僕は牛丼の大盛とビール。アライグマ男は牛丼の大盛と味噌汁(ご飯だけ二杯おかわりした)。

 牛丼を食べ終わると向かいのコンビニに移動した。僕は『月間ジャンプ』を読んだ(コンビニの立ち読みは普段買わない月刊誌が最適)。アライグマ男は『週間現代』と『週間ポスト』を交互に読み比べている。「また何を調べている?」僕が聞くとアライグマ男は歯を剥き出してニッタリと笑った。あまりに気色悪かったので、そのまま放置した。
 それから二人でインスタントラーメンを一つ一つ手にとって、あれこれ吟味して行った。二人はラーメン薀蓄を激しくぶつけ合った後、何も買わずにコンビニを出た(暇なのだ)。

 しばらく歩くと踏み切りに差し掛かった。僕は脇によけて線路に向かって立小便を敢行した。ひとしきり放尿し急速な寒気による武者震いを消化してアライグマ男を捜すと、彼は反対方向を線路に沿って歩いている。

「おい!君!君は中村雅俊直系の日テレ・ゴールデンタイム風青春を演じるつもりかい?」僕はアライグマ男に真意を正した。

 アライグマ男は、僕の問いかけに答えず黙々と歩いて行く。彼はいつから、そんな男だったけ?
彼のズングリした後ろ姿は『キャラバン』を歌うヴァン・モリソンみたいだった。
 僕は溜息をついて彼の後を追う。暗闇の中に真っ直ぐに伸びる線路に沿って歩を進める。

 いつしか暗闇は僕らを包み込む。線路は真っ直ぐに途切れる事無く続くばかり。僕らは、この先、どこに辿り着くんだろう?どこまで歩けば光がみえるのだろう?
僕らを漠然と支配している力の正体は?僕らは、どうやって僕らがしがみ付いてる古い自分自身から解き放たれる事が出来るのだろうか?
 僕はアライグマ男の背中の向こう側に広がる、真の暗闇の正体を考え続けていた。

 I see my light come shining
 From the west down to the east
 Any day now, any day now
 I shall be released.
  Bob Dylan / I Shall Be Released



★長くなったので2回に分けます。歌詞はクレームがつけば即削除。
posted by sand at 20:14 | TrackBack(0) | 超短編小説・アライグマ男シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月28日

Blue River

Blue River.jpg
Eric Andersen / Blue River

 吊り道具を抱えてバスに揺られていた。

山間の曲がりくねった道をバスは低速で走っている。窓から谷底を見下ろすと青く澄みきった川の流れが夏の終わりの太陽の光を面倒臭そうに跳ね返している。

 「もう夏も終わりだね」
隣に座ったアライグマ男は、自分の腕時計の時刻とバスに設置された置き時計の時刻が微妙に違う事を確認するのに忙しくて、私の言葉が聞こえない。
 何度も時刻を見比べて『本当にもう困ったもんだ』と言う顔つきをしてプンプン腹を立てている。

 「変なところA型だよな」私はつぶやいたが、やっぱりアライグマ男には聞こえていない。だいたいアライグマ男がA型だったのかも良く憶えていない。まあ、どっちでも良い。実際、興味が無いんだ。

 ひなびた停留所でバスを降りた。
外に出るとムッとした熱気が襲ってきたが、やっぱり山間部だ。都会の熱気とは明らかに違う。時折、清涼とした微風が吹き抜けて行く。
 来て良かった。

 私は手に持った麦藁帽子を目深に被り、谷底の川を目指して足を踏み出す。
「さ、行こうか。缶ビールが待ってるぜ!」威勢良くアライグマ男に声をかけるが、またしても彼からの返事はない。
 振り返るとアライグマ男は、手帳とエンピツを手に持ち、バス停に向かって何事か丹念にメモしている。どうやら帰りのバスの時刻を入念に書き込んでいるようだ。
「やっぱりA型なのかね」私はアライグマ男が書く、小さくて角張った文字を眺めながら微笑む。

 釣り糸を垂らし、竿を固定すると、私は早速に缶ビールを開ける。
バチバチと弾ける香ばしい液体を体内に流し込みながら、耳を澄ます。
蝉の声、川のせせらぎ、木の枝が揺れる音、アライグマ男が鼻をすする音。
私は目を閉じてビールとそれらの音達を身体一杯にまで満たす。
 今年の夏は随分慌しい夏だった。少しもユックリとした時間が持てなかった。
私はこの夏に何かを置き忘れて来たような気になっていた。もっとも、それは金目の物ではなかったけれど。

 改めて釣り糸を垂らすアライグマ男に目をやると、彼は少しスッキリして見えた。今まで気がつかなかったけれど、確かに痩せて見える。

「少し痩せたかな?」私は声をかけてみる。
アライグマ男は眉間に皺を寄せ、憂鬱そうな声で答えた。
「糖尿気味でしてね」
「ふむ。なるほど」
人にはそれぞれ事情があり、やがて歳と共に事情だらけとなる。


 それから、2〜3時間が経過したのだろうか。さっきまでの晴天は少しずつ曇り空に変わり、川風は涼しさを増していた。
魚は一匹も釣れなかった。私は水面に固まってしまったウキを眺めながら缶ビールを飲み続けた。
アライグマ男も黙って何事か考え込んでいる。

 やがて雨粒が川面を打ち始めた。瞬く間にそれは大量の雨に変わった。
夕立だ。

 私は不意を付かれたように雨の中で身動きが取れなくなっていた。だが、それは苦痛では無かった。雨は容赦なく私を殴りつけた。そして私は隅々まで打ちのめされ、隅々まで水浸しになった。

 私は雨のされるがままにして水面を放心したように見つめている。
水面には無数の水柱が上がり、辺りを霧のような水蒸気が覆い尽くした。
私はアライグマ男を思い出した。彼はどうしている?慌てて辺りを見回した。

 アライグマ男は折りたたみ傘をさして、私の少し後ろに立っていた。
「そうか。入念に天気予報をチェックしたんだな」私はアライグマ男の周到さに舌を巻いた。

「ねぇ君」私はアライグマ男にある種の疑念を感じて問い掛けた。
「君は僕と少しだけ離れた場所に立っている。だが、君は僕の真後ろに立つ事も出来る。それによって僕は幾らか雨を避ける事が出来るかもしれない。
何故。君は離れた場所を選ぶ?僕にはそれが分からない」

「それは君が望んだ事だ。君は雨に打たれる事を望んでいる」
彼は答えた。
 そう。私は確かに雨を望んだ。だが、どうしてそれが彼に分かるんだ?アライグマ男は知っているのだ。何もかも知っているのだ。

「君は知っているんだな?頼む。もう一つだけ教えてくれないか?
今、この状態を終わりにするのは、僕自身なのかな?それとも君なのかな?それとも、この雨なのかな?

僕がこの場所から雨を避ける為には、僕自身がそれを終わりにする必要があるのだろうか?
それとも、他の誰かが終わりだと告げてくれるのを待つ必要があるのだろうか?
それとも、何も手をくださなくても勝手に終わってしまうものなのだろうか?


 もちろん、アライグマ男は答えなど口にはしない。彼は、そんな男だ。

 私は、自分の発した言葉の余韻が、激しい雨に流されて行くのを眺めていた。
それらは不様に泥の大地を滑り落ち、やがて川の流れに抱き寄せらた。



★久しぶりに書きましたが、出来が良くなかった。ま、仕方ない。もう寝よう。

2006年06月25日

All Alone

GOOD DREAMS.jpg
The Roosterz / Good Dreams

「どう?」私は聞く。
「ふむ?」アライグマ男は人差し指をペロンと舐めて、空に向かって突き上げる。

 梅雨の狭間に綺麗な青空がのぞく日だった。
「ふん」アライグマ男は何度か首を縦に振った。
OK、決行だ。私は車に飛び乗りホームセンターを目指す。
隣に座ったアライグマ男が鼻歌を歌う。どこかで聞いた曲だが思い出せない。
アライグマ男に曲名を聞いても教えてはくれないだろう。こいつは、そんな男だ。
だから、この男と一緒にいる。

 ホームセンターで障子紙のロールを数本買い込む。
新しく越してきた家には、随分、色が黄ばんだ障子が置かれていた。穴の数も限りない。
前の家を借りた時も、そんな状態だった。その家の障子を張り替えた時、アライグマ男からアドバイスを貰った(どうして彼が障子張替えの薀蓄に、それほどまでに長けているのかは謎)。
 だが、その手順をスッカリ忘れてしまっていた。なにか途方も無く複雑な工程があったような気がしていた。

 自宅に戻ると、古い障子紙の糊付けされた部分に水を含ませて剥ぎ取る事をアライグマ男から指示された。
彼は、それだけ伝えるとフラフラと窓際に腰を下ろし、窓の外に視線を移した。
「あ、手伝ってくれるんじゃないの?」私は窓際のアライグマ男に問いかける。
彼は答える。
「それは自分一人でやるものですよ。あなたは、ずっと、そうして来た。でも、すぐにそれを忘れてしまう。まぁ、もうじき分かりますよ」

 私は一人で古い障子紙を剥ぎ取って行く。紙を剥ぎ取られ骨だけになった障子枠が積み上げられる。
 すると何故だが不安な気持ちが募って行く。結局、そこには何も無かったんだ。ただの空洞だったんだ。

 枠に付いた紙屑を丁寧に拭き落として行く。
そういえば障子を張り出してから、異様なほどの静けさに包まれている気がしてきた。さっきまでの雑音はどこに消えたのだろう。痛いくらいの静寂が身体に突き刺さる。
耳の奥から音が響いてくる。車の中でアライグマ男が歌っていた鼻歌のようだ。私の身体の奥にこの歌は眠っていたんだろうか?なんて歌だっけ?いつ頃聞いた歌だっけ?私は心の迷宮をさ迷い歩く。過去か?現在か?それとも、これから聞かれる曲だろうか?

 いつの間にかアライグマ男がガラスの容器に入った『みつまめ』を運んで来ていた。

まつめろ.jpg

そう言えば、今は何時なんだろう?
私とアライグマ男は黙って『みつまめ』を口に運ぶ。冷たくて、ほんのりと甘い。私は言うべき言葉を思い浮かべる。だが何も浮かび上がらない。言葉は心の奥深くに沈んだままだ。静寂が身体に重く圧し掛かる。
 私は無防備さに怯えている事に気がつく。
それは、骨だけになり空洞を抱えた障子に関わりが有るのかもしれない。

 私は慌てふためいて障子紙を張り巡らす。一枚また一枚。次々に白い紙を貼って行く。続々と空洞が、覆い尽くされて行く。塞ぎ込まれて行く。隔たりを生み出して行く。

 全ての障子紙を貼り終えた時、私は一人になっている事に気がつく。アライグマ男の姿は、いつの間にか消えてしまっていた。
 私は真新しい障子紙に、たった一人で取り囲まれている。

さいず.jpg

私は障子紙によって外の世界から切り離され隔てられている。
 自分一人の手で張り巡らした障子紙にだ。

 そうやって来たんだ。ずっと、そうやって生きてきたんだ。
でも、それを忘れてしまう。
そうやって長い年月の末に、ようやく開けた外界との穴を自分の手で塞いでしまうのだ。
どんなに、その意味を学んでも、すぐに忘れてしまう。
 また、孤独に戻ってしまう。

 そんな薄い膜によって隔てられた、無数の個室の寄り集りこそが社会なのだろうか?
私と貴方の孤独は、実の所、寸分の違いさえも無いのであろうか?
この世は等しい孤独によって形作られているのだろうか?

 そして私はその歌のタイトルを思い出す。


☆みなさん忙しそうなので(私も)コメント等は気にしないで下さいませ(元々そんなに多くないけど)お互い無理の無い所で。

2006年06月02日

Uninspiredなる場所から

Shoot Out at the Fantasy Factory.jpg
Traffic / Shoot Out at the Fantasy Factory

 向かいの家の庭に『てっせん』の花が咲いているのが見えた。

らっへん.jpg

 その日は休日で、新しく越してきた借家の縁側に、私は腰掛けていた。まだ昼前の真新しい陽射しに包まれながら、隣家の庭先に咲き誇る『てっせん』の凛々しい佇まいに目を奪われていた。

 足元には水を入れたアルミのバケツに缶ビールが5〜6本沈んでいる。冷凍庫からブチ込んだ、ありったけの氷も一緒だった。

ぼーる.jpg

ホカホカした日向に身体を投げ出して、冷えたビールを流し込む。キューっと喉が鳴って胃の中にピチピチした刺激が舞い踊った。アルコールの熱気が身体の隅々にまで染み渡った。

 ツマミに台所から『イリコ』の入った袋を持ち出していた。濡れた缶ビールを口に運びながら、時々『イリコ』を放り込んだ。途端に海の香りが口内に広がった。

いろこ.jpg

 2本目のビールを開け『イリコ』の入った袋に手を伸ばした時、モサモサした毛に手が触れた。
私は驚いて、飛び上がった。

 見るとアライグマ男が『イリコ』の袋に手を突っ込んでいる。身体を室内の畳の上に寝転がらせ、手だけを縁側に伸ばしていた。
「いつ、入ってきたんだよ! しかも、いきなりリラックスかよ! 」

 アライグマ男は、私の言葉を気に留める事もなく、黙々と『イリコ』を頬張っている。

「何しに来たんだよ? 」

 私の問いにアライグマ男は何枚かのCDを差し出した。
『The Low Spark of High Heeled Boys』『John Barleycorn Must Die』『Shoot Out at the Fantasy Factory』『When the Eagle Flies』・・・。
所謂、後期と呼ばれるTraffic(Stevie Winwoodが在籍)のアルバムだった。

「そうか。Jim Capaldiが亡くなったんだったな・・・。今日は、Trafficのアルバムを聴くか。一日中。」

 お昼の穏やかな陽射し・キリッとした『てっせん』の花・冷えた缶ビール・磯の香る『イリコ』。それらにTrafficの音楽が加わった。

 午後3時を回った頃には、Trafficの3枚のアルバムを聴き終えていた。濡れ縁には、空き缶が5本転がっていた。『イリコ』の入った袋も空になってしまった。午後の空はドンヨリと曇り始め、畳の上のアライグマ男も深い眠りに落ちてしまっていた。
 ただ、『てっせん』の青い花だけが、いつまでも張り詰めたように、そこにあった。

 今日は何もしないで、このまま終わってしまうだろう。

 私は、最後のビールを飲みながら、そう思った。
確かに何もしない一日だった。だが私の身体には充実感が溢れている。空虚で取り留めのない一日に無上の喜びを感じる。

 結局、私はこれまで生きて来て、何も残せなかった。それは明日も明後日も、この先ずっと同じ事だろう。

 私は求める物を全て、この手にしたかった。どんな夢も叶える必要がある。
でも、それらが全部、手元に残る必要などないのだ。それらが全て、この手の中から零れ落ちたとしても、それはそれで仕方のない事だった。

 私は高く高く手を伸ばし、それに触れるだけで良いと思っている。
気高く美しい、青い花びらに少しだけ触れて、身体が真っ青に染まって行くのを感じるだけで良かった。

 かってJim Capaldiは『(Sometimes I Feel So) Uninspired』なる詩を書いた。
彼が実際、何を表現したかったのかは、私には分からない。
 ただ、その曲に宿る空虚なまどろみを身近に感じられるようになった。

 歳を取れば取るほど、ハッキリと手に取るように感じる。



☆なにか中途半端に終わりました。あらら。最近、忙しいのでボチボチの更新です。たまに覗いて頂けると有りがたいです。次は頑張ります。ダメかもしれんけど。

2006年05月13日

Together Alone

Together Alone.jpg
Crowded House / Together Alone

 長く住んでいた借家が区画整理で立ち退きになってしまった。
私は何軒かの不動産屋を回って手頃な物件を探し求めた。古くても戸建が希望だった。

「ここですか?いや、ここは古いし、もう何年も人が住んではいませんよ」
不動産は怪訝そうに私に告げた。

「どうぞ。いつでも見てやって下さい。いやいや。鍵なんてかかってやしませんよ。持ち主だって忘れてるかもしれません。もう誰も覚えてやしませんよ」

 私は不動産屋からプリントアウトした地図を貰って、町外れにあるその借家を目指した。
五月晴れの清々しい空に薄っすらとした雲が足早に流れ行く。陽射しは暖かで、ジャケットを脱いで小脇に挟んだ。
 
 借家のそばまで歩くと野球グランドが見えた。中学生だろうか練習試合の最中とみえる。私は暫く立ち止まって選手と一緒に白球を追いかける。
この時点で8割方気持ちは固まった。野球グランドは魅力だ。休日にビールを持って出かける事が出来る。

 借家は確かに古くて汚れていた。
壁はめくれ上がり、窓ガラスの半分は割れている。敷地内には雑草が生い茂っていた。錆びついた玄関扉を力任せに開いて室内を覗き込んだ。内部は意外なほど綺麗にしていた。窓際さえ清掃すれば住めない事はない。天井に雨漏りの形跡もない。台所とトイレと浴室は酷い汚れだったが、使えない事はなさそうだ。
私は居間に面するガラス戸を開けて周囲を見回した。雑草に占拠されているとは言え小さな庭があった。一段低い濡れ縁が付いているのも良かった。
夏はここで素麺を食べ、ビールを飲もう。

 向かいには広い敷地に古い平屋が建っていた。人の住んでいる気配は感じられない。
私は不動産屋に戻り、あの家を借りたい故を申し出た。


 引越しの前に借家を住める状態にする必要があった。
家主は敷金もいらないし、家賃も半額にするから、建物の修復はこちらで負担出来ないかと提案してきた。
 私はその条件を飲んだ。改修作業はゴールデンウィークに決行する事にした。


 アライグマ男は腰にドライバーやペンチを無数にブラ下げた物々しい出で立ちで私の前に現れた。
「もう大丈夫です」彼は、すました顔で私に告げた。
私は何が大丈夫なのかサッパリ分からなかったが、とにかく彼の協力を歓迎した。

 庭の雑草の処分から作業は始まった。身の丈ほどもある雑草を鎌で切り倒し、力を込めて引き抜いていった。
アライグマ男は予想に反してチョコマカと良く動いた。雑草取りは意外なほどのスピードで決着をみた。元々敷地が狭かった訳だが。

 次は壁の修復、台所・トイレ・浴室の清掃に当たった。この作業は予想以上に難航し数日間を必要とした。
アライグマ男は、休む事なく毎朝、顔を見せた。彼は午前中、精力的に作業を手伝い。昼食後は、精力的にお昼寝に没頭していた。
私は濡れ縁に寝転がってイビキをかいてるアライグマ男を横目に、黙々と修復作業に励んだ。

 四日目の夕暮れ。修復作業は一応完了し、ようやく荷物を運び込む準備が整った。私は満足げに室内や庭内を見渡した。

 私とアライグマ男は家具のないガランとした部屋でささやかなお祝いをする事にした。
私は風呂を沸かし、アライグマ男は近所まで買出しに出かけた。

 熱い風呂にジックリと浸かり、磨いたばかりの濡れ縁に座って、冷たいビールを流し込んだ。アライグマ男は焼き立てのソース焼きソバを包みから取り出した。

ぶきだば.jpg

 強烈なソースの焦げる匂いが食欲を刺激した。私とアライグマ男は詰め込むようにソース焼きソバをたいらげた。

 すっかり満腹して酔いも回った私は、縁側のガラス戸にもたれてウトウトと居眠りをしていた。
 アライグマ男が私の車から持ち込んだCDラジカセが鳴り響く音で目が覚めた。
Crowded Houseの『Distant Sun』。

「どうして、この曲を?」私はアライグマ男に尋ねたが、彼は軽く肩をすくめただけだった。

 私は、その曲を聴きながら、向かいの広くて古い家をボンヤリ眺めた。もう、すっかり日は落ちて薄暗い闇が辺りを覆っていた。

 広い家からは一部屋だけ明かりが漏れていた。それもひどく弱々しくて慎ましい明かりだった。明かりのついた部屋には小さな人影が一つだけ見えた。
老人が一人で暮らしているのかもしれない。

 私は缶ビールをもう一本開け、チビチビと口に運びながら、弱い光が漏れる部屋を眺め続けた。
『持ち主だって忘れてるかもしれません。もう誰も覚えてやしませんよ』
不動産屋で耳にした言葉が蘇ってきた。

 不意に弱い明かりが消え失せた。向かいの古い家は暗闇に包まれた。
私は、なんだか不安な気持ちになった。私は振り返ってアライグマ男に声をかけようとしたが、ある事が気にかかって思い留まった。

 そこに彼がいなかったら。誰もかも消え失せてしまっていたら。もう誰も私を覚えていないとしたら。

 私は消え入るような声で後ろにいるはずのアライグマ男に声をかけた。
「いつまで孤独を共にする事が出来るかな?君と私の孤独だ。」
私は、すがるような思いで彼の返事を待った。
 霧雨のような沈黙が、その古い家に降り注いだ。それは孤独とちっとも変わらない冷たさで私の身体を濡らし続けた。


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2006年03月28日

アップ・オン・ザ・ルーフ

James Taylor.jpg
The Best Of James Taylor

☆推奨BGM:James Taylor「Up on the Roof」フル試聴は、こちらで。キャロル・キングの曲ですが、とても良いヴァージョンです。

 梯子の上からアライグマ男が手を差し伸べている。私は彼の腕を掴み、屋根の上まで引っ張り上げる。

 我々は屋根に登っていた。私の家だ。
それはポカポカした陽射しが溢れ、ホワホワした、ふくよかな香りが漂よう、春の午後の事だった。
 古くなった瓦を取り替えようと屋根に登ると、そこはちょっとした別世界だった訳だ。

 見慣れて色褪せてしまった近隣の景色が、一瞬のうちに鮮やかな彩色を施され、おろしたてのスニーカーみたいに真新しく様変わりしてしまっていた。屋根の上から見上げる青空は、ずっと近い場所に降り注ぐように存在していた。
 
 青い空と緑の山並が交わる、なだらかな曲線。山のふもとを流れる河川敷。青々とした土手の草木が風に身を震わせている。ポツンポツンと立ち並ぶ住居に映える色取り取りの屋根瓦。空き地に捨てられた壊れた自転車。向かいの家の縁側で鏡餅みたいな形で寝入っている白い猫。細い道を颯爽と自転車で行き過ぎる部活帰りの女子中学生。古タイヤ。空き缶。赤いツツジ。ピアノの音。草木の匂い。

 私は急いでアライグマ男を呼んだ。彼はリビングでアイロンがけに夢中になっている。
「冷蔵庫からビールとウーロン茶、それからテーブルの上にお惣菜の包みがあるから持って来て!」
 アライグマ男は大儀そうに荷物を運び上げた。それから嫌がる彼をなんとか説得して屋根の上に引っ張り上げた。

「ほらほら〜、良い眺めでしょう?」私はアライグマ男に聞いた。
彼は屋根の端でボタ餅みたいに身を縮めて震えている。高い所が苦手なようだ。
「そんな所にいると落ちるよ〜」私が言うと彼は大トカゲのみたいな体勢で屋根の上を這い上がって来る。目が血走って凄い顔をしている。

 ようやく頂上に到達したが、腰掛けるのは無理みたいでヤモリのように瓦に貼りついたままだ。それでも少し落ち着いたようだ。

 私はウーロン茶の缶を開けアライグマ男に差し出す。彼を屋根瓦に貼りついたまま無理な体勢でウーロン茶をチビチビ飲み始めた。
私は青空を仰ぎながらビールを流し込む。気持ちの良い春風が拭き抜ける。
 それからお惣菜の包みを開ける。中から大量のイカリングが顔を出す。

いらろんば.jpg

 美味いと評判の総菜屋から揚げたてを買って来たのだ。
「おお!」アライグマ男が高所を忘れ飛び上がった。彼は何事も無かったように屋根に腰掛けるとムハムハとイカリングに食らいついた。
 私も一つ摘んで口の中に放り込む。ホクホクしてパリッとしてて、噛み締めると肉汁がジュワと溢れてくる。「美味い!」思わず唸る。

 我々は春の屋根上で芳醇な一時を堪能している。
私は満ち足りた気持ちになってアライグマ男に微笑かける。
「大切な場所って、案外、身近にあるものですね。いつも頭の上にあったのに、ずっと見過ごしてしまっていた。
大切な物って、遠くまで出かけて行って探し当てる。そんな物なんでしょうかね?
なんだか最初から身近な場所に用意されているような気がしてきますね。手の届く場所にね」

 私が話しかけてる最中、アライグマ男は一つのイカリングを握り締めて、ワナワナと震えている。
「見てください!見事なイカリングです!」興奮したアライグマ男は、手に持ったイカリングを差し出そうとしたのだが、手が震えて、そのイカリングを落っことしてしまう。
 イカリングはコロコロと転り落ちて行く。
何を思ったかアライグマ男は、転がって行くイカリングを追いかけて屋根瓦を駆け下りた。
「おお〜い!落ちるよ〜〜!」私が叫びも空しく、勢いのついたアライグマ男は屋根の上をアメンボウのように滑り落ちて視界から消えてしまった。

 あわわわわわ。死んじゃったかな?私は恐る恐る屋根の端まで下りて、下を覗き込む。
 アライグマ男はツバキの植え込みに顔を突っ込んで目を回している。植え込みがクッションになって怪我はないようだ。

 ふと屋根の雨どいに目をやると、アライグマ男が追いかけたイカリングが引っかかっていた。私は、それを拾い上げシゲシゲと眺める。

 なるほど!確かに色と言い、ツヤと言い、形と言い、最高級のイカリングに違いない。私は感心しながら、その見事なイカリングをしばらく眺め続けた。

「しかし、屋根から転げ落ちるほど大切な物なのかね?」
私は最高級のイカリングをポイと口の中に放り込み、大切に胃袋に仕舞った。

 屋根の上を爽やかな春風が吹き抜けて行く。
この屋根から転がり落ちた春風は、どこに落ち着くんだろう?
我々は、そいつを追いかけ続ける。この春もまた。


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2006年03月15日

べる・ぼとむ・ぶる〜す(後編)

The Cream of Clapton.jpg
Eric Clapton / The Cream of Clapton

スウ・スウ・ハク・ハク、スウ・スウ・ハク・ハク・・・。

完璧な4拍子!ベストな呼吸法だ!
私は恐怖にかられながら恐る恐る後ろを振り返るのだった。

 アライグマ男だ。私の背後をピッタリとマークしている。
何故だ?何故、アライグマ男は私の走りについて来れる?理想的な呼吸法をマスターしている?
私は後方から迫ってくる汗だらけ、ヨダレだらけの臭い男に凍りつくほどの戦慄を覚えるのだった。

 私はペースを維持して走りながら、何度も後ろを振り返り、アライグマ男のフォームを細かにチェックした。
せまい歩幅、小さくシャープな腕の振り、めまぐるしい脚の回転。
ピッチ走法だ!ヤツは、高橋尚子ばりのピッチ走法を習得している!
うかつだった。ただの素人クマだと見くびって戦いを挑んでしまった。
ヤツは、かなりの修練を積んでいる。走りのエキスパートだったのだ。

 次に、私はアライグマ男が浮かべる表情に着目してみた。メンタル面のひ弱さが見られるのなら勝算が有る。
アライグマ男の顔に浮かんでいるのは・・・夢見るような眼差し。薄ら笑いを浮かべた口元。激しく紅潮し火照った頬。デロデロと垂れ流されるヨダレ。鼻から噴出される鼻水混じりの熱風。
ヤツは夢中だ!自分の走りに夢中なんだ!あの恍惚とした表情を見ろ!紛れもないエクシタシーだ!ヤツは、自らの走りに陶酔し、溺れてもいる!

 あわわわわ。その瞬間、私は自分の負けを悟った。
ヤツは化け物だ。薄らバカにしか出来ない圧倒的なモチベーションを維持している。
私には、陶酔した走りに勝る実力はなかった。走る事に喜びを見出すほどには達観してはいなかったのだ。
またしてもアライグマ男の前に沈むのか?私の中で屈辱の炎がメラメラと燃えあがるのだった。

 私は勝負に出た。どんな手段を使っても勝たねばならない。
私は自らのプライドとスポーツマン・シップをアッサリと捨て去り、何がなんでも勝ちに行くのだった。

 私は、コースの右手に現れた地下街へ下りる階段に、身を翻して飛び込んだ。
アップダウンだ。あの巨体はアップダウンに弱い。
私は必死の形相で階段を駆け下りた。地下街に降り立つと通行人を跳ね飛ばしながら通路の向かい側に有る地上へと繋がる階段を駆け登った。
私の顔は、鬼の形相に変わっていた。血管は太く浮き上がり、鼻の穴は500円硬貨ほどに丸く広がり、口からは大量のヨダレを垂らしながらゼーゼーと荒い息を吐いた。
血走って真っ赤に充血した眼。滝のように滴る汗。
異常者だ。私は培ってきた人格を全て捨て去り、アライグマ男との真剣勝負に挑んだ。

 再び地上に出ると、歩行者を突き飛ばし、老人に蹴りを入れ、子供を投げ飛ばし、車のボンネットに乗り上がり、赤信号の横断歩道に飛び込んだ。
突然、飛び出してきた歩行者に急ブレーキをかける乗用車。悲鳴のようなブレーキ音が響き渡る。私は怯まず車の隙間をすり抜け、前に向かって突進する。急停車した車に後続車が追突した。爆音と火柱が上がる、交差点で激しくスピンする車を避けて、一台の車が道路脇の店舗に突っ込んだ。ガラスの割れる音と人の悲鳴が飛び交う。もう一台の車はガソリンスタンドに突っ込んだ。地面を揺るがす爆音が響き、ガソリンスタンドは火柱と黒煙に包まれる。
辺り一面は、火の海となった。泣き喚き、逃げ惑う人々。パトカーや救急車のサイレンが街中に木霊し、空をヘリコプターが飛び交う。

 それでも私は勝負を続けた。私は負けるのが怖くなっていた。
負けを認めるくらいなら、全てを破壊してしまいたかった。何もかも無かった事にしてしまいたかった。

 私は背後に迫って来る不気味な足音に身体を引き攣らせ、狂うほどの恐怖を感じた。
ヤツはすぐ後ろにいる。すぐ後ろまで来ている。

 炎を上げ続け、地獄絵図と化した町並みを背景にして、その男の野太い声が喧騒を切り裂いた。

「ラ〜〜ブ・アンド・ピ〜〜〜ス!!」



いくらなんでも、このオチはマズイだろう。本当にスイマセン。昨日の時点と全然違う結末でした。


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posted by sand at 17:10| Comment(0) | 超短編小説・アライグマ男シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月14日

べる・ぼとむ・ぶる〜す(前編)

Layla.jpg
Derek And The Dominos / Layla

 久しぶりに見かけたアライグマ男は、ベルボトムのジーンズをはいていた。
いつの間にか肩までの長髪になっている。つけ毛か?モサモサ髭を蓄えている(元々毛深い男だが)。絞り染めのサイケなTシャツを着て、首にジャラジャラとビーズの首飾り。派手な柄のサンダル。ヒッピーだ。ウッドストックだ。サマー・オブ・ラブだ。昔からバカな男だったが、とうとう本格的なバカになったか。

 アライグマ男は、若者が集うチャラチャラした通りで揺れていた。文字通りユラユラ揺れている。踊っているのか?リズムは、まるでサザナミのよう。そうそう。ブンチャチャ、ブンチャチャ〜♪
真昼間からブンチャチャリズムで揺れているのは、どうした事か?

 私はアライグマ男から見つからぬように、ビルの影に隠れてヒッソリと監視していた。興味は有るが、声をかけられるのは嫌だ。バカがうつる。

 しばらくブンチャチャ揺れていたアライグマ男の動きがピタリと止まった。
むむむ。何か見つけたな。私はアライグマ男の視線の先を追った。
おおお!メチャクチャ良い女!ビシッとスーツを着こなしてるぞ。高いぞ。高い女だ。どうするの?アライグマ男君。さ〜どうするね〜?
アライグマ男は、良い女の前にヒラリと立ちふさがった。あ!ビックリしてる。良い女、ビックリしてる。ごもっとも。早く警察に通報しちゃってください。ケケケ。

 お!アライグマ男、大袈裟にお辞儀した。魅せてるね〜。芝居がかってるぞ。まるで新春かくし芸大会の中山秀だ。酔ってる、酔ってる。自分に酔ってるね〜。
アライグマ男、口を開いた。さ〜〜何て言うのかな?
「ラ〜ブ・アンド・ピ〜ス!」
ラブ・アンド・ピースかよ!大きく出たな〜。手におえるのか世界平和。どう収める?この事態どう収める気だ?アライグマ男よ。良い女、呆気に取られてるぞ。
さ〜次の台詞は何だ〜〜?
「What's So Funny 'Bout Peace, Love and Understanding?」
何だ?何言ってるんだ?愛と平和は可笑しくないけど、あんたは可笑しいよ!間違ってるって!危ないよ!アル中だよ!

 あ!良い女、慌ててバックをゴソゴソかき回してる。携帯で通報か?スタンガンか?バカ男も年貢の納め時か・・。
お、メモだ。なんかサササとメモしてる。どうした?どうしたんだ?
良い女、メモを破ってアライグマ男に手渡した。これは?これは?
「あとで電話して。たった今、あなたに夢中になったの。自分でも信じられない。でもね。私は信じてるの。愛と平和。もちろん、あなたも信じるわ」
なんだよ〜!落ちちゃったよ〜!そんなんで落ちるの〜?そりゃないよ〜〜。

私は肩を落としてガックリと、うなだれた。
良い女が名残惜しそうに立ち去ると、アライグマ男は再びブンチャチャと揺れ始めた。
私は失意を胸に秘め、その場から退散しようと振り向いて歩き出した。
突然、アライグマ男のドラ声が響いた。
「ヘ〜〜イ!!メ〜〜〜〜ン!!」
やばい!見つかったか!私はおずおずと後ろを振り返った。
アライグマ男が巨体を揺すり、両手を広げて迫ってきていた。
いかにも汗臭そうだ。この距離からでもムンムンとした異臭が漂って来るようだ。風呂入ってるのかな?私はアライグマ男の汗臭い巨体から抱きしめられる事に恐怖を憶えた。絶対、体臭で失神する!
次の瞬間、その場から一目散に逃げ出したのは無理からぬ事だった。

 私は全速力でスタートを切り、一気にアライグマ男を引き離す予定だった。短距離は遅いが、長距離には自信があった。私はスライドを大きく伸ばし、苦節の末に習得したスライド走法を惜しげも無く披露した。全身をバネのように弾ませて、自慢の走りを見せつけた。どうだ?いかにヒッピークマと言えど、この走りにはついてはこれまい。

 しかし。しかし。思わぬ事態は再度、私を襲うのだった。
背後から次第に荒い息使いが迫ってくるのだ。スウ・スウ・ハク・ハク、スウ・スウ・ハク・ハク・・・。
完璧な4拍子!ベストな呼吸法だ!
私は恐怖にかられながら恐る恐る後ろを振り返るのだった。



バカバカしい話、不幸な事にまだ続きます。


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posted by sand at 20:56| Comment(3) | 超短編小説・アライグマ男シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月01日

青空のヴァレリーA

Arc of a Diver.jpg
Steve Winwood / Arc of a Diver

 走り始めて、5分も経たないうちにアライグマ男は道路地図を抱いたまま、再びイビキをかき始めた。この車にはカーナビが付いていたので、特に困る事は無かったのだが。

 彼女に会ったのは、私がまだ大学に通っていた頃だった。
ある夏、友人の中型バイクを借りて一人旅をした事があった。もちろん授業とバイトをサボって。
リュックを荷台に縛りつけて、あちこちの街を走り回った。強い風を浴びてバイクを走らせていると、当時抱えてた漠然とした焦燥や不安が、呆気なく吹き飛んでしまう。そんな気持ちになった。
激しい雨の日は、全身ずぶ濡れになって走った。茹だるような猛暑の日には、身体中から汗を撒き散らしながら走った。

 雨の夜は、街中のカプセルホテルに泊まった。サウナで汗を流し、ロビーで缶ビールを流し込むと、一日の疲れは消え去ってしまった。私は、まだ若く、タフな身体と柔な心を併せ持っていた。

 晴れた夜は、郊外の公園のベンチの上で寝た。缶ビールとハンバーガーを買い込んで降るような星の下で、それらを詰め込んだ。夜の風は爽やかで私は自然の中に包み込まれるような幸福を感じた。
横になって星を見上げながら考え事をしようと試みた。でも、いつでも結論が出る前に眠ってしまう。答えは、眠りの番人に奪われてしまうのだ。結局、私の手元には何も残りはしなかった。


 私とアライグマ男を乗せた車は、眩しい陽射しを浴びながら海岸線を走っていた。
青々とした海原に白い波飛沫が舞い上がっている。何隻かの客船が、船体に眩しい日の光を浴びながら、ゆったりと進んでいるように見える。少し窓を開けると、ふくよかな潮の香りが鼻を刺激した。
遥か彼方で、空と海が溶け合い、揺るぎのない調和を誇示しているように思われた。

 もうすぐ海辺の温泉地帯を通過する。我々は、そこで高速道路を降りて温泉に入る算段だった。
しばらく行くと到る所から湯気が吹き上がり、硫黄の匂いが漂い始めた。海岸線には、密集するように立ち並ぶ巨大な観光ホテル群が見渡せた。
 我々は高速を降りて温泉街に向かった。温泉地へ繋がる広いバイパスには、椰子の木に似た街路樹が道路脇に規則正しく配置されリゾート地の景観を漂わせていた。我々は大規模な観光ホテルが隣接する開発区域には向かわず、古い旅館が目に付く、昔ながらの温泉宿場の方向に車を進める。
狭い上に駐停車した車両が目立つ、ゴミゴミした通りの両脇には、古くて赤茶けた温泉宿が立ち並んでいる。
何軒も軒を連ねる土産物屋。小さくて汚いパチンコ屋。バーやスナックの看板が歩道までハミ出している。昼間でもチカチカとネオンが点滅する風俗店。胡散臭そうな暗い雰囲気の漢方薬局。温泉宿場の風景は昭和の時代にタイムスリップしたように昔ながらの佇まいを見せていた。

温泉街の端に市営の駐車場が見えてきた。私は、そこで車を停めた。

エンジンを切った後、一度も目を覚まさなかったアライグマ男を揺さぶり起こす。
彼は、目を擦りながら大あくびをする。
「よく寝てましたね」
「ええ。今日の午後からに備えていました」アライグマ男は朦朧とした頭で答えた。

2005年10月30日

青空のヴァレリー@

Talking Back to the Night.jpg
Steve Winwood / Talking Back to the Night

 荷物を車に詰め込んで、出発の準備が整った。
彼女に会いに行くのだ。ナビゲーターのアライグマ男は助手席でイビキをかいて寝ている。
私はレンタルした4WDに乗り込んでエンジン・キーを回す。
車を道路に乗り出しスピードを上げる。時刻は、まだ深夜だ。
彼女の住む街までは、かなりの距離を走る必要がある。
私はアクセルを踏み込み、車の空いた真夜中のハイウェイを泳ぐように推進させる。

 彼女は目が不自由だった。
 私と彼女は、一年に数回、カセットテープに吹き込んだ手紙のやりとりをしている。私は、自分の身辺に変化や曲折が訪れた時、彼女にカセットテープの手紙を送った。
彼女に向かって(実際にはテープレコーダー)語りかけていると不思議と心が落ち着き、混乱が緩やかに解消して行くような気持ちになった。

彼女からの手紙(カセットテープ)は、庭に植えられた植物や近隣に住まう街の住人達の噂話が主だった。彼女は随分高齢で一人暮らしだった為、生活の変化には乏しかった。
でも、とつとつと話す彼女の声を聞くのは楽しみだった。
彼女は虚栄や物欲とは無縁の人だった。彼女の楽しみは、人が幸せに暮らしている話を聞く事だった。それが彼女の抱えた哀しみを、唯一和らげる事が出来る救いだったのかもしれない。

 山間のハイウェイを走っている途中に夜が明け始めた。
少し色づき始めた山々が次第に鮮明になって行く。連なる山の陰から顔を覗かせる赤い太陽は、生命の鼓動を感じさせる力強さに溢れていた。
私は、真新しい日の光を身体に浴びると自分が新しく生まれ変わるような心地良さを感じていた。
夜の自分が死に、朝の自分が産まれる。

山頂近くのパーキング・エリアでアライグマ男を揺さぶり起こす。
彼は、目を擦りながら大あくびをする。
「よく寝てましたね」
「ええ。今日の午前中に備えていました」アライグマ男は朦朧とした頭で答えた。

車外は凍えるほど寒い。
我々は車のヒーターを入れたまま、コーヒーとサンドイッチで朝食を取る。
ハムとチーズとピクルスを挟んだ玄米パンのサンドイッチを頬張りながら、ポットに準備していた熱いコーヒーを流し込んだ。
アライグマ男は寝起きでも良く食べた。
あっと言う間に用意して来た朝食は、終わってしまった。
我々は、車を降りて震えながらトイレに駆け込み、エリア内にある展望台に登ってみた。

朝靄に包まれた海辺の街が眼下に広がっていた。
海岸線は、滑らかにスローブを描いて海と陸とを隔てている。海の彼方には、幾つかの小島が浮かんでいるのが見えた。
冷たい風が、海のある街に吹き降りて行く。私は高い空を舞う鳥のように風のウネリを聞く。

アライグマ男が、袖を引っ張って「寒いから車に戻ろう」と素振りで伝える。
我々は小走りで車に再度乗り込む。

「では出発」私は車をスタートさせる。
「了解。道案内は任せてください」アライグマ男は道路地図を抱えて答える。

カーステレオが音を解き放つ。Steve Winwoodの「青空のヴァレリー」。
「良い気分ですね」スティービーの爽快な声を聞きながら私。
「この旅をSteve Winwoodに捧げましょう!」アライグマ男が声を上げる。

鮮やかな緑色をした背景の中に、我々の車とスティービーの歌声が吸い込まれる。

2005年10月14日

陽の当たる側をごらん

Everybody's in Show-Biz.jpg
The Kinks / Everybody's in Show-Biz

厨房から店主が顔を出した。「いらっしゃ〜い!」意外に元気だ。
小柄でツルンとした卵型の顔をした男だった。70歳の手前だと思われるがエネルギッシュな雰囲気を漂わせている。町内運動会でやたら仕切ったり、根拠不明の頑張りをみせるタイプだ。町内のゴミ拾いに夜明け前から出かけて、来てない者をテキパキとチェックするタイプだ。
商売おろそか商店主には、様々なタイプがある。この親父の場合は<社会派・商売おろそか商店主>と見受けられた。
見るからに<話好きのオーラ>を放出しまくっている。

我々は伏目がちに「こんちは」と言って、スゴスゴとテーブルに付いた。
我々は基本的に人見知り族なので、見ず知らずの人と気軽にお話し出来る能力は持ち合わせていないのだ。

オーダーは毎回決まっているのだが、とりあえず、メニューを眺めてから商品名を告げた。

「え〜私はラーメンの硬麺とビール。この人はラーメンの柔麺とライスの大」

社会派親父は「へい!」と一声かけて調理に取りかかった。

待ち時間。アライグマ男はテーブルに人差し指をプニプニくっ付けて、テーブルの表面に付着した油汚れをチェックしている(ビトビト・チェック)

私は窓の外を、ぼんやり眺めていた。さっきまで降り続いていた雨は、いつの間にか、あがってしまったようで、雲の切れ間から陽が射し込んで来ている。
Look a Little on the Sunny Side。キンクスに、そんな曲があった。

社会派親父がビールとコップを運んできた。
ビールは、サッポロ黒ラベルの瓶ビールだった。これは嬉しい。
かねがねラーメン屋で飲む瓶ビールはサッポロ黒ラベルが最適なのではないかと思っている。
黒ラベルのズングリした切れの無い喉ごし(良く言うと重量感がある)は、しょぼくれたラーメン屋の雰囲気にマッチしているのではないかと考える。
アサヒのスーパードライではキレ過ぎる。キリンのラガーや一番絞りではコク有り過ぎる。

黒ラベルの栓を抜いて安物のコップにトクトクと注ぐ。木目細かでフワフワした泡が入道雲のように立ち上る。
ビールは一瞬の勝負だ。最初の一口がクライマックス。一気にグビグビグビと底が見えるまで味わおう。美味いね〜〜。

ビールをチンタラ飲んでいると、ラーメンが届いた。
多少、酔ってると味なんか、どうでも良くなってくる。休日の昼下がり、しけたラーメン屋でビールを飲みながらラーメンを食う。これ以上の幸せが、どこにある?
麺は腰がないし、スープは<味の素>の味しかしないが、そんな事どうでも良くなってくる。
マルタイの棒ラーメンよりは美味しい。それ位で良いのだ。低レベルの人間には相応しい。

アライグマ男は、ラーメンを食べる前に、ライスにアジシオを振りかけてムホムホ言いながら食べている。何故かは知らないが、アジシオかけご飯が大好物なんだ。
「この男は、グルメのなんたるかが、まったく分かっていない。」ご飯をニコニコ顔で、ムホムホ頬張っているアライグマ男を眺めながら、つくづく思う。

厨房に目をやると、社会派親父が、イスに座って「リーダーズ・ダイジェスト」を読んでいる。

我々の座ったテーブルにも、陽が射し込んで、眩いテーブルクロスを広げたように見える。
私は、陽射しに向かって手をかざす。私は、何も持っていない。
差し出した手の中には陽の光だけが残っていた。

2005年10月13日

ホリディ

Muswell Hillbillies.jpg
The Kinks / Muswell Hillbillies

秋雨の中を傘をさして歩いていた。
休日の午後。住宅地を歩くと、人も犬も信号機も心地良くお昼寝しているように、ヒッソリしている。
私は、少し肌寒くなった空気の中を口笛を吹きながら歩いている。
キンクスの「ホリディ」。それは口笛にとても良く馴染んだ。だるい午後の風景を描かせたら、誰もレイ・ディビスには敵わない。天才なのだ。
でも、レイの書く<のほほんソング>には、ポール(マッカートニー)なんかとは違う緊張感がある。完璧に<のほほん>と、させてはくれないのだ。どうしてなのかは、私の考える事ではない。
レイの曲なら何度でも聴くが、レイ本人の事は出来るだけ考えないで平和な一生をおくりたいと思っている小市民だから。

駅前で待ち合わせて、アライグマ男と一緒にラーメン店探索に向かう。

我々が求めているラーメン店とは、行列が出来るような、こだわりの店とは違うのだ。
人通りも少なくヒッソリしている通り(昔は栄えた通り)で細々と営業している。だいたい老夫婦が運営しているようなラーメン店だ。
美味くもないが不味くもないラーメンを作る、最も印象に残らないお店が良い。
近所の人も「ただ近くにあるから」と言う理由だけで、時々食べに行くようなお店だ。

このような「ヒッソリ系」のラーメン店は、探せば幾らでも存在している。
我々のライフワークとして、これら「ヒッソリ系」の発掘に取り組んでいるのだ。

「ヒッソリ系」のラーメン店を探し当てるのには、独自の嗅覚が必要とされる。貧乏臭い匂いを嗅ぎ分ける能力が必要とされる訳だ。

今日のターゲットは、裏通りも裏通り、車の離合も難しいような場所に酒屋さんと並んで存在していた。
くたびれた赤ノレンが、どんよりとした気配を放っている。

店の前には、古びた自転車が置かれている。これはポイントが高い。錆び付き具合をチェックする。荷台の配達用の備品も年季が入っている。

まず、入口の引き戸が重いのが条件なのだが、この店は合格だった。二人がかりでも、かなりの時間を要した。

続いて店内を覗く。
厨房に面した3人がけのカウンター。4人がけのテーブルが3つある。意外に店内は広いようだ。
早速、常設された漫画本をチェックする。マガジンとビック・コミック・オリジナル。オリジナルはポイントが高い。スピリッツよりも高評価の対象となっている。我々は満足そうに、うなづき合った。
さて漫画本の状態をチェックしよう。油ギッシュなら高評価。
「これは!」私は思わず声を上げた。なんと一冊丸々くっ付いてページが、めくれない。
多分、水をこぼしてしまったのだろう。それを、このまま放置しているとは・・。
漫画本の評価は、☆☆☆☆☆に値する最高級のものとなった。
我々は、額に汗して、鼻息も荒く、うなづき合うのだった。

☆長くなったので、続きは後日。

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