2005年06月22日

暗黒星の秘密K

やがてパトカーのサイレンが遠くから聞こえた。
「もう去っただろう」アライグマ男は、泳ぎを止めて埼玉ネコに言った。
「そうだな。あの埠頭まで泳ぐか。」埼玉ネコは苦しそうな表情で右側の埠頭を指差した。
「ハードな仕事になったな」埼玉ネコは愚痴るようにアライグマ男に言った。

「男の仕事は常にハードだ。命なんて、ちっぽけな物だろ」アライグマ男は淡々と泳ぎ始めた。
「命は大切にして金庫に閉まっておくもんだぜ」埼玉ネコも気力を振り絞って泳ぎ始めた。

波止場.jpg

埠頭の舟と舟の隙間に、埼玉ネコとアライグマ男は転がり込んだ。全身ずぶ濡れで、足や腰を負傷している。
荒い息をつきながら、埼玉ネコは防水ケースから携帯電話を取り出しエリザベスに連絡を取った。
最初の言葉は電話を取ったエリザベスからだった。
「生きてるのね!どこにいるの!」

「生きてるようなのだが、地獄との違いも分からなくなった。」
埼玉ネコは、これまでの経過を説明した。

「誰か車を手配してくれないか」
「いいわ。ティミーって子を向かわせるわ。まだ16歳だけど、とても頭が切れるの。もちろん運転も大丈夫。」
「ガキなら怪しまれなくて良いかもな。頼むよ」
「他に必要な物は無い?」
埼玉ネコは、薬品と着替え、食べ物を頼んだ。

「それから・・」埼玉ネコは言いかけた。
「警察の事なら心配ないわよ。父に頼んで圧力をかけてもらうわ。それからアジトのベイサイド・ビル跡地には、ウチの警備員を送って張り込ませておくわ」
「君は頭が切れるんだな。たいしたお嬢様だ」
「憶えておいて、女は、いつでも捨て身になれるものよ」
エリザベスは、そう言い残すと電話を切った。

2人は、その場で迎えの車を待っていた。
空は夕陽で真っ赤に染められている。冷たい風が吹いて二人は身体を震わせていた。

湾岸道路の方向に人影が動いた。夕陽を浴びて何かがキラリと光っている。
埼玉ネコは飛び起きて、アライグマ男に声をかけた。

「スナイパーだ!」
posted by sand at 13:48| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

暗黒星の秘密J

お前は来るべくして、ここに来ておるのじゃ。
埼玉ネコは、その言葉の意味を考えていた。

<暗黒星>とは何か?それは、今もって謎だ。

1.伝説のアキレスの戦いで魔術師ロイ・ハーパーと魔獣ケラウズランブラを討伐した超自然的で莫大な力を持つされる物体。四聖人の血族に継承される<星を継ぐ者>の左腕に<暗黒星のカケラ>が宿り続くように呪文をかけたと言われている。

2.四家の創始者が形作ったとされる、金を産み出す錬金システムの総称。
一説には裏金融とも隠し鉱山とも犯罪を含む裏組織とも言われている。

3.もしくは、それ以外の全く違う物。

Funkadelic婆は、埼玉ネコに言い聞かせるように話をした。

「いいか。良く聞け。これから起こる事は、他ならぬ、お前を探す事になるだろう。
お前自身を探す旅だ。
人は、常に自分を探す旅を続けている。人生とは、自分がどこから来たのか。自分が誰なのかを探し求める事なのじゃ。
わしは、この歳になっても自分が誰なのか?今の自分が本当の自分なのか?確証がないのじゃ。
それは若い頃よりは分かる事も多い。それでも霧が晴れるようには断定出来ないのじゃ。

いいか。しっかり前を向いて運命を受けとめるのじゃ。決して逃げては、ならぬぞ。

わしに言える事を、もう一つだけ教えてやろう。大切な事じゃ。

お前の、ひ・・・・」

<Funkadelic婆>は、口を開きかけて、突然、痙攣を起こすように立ちあがり、テーブルに、うつぶせに倒れ込んだ。
婆さんの背中には、ブスブスと音を立てて血が広がっていた。サイレンサー付きの小銃だ。

裏口から、誰かが逃げる物音が聞こえた。
「後を追うんだ!」埼玉ネコは、横に座って話しを聞いていたアライグマ男に叫んだ。

アライグマ男は、モーゼルをホルスターから引き抜いて、裏口に飛び出して行った。

「おい!婆さん大丈夫か?」埼玉ネコは、<Funkadelic婆>を抱き起こした。
しかし<Funkadelic婆>は、すでに息絶えていた。

埼玉ネコは<Funkadelic婆>を抱きしめて叫んだ。
「婆さん、何を知ってるんだ!俺は、どこから来たんだ!俺は誰なんだ!教えてくれよ。」
どれだけ待っても、婆さんからの返事は返って来なかった。

埼玉ネコは<Funkadelic婆>の遺体から首飾りを離した。そこには奇妙な彫り物がほどこされていた。

Four Symbol.jpg

一つは見覚えがあった。ペイジ家に送り届けられた右腕に描かれていた紋章と同じ図柄だ。

外からクラクションの音が聞こえた。アライグマ男の車だ。
「悪いな婆さん、デリカシーのない男なんだ」

埼玉ネコは、ドアの前で振り返ると<Funkadelic婆>の遺体に小さく声をかけた。
「じゃ、もう行くよ。
婆さん・・俺は立ち止まらないで生きて行くと決めたんだ。どんな事があっても決して立ち止まらないよ。」


埼玉ネコは、ベレッタをホルスターから引き抜き、ドアを蹴破って外に飛び出した。

アライグマ男が、愛車トヨタ2000GTを横ずけしている。
「どうした?」
「乗れ!車で逃げた。後を追うぞ!」アライグマ男は、怒鳴った。

「OK!相棒。俺をこの世の果てまで連れてってくれ!」埼玉ネコは、叫びながら車に飛び乗った。
posted by sand at 04:34| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月21日

暗黒星の秘密I

「婆さん、何か隠しているな。その迷信の裏にあるリアルで血に匂いのする、もう一つの歴史だ」

Funkadelic婆は激昂して切り返した。
「黙れ!若造が!お前に何が分かる?何が分かると言うのじゃ。いいか良く聞け。お前は、現実と言う物を複雑に絡み合った細い糸のように考えているようじゃが、そんな柔な物ではないぞ!現実とは。現実は、お前が考えているよりも遥かに太くて強い。誰もが身動き出来ないほど強靭な物なのじゃ」

Ravvivando.jpg

Funkadelic婆の語った話によれば左腕を狙う者達は次ぎのようなる。

1.左腕の秘密を知る<ペイジ家><プラント家><ジョーンズ家><ボーナム家>の四家の中で、<暗黒星>復活そして独占を狙う者。もしくは共謀した複数の者達。

2.左腕の秘密を知り<暗黒星>強奪を狙う全くの第三者。

3.左腕の秘密を知り<暗黒星>強奪を狙い、四家への復讐を誓う魔術師ロイ・ハーパーの魂を受け継ぐ者。もしくは逃げ延びた血族。(ライオネル・リチ男?)

The Faust Tapes.jpg

埼玉ネコはFunkadelic婆に話始めた。
「旧家の四家が莫大な資産と膨大な権力を手にしている事は間違いない。
長年、ヤツらは日夜パーティに明け暮れ贅沢の限りを尽くして来た。ヤツらは腑抜けで無能だった。
しかし、ヤツらの資金は費えなかった。まったく働く事なく、ヤツらは大金を手にし続けた。
何故だ?何故そんな事が長年に渡って続ける事が出来たのか?

ヤツらは金の成る木を持っていたからだ。それこそ暗黒星だ。

四家の創始者は、金を産み出すシステムを形作り、人の目に触れぬように、それを後世まで隠し続けた。一説には裏金融とも隠し鉱山とも犯罪を含む裏組織とも言われている。
英雄伝説の裏でヤツらはブラック・マネーを作り続けた。そして、それを湯水のように使って来た。
ヤツら四家は安泰だった。誰にも不満はなかった。
ジェームス・ペイジが現れるまでは。

ペイジは、他の誰とも違っていた。ペイジには野心があった。ヤツは乱交パーティなどには一切興味がなかった。
ペイジは、莫大な資産を運用し、さらに強固な資金力を作り上げ、それを後ろ盾に財界・政界を牛耳る事に成功した。文字通りペイジはトップに立った。

ペイジの成功で四家の均衡は崩れる事になった。我道を行く<プラント家>はともかく、<ジョーンズ家><ボーナム家>の凋落は目に余った。

ペイジは彼らを出し抜いて<金を産み出すシステム>(暗黒星?)を独り占めしたのではないか?

ペイジを抹殺し<暗黒星>を取り戻そうとする者が現れて当然だ。
この脅迫の裏にあるのは、勇猛な英雄伝説などではなく金を巡る貪欲な連中のトラブルだけだ。
どう思う?俺の考えは?」

Funkadelic婆は、目を閉じたまま言葉を返した。

「お前は、この事態を傍観者のように、とらえているようじゃな。お前は自分をただの雇われ探偵だと思っておる。
しかし、それは違うのじゃ。お前は何も分かっていない。
お前は来るべくして、ここに来ておるのじゃ。
わしは、お前を子供の頃から知っている。お前の母親もじゃ。
そして・・」

Funkadelic婆の言葉を遮るように埼玉ネコは口を挟んだ。
「俺には父親はいない」

Funkadelic婆は、首を横に振りながら話を続けた。
「それは違う。父のいない子供はいない。お前は、その事を知る事になる。それほど遠くない将来にじゃ。」
posted by sand at 15:43| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

暗黒星の秘密H

「星を継ぐ者は四つに別れた<暗黒星のカケラ>を左腕に宿り受ける。その者、死に至る場合、次なる星を継ぐ者の元に<暗黒星のカケラ>は宿り歩く。
Funkadelic婆は、前に座った埼玉ネコに言った。

Funkadelic婆の占い小屋は、港に近い繁華街の一角にあった。午後の繁華街は、ひっそりとして錆びついた匂いが漂っていた。
Funkadelic婆は、何歳なのか想像も出来なかった。腰まで垂れた汚らしい白髪、深くえぐり込むような皺だらけの顔。しかし体つきや肌のハリは驚異的に若々しく感じられた。

「魔術師ロイ・ハーパーに操られた魔獣ケラウズランブラを倒すために、四人の聖者が現れる。彼らは<暗黒星>の力を用いて魔獣ケラウズランブラを石に変え、魔術師ロイ・ハーパーの首をはねた。

しかし彼ら四人は<暗黒星>の力を恐れた。それは、あまりに強い力じゃった。彼らは<暗黒星>を四つに割り、それぞれのカケラを自分の物とした。
<暗黒星>を悪事に利用させぬよう、また、後に惨事が勃発した際には、もう一度四人が集まって、それを救おうとしたのじゃ。

彼ら四人は死ぬ際、それぞれの血族の<星を継ぐ者>の左腕に、その<暗黒星のカケラ>が宿り続くように呪文をかけた。彼らは後世の危機救済をそれぞれの<星を継ぐ者>に託したのじゃな。

その四人こそが、今に伝わる旧家<ペイジ家><プラント家><ジョーンズ家><ボーナム家>の創始者じゃった。

zep.jpg

それから、その四家の<星を継ぐ者>の左腕には<暗黒星のカケラ>が宿る続けていると言われている。その時代の<星を継ぐ者>が死ねば、次ぎの時代の<星を継ぐ者>に宿る続く。

もちろん、外部にこの事を知る者はいない。わしの血族は、古くからこの四家の専属占い師を務めてきた。当然、わしもそうじゃった。

「しかし、四人がかけた呪文には例外があると言い伝えられている。
<星を継ぐ者>の左腕を生きたまま切り離せば、<暗黒星のカケラ>は永遠に切り離された左腕に留まってしまう。つまり、その左腕自体が<暗黒星のカケラ>となってしまうのじゃ。」


埼玉ネコは口を挟んだ。
「その左腕を四本集めれば<暗黒星>を動かす事が出来るんだな」

Funkadelic婆は、うなずいた。

「では、何故1000年も待つ必要があった?誰かが、その気になれば、これまでにも四本の左腕を集める事が出来た。魔術師ロイ・ハーパーの呪いか?」埼玉ネコは言った。

「それは、わしにも分からん。だた時が訪れたのじゃ。その時が訪れたのじゃ」Funkadelic婆は首を振りながら言った。

埼玉ネコは、Funkadelic婆に突っかかるように、こう言った。
「婆さん、何か隠しているな。その迷信の裏にあるリアルで血に匂いのする、もう一つの歴史だ」
posted by sand at 04:32| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月14日

暗黒星の秘密G

「どう思う?」ハンドルを握ったアライグマ男は、助手席の埼玉ネコに聞いた。
「いい女だ」2人は肩をすくめて笑った。

埼玉ネコは、厳しい表情で話始めた。
「馬鹿げた伝説は、さておき、ジェームス・ペイジには突つかれたくないネタがあるに違い無い。癒着・スキャンダル・黒い噂。
ペイジは俺達を利用して脅迫者に揺さぶりをかけたいのだと思っている。仮に相手がライオネル・リチ男ならヤツが動き出す前に叩きたいのだろう。俺達は、ライオネル・リチ男の前を飛びまわる蝿の役だ。ヤツが手を出せば、四方から叩きのめす算段だろう。
ペイジやライオネル・リチ男が、どうなろうと俺達の考える事じゃない。
目の前の敵を叩く。そして金を手に入る。俺達のやるべき事は、それだけだ。」

「どう思う?」こんどは、埼玉ネコがアライグマ男に尋ねた。

「すぐに忘れるような事は考えない」アライグマ男は答えた。
「名案だ」埼玉ネコは窓の外を眺めた。

2人を乗せた車は、港町の<Funkadelic婆さん>の占い小屋に向かっていた。
posted by sand at 04:38| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月11日

暗黒星の秘密F

LIONEL RICHIE 2.jpg

「何故、左腕を狙う必要がある?」埼玉ネコは、エリザベスに聞いた。
「それは仕事の話が決まってから。今は話せない。」

「何を必要としている?」埼玉ネコは、もう一度聞いた。
「ライオネル・リチ男。あなたは、よくご存知よね」

ライオネル・リチ男は、この界隈の裏社会に君臨するボスだ。彼の経歴は謎に包まれている。どこからともなくやって来て瞬く間にトップに立った男だ。まだ若いが抜群に頭が切れる。度胸もある。
でも彼が恐れられる理由は、それだけではない。彼には特別な力があると言われている。魔術の類だ。でも、それを見た者は誰もいない。一人残らず抹殺されたからだ。

「ライオネル・リチ男が、魔術師ロイ・ハーパーの魂を受け継ぐ者と疑っている訳だ?」埼玉ネコは言った。

Roy Harper.jpg

「わからない。でも彼は恐ろしい男よ。政治や経済の分野にも少しづつ手を伸ばして来ている。私達は彼をマークしておく必要があるわ。」

埼玉ネコは、ソファに深く座り直し天井を見上げて言った。
「ライオネル・リチ男が相手だと分が悪いな。ヤツは手強い男だ。ヤツの仕掛けた罠だとすると、それを掻い潜るのは容易ではない。代償は高くつくよ」
エリザベスは、うなずいてハンドバックから切れるように真新しい小切手を取り出して、埼玉ネコの前に置いた。

そこには、普段、彼らが請求する額より2桁大きい数字が並んでいた。
埼玉ネコは、小切手をアライグマ男の座っている方向に指し示した。「ひゅ〜」小切手の金額を見てアライグマ男は口笛を鳴らした。

「どう?」エリザベスはチャーミングに笑って聞いた。
「俺達は、ある種のプライドの元に運命を切り開いて来た。それは行動における規範とも呼べる物だ。
<美人と小切手を失望させるな>それが規範だ。」
埼玉ネコが、そう言うと、エリザベスはニッコリ微笑んだ。

「OK。契約成立ね。これから起きる事は他言出来ません。あなた方はプロよね。
まず、港の繁華街で占い小屋を開いている<Funkadelic>のお婆さんの所で話を聞いて欲しいの。
今夜、連絡を入れておくわ。4人の左腕を狙う理由を教えてくれるでしょう。彼女は詳しく知っているのよ。昔からの事をね」

「最後に一つだけ聞いて良いかな?何故、俺達なんだ?他にも腕利きは沢山いるだろう?」
埼玉ネコは、ソファから立ちかけたエリザベスに言った。

「父からの要請よ。父は、あなたを良く知っている。例え、あなたが父の事を知らなくても。
父のような立場の人間にとっては容易い事なのよ。良くも悪くも都合の良い立場だって事よ。」
それだけ言い残すとエリザベスは部屋を出て行った。
posted by sand at 17:26| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月06日

暗黒星の秘密E

その後、エリザベスが語った要点は以下のようになる。

1.警察の捜査によって、右腕は病死した路上生活者から切り取られた事が判明。
 病死後に切り取られた事は鑑識によって裏付けられる。路上生活者の身元は不明。
 目撃者の存在なし。

2.右腕が入れられた小包の送り状は、某市のダウンタウンにある雑居ビルの一室になっている。
 小包の集配人が指定された時間にビルを訪れると、その部屋の前に小包と料金が置いてあった。
 後の捜査によって、その部屋は、ここ数年借りられた形跡が無く、室内も空部屋だった。

3.警察の判断は、悪質な悪戯、身代金目当の誘拐もしくは遺恨による殺人予告に絞り込まる。
 警官数名がペイジ家の警備に当たる。また周辺への聞き取り捜査も平行して行われる。

エリザベスから話を聞いた埼玉ネコは、「それで、あなた方は、別の線に疑いを持っていると?」

エリザベスは、深くうなずき話始めた。
「伝説のアキレスの戦いをご存知ですよね?」

「魔獣ケラウズランブラ」埼玉ネコは返した。

black cat bones.jpg

「そう。言い伝えによると古代のこの地に魔術師ロイ・ハーパーが現れます。
彼は、魔力のよって地獄の炎から魔獣ケラウズランブラを形作ります。魔獣は、その強力な破壊力により、この地のあらゆる文明・兵器・秩序を破壊し尽くしまうのです。この地は魔術師ロイ・ハーパーによって支配される瀬戸際に立たされる事になってしまいます。

その時、四人の聖者が立ちあがります。
彼らは、長く苦しい戦いの末、四人の念力によって魔獣ケラウズランブラを石の中に封じ込める事に成功します」

「雄弁なる巨石」埼玉ネコは口を挟んだ。

エリザベスは、うなずいて話を続けた「それが雄弁なる巨石です。その後、ロイ・ハーパーは捕らえられ彼とその血族は一人残らず火あぶりの刑に処せられます。
しかし、死の直前にロイ・ハーパーは、ある予言を発します。

我、命は千年の後に蘇り、この地は再び赤い悪夢によって覆い尽くされる。全ては暗黒星の支配下に置かれるであろう。

それが彼の予言です」

「その千年後が・・」埼玉ネコは問いかける。

「今年のアキレス祭の日」エイザベスは首をかしげて言った。

「OK。真相は歴史だけが知りうる」埼玉ネコは指をパチンと鳴らし悪戯っぽく笑った。
posted by sand at 04:38| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月05日

暗黒星の秘密D

女は、その日の午後3時過ぎ、事務所の扉をノックした。

「埼玉ネコ探偵事務所は、こちらで?」女は扉を少しだけ開けて、そう聞いた。

「間違いありません。私が埼玉ネコです」埼玉ネコは、机の上に放り出していた両足を床に下ろし、立ち上がりながら言った。

女は、すり抜けるように身体を室内に移し、後手で扉を締めた。

美しい女だった。
スラリと伸びた長い足、しなやかな細身の姿態、白く透き通る肌、流れるような髪、深遠な眼、哀しみを湛えた口元。

埼玉ネコは、幾分の動揺を隠せずに自己紹介した。
「埼玉ネコです。そこにいるのが相棒のアライグマ男。」埼玉ネコは、机に座って拳銃の手入れをしているアライグマ男を指した。

アライグマ男と女は軽く会釈すると数秒視線を絡ました。やがて女は視線を外した。

埼玉ネコは、女をソファに案内しながら言った「気を悪くしないで。無口な男です。でも頼りになる。誰よりも」

女はソファに腰を下ろすと名前を告げた。
「エリザベスです。エリザベス・ペイジ」
その名前を聞いて、埼玉ネコはたじろいだ。
「ペイジ・・」

「そう。父はジェイムズ・ペイジです。」エリザベスは、下を向いたまま小声で言った。

ジェイムズ・ペイジは、この世界で知らぬ者がいない、政界・経済界の実力者にして名門旧家の当主だった。

「あなたのような人の来る場所じゃない」埼玉ネコは口篭もるように言った。

エリザベスは、それには答えず、バックから封筒を取り出した。
「ご覧になって下さい」そう言って、埼玉ネコの前に封筒を置いた。

封筒には一枚の写真が入っていた。

右腕.jpg

「これは・・」埼玉ネコは驚いた。

「右腕です。肩から切断された人間の右腕です。先日、私の家に送り付けられた物です」
エリザベスは顔を押さえて震える声で、そう言った。

腕には、マジックか何かで直接文字が書きつけられているのが見えた。
「何か字が書いていますね・・読めないな」埼玉ネコは写真を凝視しながら言った。

この右腕は左腕を欲しがっております。あなたの左腕はちょうどよい。色も形もちょうどよい。
そう書かれています。エリザベスは声を震わせながら言った。

「狂っている」埼玉ネコは胸の奥からこみ上げて来る物を感じながら吐き出すように言った。
「もう1箇所。紋章のような物が描かれていますね。」

page.jpg
posted by sand at 04:37| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月04日

暗黒星の秘密C

焔.jpg

熱風に吹き飛ばされた埼玉ネコとアライグマ男は、背中を炎に包まれながら海面に叩きつけられた。
身体が嫌な音をたてて軋しみ、焦げつくような痛みが全身を這い回った。

海中の奥深くまで投げ出された埼玉ネコは激痛に耐えながら、泳いで水面まで達した。
咳込みながら息を継ぐと、急いで位置を確認した。湾岸道路に炎上する車が見える。少し離れた場所にアライグマ男の顔が見えた。「大丈夫か?」
アライグマ男は、右手の親指を上げた。
「敵が見えるか?」埼玉ネコは、苦しそうに咳込みながら聞いた。
「煙で見えない。沖まで泳いで様子を見たほうが良い」

埼玉ネコとアライグマ男は、鉛のような身体を懸命に動かして沖まで泳いだ。
埼玉ネコは途中で胃の中の物を嘔吐した。

やがてパトカーのサイレンが遠くから聞こえた。
「もう去っただろう」アライグマ男は、泳ぎを止めて埼玉ネコに言った。
「そうだな。あの埠頭まで泳ぐか。」埼玉ネコは苦しそうな表情で右側の埠頭を指差した。
「ハードな仕事になったな」埼玉ネコは愚痴るようにアライグマ男に言った。

「男の仕事は常にハードだ。命なんて、ちっぽけな物だろ」アライグマ男は淡々と泳ぎ始めた。
「命は大切にして金庫に閉まっておくもんだぜ」埼玉ネコも気力を振り絞って泳ぎ始めた。

埼玉ネコは懸命に泳ぎながら昨日会った女の事を思った。
全ては、そこから始まった事だ。

昨日の午後、その女が扉をノックした瞬間に始まる。
posted by sand at 12:54| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

暗黒星の秘密B

LIONEL RICHIE.jpg

埼玉ネコは、ベレッタを構えて敵の車内を、恐る恐る覗き込んだ。首のない死体の横に、敵のガンマンが血を流して、うつぶせになっている。男が銃を持って無いのを確認して、顔を数回叩くと意識を取り戻した。

「誰がボスだ?」埼玉ネコは聞いた。
男は口を、つぐんだままだ。埼玉ネコは、銃を男の頭に当てて、もう一度聞いた。
「ライオネル・リチ男だな?」男は、それでも返事をしなかった。埼玉ネコは、銃口を男の耳たぶに当て、引き金を引いた。
爆音がして、男の耳が半分、吹っ飛んだ。
「おあああああ!」男は悲鳴を上げた。
埼玉ネコは、もう片方の耳に銃口を当て聞いた。
「ライオネル・リチ男だな?」
男は、ヒ〜ヒ〜泣きながら命乞いをはじめた。
「助けてくれ〜。本当に知らないんだ。」

「アジトは、どこだ?」埼玉ネコは聞いた。
男は、咳込みながら「F市のベイサイド・ビルの跡地だ」と言った。

エンジン音がして、かなり遠くの場所に黒塗りの車が止まった。「遠いな」アライグマ男は、つぶやいた。

数人の男が降りて、中の一人が、バズーカ砲を構えているのが見えた。
「バズーカだ!吹き飛ぶぞ!海に飛び込め!」埼玉ネコは、声をかけると、ガードレールを乗り越えて、海に向かって走った。

発射音がして、バズーカ砲が壊れた車に着弾した。火柱が上がり、耳をつんざく爆音が響いた。爆風が、海に飛び込もうとしている埼玉ネコとアライグマ男を殴りつけるように捕らえ、彼らを遥か沖合まで吹き飛ばした。
posted by sand at 03:44| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月03日

暗黒星の秘密A

モーゼル.jpg

数回の銃声が響いて1発はフロントのサイドミラーを粉々に打ち砕いた。アライグマ男は、ハンドルを左右に切って蛇行を繰り返した。埼玉ネコは、左手を窓から突き出してベレッタを数発発射したが、敵も左右に揺れ動いて目標を捕らえきれない。
もう一度、敵は発砲してリアガラスを粉々に吹き飛ばした。二人に怪我は無かったが、リアガラスが吹き飛んで敵に室内が丸見えになってしまった。

アライグマ男は、バックミラーで敵の場所を確認すると「替われ!」と怒鳴ってハンドルから手を離した。
埼玉ネコは、飛びついてハンドルを押さえた。
アライグマ男は、振り向き様にモーゼルを1発発射した。轟音が車内に響いた。
アライグマ男の放った弾丸は、吸い込まれるように運転手の眉間を貫いて後頭部を綺麗に吹き飛ばした。

敵の車はコントロールを失って、ガードレールに接触し火花を上げながら数メートル進んだ後、電柱に激突し、フロントを大破して止まった。

アライグマ男は、ハンドルを握り直すとブレーキを踏んで車を止めた。
「たいした腕だ」埼玉ネコは、感心してアライグマ男に言った。

「命は、カゲロウのようだ。捕まえようと焦れば焦るほど、両手の隙間を飛び去って行く」
アライグマ男は、そう言うとモーゼルを構え、ドアを開けて外に飛び出した。

「詩人のガンマンか。痺れるね〜」埼玉ネコは、惚れ惚れしながら後に続いた。
posted by sand at 03:57| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月02日

暗黒星の秘密@

トヨタ2000GT.jpg
Four Symbol.jpg

外からクラクションの音が聞こえた。
私立探偵・埼玉ネコは、ベレッタを手にドアを蹴破って外に飛び出すと、相棒のアライグマ男が、愛車トヨタ2000GTを横ずけしている。
「乗れ!車で逃げた。後を追うぞ!」アライグマ男は、怒鳴った。
「OK!相棒。俺をこの世の果てまで連れてってくれ!」埼玉ネコは、叫びながら車に飛び乗った。

トヨタ2000GTは、爆音を上げて通りに飛び出した。
アライグマ男は、アクセルを一杯に踏み込んで焼き切れる寸前でシフト・チェンジした。モウモウと煙が舞い、焼け焦げる匂いが充満した。

海岸沿いの一本道で、敵の車に追い付いた。白のワゴンだった。アライグマ男は、少しづつ敵との距離を詰めた。

その時、タイヤを派手に鳴かせながら交差点を右折した黒いセダンが、後方につけて来た。
後ろを振り返ると男が身を乗りだして銃を構えている。
「撃って来るぞ!」埼玉ネコは、アライグマ男に叫んだ。

トヨタ2000GT.jpg
posted by sand at 02:56| 連作小説・暗黒星の秘密 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。