2005年07月10日

ガラスの海A

Sea Of Glass2.jpg

彼女は<ヘアーデザイナー>を目指していると言う。
その道の才能に溢れていると信じている。
例え、そうであったとしても可笑しい事など何もないのだが、彼女が口にする<ヘアーデザイナー>という言葉のイントネーションは独特だった。
普段、耳にする<ヘアーデザイナー>とは違って聞こえた。
彼女は、僕の知ってる<ヘアーデザイナー>とは違うものを目指しているのかもしれない。

「それで私は、ガラスの海の浜辺に立っていたのよ。」

「ガラスの海はね。赤い色をしていたわ。一面真っ赤なのね。それが、ちょっと意外だったわね。だって青いって予備知識あるじゃない。海って。
それが真っ赤なのよ。驚くわよ。もちろん私にしてみればって事ね。

浜辺には、波が打ち寄せていたわ。とても穏やかな波だった。ガラスの海はね。細かいガラスの結晶で出来てるのよ。それがね。チャラチャラ〜てね、風鈴みたいな音をたてて押し寄せては引いて行くの。そりゃ〜綺麗だったわよ。
遠くを見渡すとね。ガラスの結晶がユックリ、ユックリ動いているのが分かったわ。それがね。キラキラ、キラキラ輝いているのよ。宝石の海ね。まるで。

でも勘違いしないでね。ガラスの海は優しくはないわ。
それは鋭角に尖った集合体なのよ。どんなに綺麗に見えたとしても本質は、そうなの。
美しさに惑わされて、一度、その海に足を踏み入れたら。それこそ地獄よ。
ガラスの海は、ズタズタになるまで、その人を切り刻むわ。
そんな冷淡な集合体なのよ。その海はね。

浜辺はね。茶褐色で硬い砂だったわね。とても硬くてサラサラなんてしてなかった。それにね。
タイヤが、そこらじゅうに転がっているのよ。そうそう。車のタイヤね。半分、砂に埋まったり、そのまま横たわっていたり、とにかく、いたるところにタイヤが落ちてるのよ。

海の周りは、大きな丸い葉が茂ったシダのような木に覆われていたわね。振り返ると、ずっと向こうまで、その木が立ち並んでいた。

それでね。もう一つ不思議なのがね。空なのよ。
青い空なんだけどね。雲が全然見えないの。澄みきった青空とか言うじゃない?そんな青じゃないのよ。もっと鮮明で、真っ青なペンキを塗り込めたような感じなのよね。
それにね。距離感が、まったくないのよ。青色のテントで頭上を覆ってるような気がしたわ。
手を伸ばすとね。すぐに触れられそうなのよ。空にね。」

彼女は、そこまで話すと言葉を切って新しいタバコに火をつけた。
冷房の効いた店内に、白い煙がユラユラと昇っていく。

「トリックよね。
これはトリックだと、その時、私は直感したの。
人はね。その場所に立つと我を忘れてしまうのよ。赤い海の美しさと手の届きそうな空に騙されてしまうのよ。きっと。
海はね。人を傷つけたいのよ。血を求めているの。海の色が赤いのは、その所為よ。

人は、空と海に幻惑されて自分の求めているものが、すぐに手の届く場所にあるように錯覚しちゃうのよ。自分は選ばれた特別な人間だと信じ込んじゃう訳ね。いい気になっちゃうって事ね。
それが血に飢えた海の策略なのよ。思うツボって訳ね。

そうやって人は、ガラスの海に足を踏み入れるのよ。輝ける宝石の海だと思ってね。
でも、それは大間違い。ガラスの海に傷つけられバラバラに壊されちゃうって訳。」

そこで彼女の話しは僕の中から消えてしまった。
彼女は、その話しを、それからも続けたのかもしれない。どこか別の場所に話しが飛んで行ったのかもしれない。

でも僕には、もう聞こえていなかった。
僕は別の場所にいたから。

僕は、ガラスの海の浜辺に立っていた。
そう言えば、ずっと昔から、この場所に立っていたような気がする。
僕の欲しいものは手の届きそうな場所に貼り付いている。

でも僕は、どうしても踏み出せないんだ。このガラスの海に。
posted by sand at 04:02| 超短編小説A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月09日

ガラスの海@

Sea Of Glass.jpg

彼女は僕の前に座ってタバコを吸っていた。
そこは、ある病院の中にある喫茶店で、彼女の瞳は鉛のようだった。

彼女と知り合ったのは、同じ病院に入院している母を見舞った時だった。
母は同年代よりも、ずっと若い子との交流を好んだ。
母と彼女は、いつも一緒にいてタバコを吸っていた。

母と3人で話しているうちに、僕と彼女は2人で話しをするようになった。
彼女は僕と同年代か、もう少し年上のように見えた。
彼女が僕に好意を寄せているのは、すぐに分かった。でも、それは、ひどく粘着質な感じがして僕は、それを恐れた。

それでも彼女と2人で会った理由は、彼女が壊れそうなほど美しかったからだ。

彼女は、この病院特有の甘い香りを漂わせ、唇にはベットリと赤い口紅が塗られていた。アイラインは太く鮮明な青色に引かれ、ドロンと垂れ込めた光のない眼は、ほとんど瞬きをしなかった。
それでも彼女には、持って産まれた宿命的な美しさがあった。どんなに隠しても隠す事など出来ない。
ケバケバしい装飾の下に、今にも消えそうな程の蒼い美しさを湛えていた。

僕は彼女の脆く壊れそうな顔を見ていたかった。

彼女との会話は、一方的なものだった。
彼女は、のべつまくなく話続け、タバコを吸い続けた。
彼女は、ほんの2〜3cmタバコを吸うと、すぐにそれをもみ消した。
彼女が裕福な家庭で育てられた事は、言葉の端々からうかがわれた。

彼女は自分には特別な才能があると信じ込んでいた。
実際そうなのかもしれない。
でも、自分はこんな場所に押し込められている。そんな嘆きを彼女は口にした。

僕には彼女の嘆きが、それほどシリアスなものには受け取れなかった。
それは薬の作用かもしれないし、彼女が嘆く事をかき集めている所為なのかもしれない。

彼女の前に置かれた丸い灰皿には、タバコの吸殻が竹藪のように立ち並んでいた。

僕は、それを眺めながら別な事を考えていた。

「ちょっと聞いてる?」彼女は僕に声をかけた。
僕は彼女の話しを見失っていた。

「それで私は、ガラスの海の浜辺に立っていたのよ。」

彼女の話しは脈略を失ったまま、その場所に辿り着いていた。
posted by sand at 04:46| 超短編小説A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月07日

WORDS

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私は、いつの頃からか言葉を一つ無くしてしまった。
それが、いつ、どこで、そして何と言う言葉なのかは、どうしても思い出す事が出来ない。
それでも確かに言葉を無くした実感だけは感じる。

漠然と学生の頃だったのは覚えている。一人で音楽を聴いていた時だったような気がする。でも、それが誰の何って曲だったのかは、やはり分からなかった。

卒業してOLになり、やがて結婚して子供が出来た今でさえ、思い出す事はなかった。
いつの日にか思い出すだろう。そう思い続けて来たのだが、ついに、その機会は訪れなかった。

普段は、言葉を失っていても何の問題もなかった。ごく普通の生活、ごく普通の家族。何も欠けている事はなかった。

ただ、家族が寝静まり一人で鏡台に向っていると、それはゾッとするほどリアルに感じられた。

私には、あるべき言葉がない。

ジグソーパズルの失った1ピースのように、それはポッカリと心に穴を開けていた。
安定を失った心は、嵐の夜を航海する小船のように私の気持ちを揺らした。
私は、きつく目を閉じて、その嵐が、おさまるのを待つしか無かった。
鏡の中の私は震えていた。玉のような汗がガラスのテーブルに一粒落ちた。

その日、それは突然やって来て私を飲み込んでしまった。

日曜日の午後、私と夫は車の中にいた。
子供達は、実家の母に預けて久しぶりに二人で買い物をした帰りだった。
車中にはFMラジオの軽い音楽が流れ、今にも眠ってしまいそうな穏やかな午後だった。
夫との会話も、どこか夢心地で気だるい感覚に身を任せ、それを楽しんでいた。

その時、ラジオからその曲が流れた。
私は電流に打たれたように飛びあがってしまった。
これだ!これだ!この曲だ!

私は持っていたハンドバックを乱暴に引っくり返し、震える手で筆記具を捜し求めた。
夫は唖然として私に声をかけたが、その声は私の耳には届いていなかった。

ポールペンと手帳を見つけると、ラジオのボリュームを上げ耳をそばだてて身構えた。

曲は、呆気なくフェイド・アウトされDJの涼しい声が続いた。
「懐かしい80Sヒットから、F.R.DAVIDでWORDSでした。」

私は、それをメモに書き付けると一気に身体の力が抜けていった。

夫に詫びを言うと荒い息で額の汗をぬぐった。
背中がグッショリ汗で濡れている事が何より私自身を驚かせた。

私の頭に中は、真っ白になり何も考える事が出来なかった。
それでも、ただ一つの揺るぎ無い確信が私を貫いていた。

何かが動き出した。何か強い力が。

F.R.DAVID「WORDS」の切ない?プロモ・ビデオは↓で。
http://www.eurodancehits.com/video/f-j.html

F.R.DAVID氏、日本最大のファンサイトは↓で。
http://www.sutv.zaq.ne.jp/ckabx107/MUSEUMFRAME.htm
posted by sand at 03:04| 超短編小説A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月05日

カルピスの頃

カルピス.jpg

カルピスの頃。
君にも憶えがある。懐かしくて、あったかい。
でもね。それって違うんだ。君は記憶に騙されている。そこにあったのは暗い予感なんだ。

昭和40年代には確実にカルピスの頃が存在した。
それ以外の年代にも存在したのかもしれない。今でもカルピスの頃と呼べる年代があるのかもしれない。
でも、ある時を境に君の中では終わってしまう。いつの間にかカルピスの頃は、その姿を消してしまう。

小学生の夏休み。友達の家に遊びに行くと、友達のお母さんが白いエプロンをしてカルピスを運んで来る。
オレンジ色の水玉模様をした細長いグラス。細かく砕かれた氷。たっぷりと注がれた白いカルピスが冷たい汗をかいている。
君はガラス製のマドラーでカルピスをクルクル回す。氷がカラカラと涼しい音を鳴らす。
窓の外で騒がしく鳴き続ける蝉の声。軒下に下げられた陶器の風鈴。
昭和40年代の夏はカルピスと共に存在したんだ。

君は「夏の友」を広げて宿題を解こうとする。でも何度読んでも頭に残らない。
もう何度、同じ箇所を読み返しただろう。

友達の家はモダンな洋風で瓦葺だ。藁葺きにトタンを被せた君の家とは訳が違う。
いいな〜。2階建ての家って。
君は2階に上がりたくてたまらない。
応接間もフンワリしたソファが置かれ、難しそうな本が並べられた大きな本棚がある。
君の家の総畳敷きとは天と地の開きがある。

君は豪華なソファに居心地悪く座って、カルピスが次第に薄く透明になって行くのを眺めている。
友達が宿題から顔を上げて君にニッコリ微笑む。「どう?」って言ってるみたい。
「うんうん。最高だよ。君の家って。」君は、そんな顔をしてカルピスを飲み干す。
冷たい氷が頬に触れて、君は頬が赤く染まっている事を知る。

カルピスの頃は甘い香りと豊かな記憶の中にある。

でも、それって出来過ぎだよ。そんなはずがない。
記憶は君から何かを奪い去ろうとしている。そこには暗い予感があったはずだ。
そうだったんだと思うよ。そんなに幸せだったなんて信じられない。
信じたくない。
posted by sand at 04:42| 超短編小説A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月03日

Snowflakes / The Durutti Column

snow.jpg yuki.jpg

「雪の日にボートに乗るのよ」
妻は、私に、こう言った。

彼女から、それ以上の説明は、なされなかった。
雪の日にボートに乗る事が、彼女に何を、もたらすのか、私には、見当もつかなかった。

その日は、12月の寒い朝に、やってきた。
妻は、朝起きるとカーテンを開け、窓ごしに外を眺めていた。
昨夜からの雪が薄っすらと屋根に積もっているのが見えた。

彼女は、腕組みをしたまま何度か、うなずくと、私に「今日ね」と言った。

私と妻は、湖がある公園に車を走らせた。
彼女は、黙って窓の外を眺めていた。

公園の駐車場に車を止めて、湖の方向に歩き出した。
「こんな日に、ボートを貸してくれるとは思えないな」私は妻に話かけた。

妻は、こう返事をした。
「大丈夫。もう決まっているの」

妻の言う通り、貸しボート乗り場には係員が、しっかり待機していて、何事もなく、我々はボートを借り受けた。

私は、凍てつく湖の中に、ボートを漕ぎ出した。
先ほどから、一段と雪が強く降ってきた。
みるみる視界が真っ白になり、我々は湖の中に孤立してしまった。
私は、慌てて、辺りを見回した。
妻は、微笑みながら、こう言った。
「慌てないで、もうすぐ、来るわ」

「あら!久しぶりね」雪の中から女の声が聞こえた。

妻は、声の方向に語りかけた。「久しぶり〜、元気やった?」

「ボチボチやってるわよ」笑いながら<雪の精>が現れた。<雪の精>は、キラキラ輝いて半透明に見えた。

「あ、ウチの旦那」妻は私の方向に顔を向けて言った。
<雪の精>は、私に顔を向けるとブッと吹き出して笑った。「あなた、面食いだったのにね〜意外だわ」<雪の精>は、そう言って笑い出した。

「私も意外なのよ」妻も、そう言って笑った。

「ねぇねぇ。あのオヤジ憶えている・・」<雪の精>と妻は、共通の知人について、しばらくペチャクチャとお喋りを始めた。私は、最初の興奮から醒めて、だんだん寒くなってきた。

「それじゃ、もう行かなきゃ。また会おうね」<雪の精>は、妻にそう言うとスッと雪の中に消えてしまった。

ボートの上には、私と妻が残された。
「君は、<雪の精>だったんだね」私は妻に聞いた。
「まあね」妻は肩をすくめて、そう言った。
「<雪の精>って、どんな生活してきたの?」私は聞いた。
「どんなのって言われても、退屈な生活よ」妻は、興味無さそうに言った。
「はぁ〜、じゃ、どうして君は<雪の精>を辞めて、僕と結婚したんだい?」もう一度、妻に聞いた。
「そんな事、こっちが聞きたいわよ!どう間違えちゃったのかしら」妻は、そう言って笑った。

「さぁ、寒いから、もう帰りましょう。帰りにダイエーに寄って買い物しましょう。銀行に寄ってお金も引き出さないとね」妻は私を促した。

私は、ボートを岸に向けて漕ぎ出した。
雪は、小降りになっていた。

しばらくたって、妻は、私に言った。
「ねぇ、あなた会社の2段目の引き出しに、エッチDVD隠し持ってるわよね?」
私は、ギクリとした。

妻は続けて。
「私は<雪の精>だったのよ。ちょっとした能力があるのよね。
あなた、会社に好きな女がいるでしょ?名前、言ってあげましょうか?」

そう言って、かって<雪の精>だった妻は、悪魔のように笑った。
posted by sand at 00:00| 超短編小説A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月01日

Wild Horses

jordan the comeback.jpgHorse night.jpg

夜中に目が醒めると、横に妻はいなかった。

彼女は、窓際で煙草を吸っていた。
サッシ越しに月明かりが彼女の横顔を照らしている。

「どうした?」
「ん?ちょっと寝つけなくて。もう寝て良いわよ」妻は、そう言った。

「うん」私は、横になって目を閉じた。隣の部屋で子供達が寝返りをうつ音が聞こえている。
時計がコチコチと時間を刻み続ける。

「なあ。」私は妻に声をかけた。
「うん?」
「これで良かったのかな?こんな人生で良かったのかな?」

妻からの返事は、なかった。私は沈黙の意味を考えていた。

しばらくして、妻は返事の替わりに「ふふん」と鼻で笑った。
「よかったのよ」窓際から彼女の声がした。
「そうか」私は安堵する。

「ねぇ。<幸せ>って、どんな形してると思う?丸いとか四角いとか、大きいとか小さいとか」
妻は私に聞いた。

私は、少し考えてから「人と同じ形。そっくり人と同じ形」と返事をした。

「ふうん。なるほどね。私はね?」
「うん」
「<幸せ>って馬の形をしていると思っているわ。強くて逞しい馬」
妻は、そう言って一人で笑った。

「馬か・・。考えた事もなかった」私は言った。
「そう。じゃあ考えてみて。その価値は、あると思うわ」

私は、心の中で、逞しい馬を追いかけてみる。
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2005年05月03日

ささやく夜

Restless Nights.jpg

彼女は、ずいぶん年上で結婚していた。

彼女は、平日の午後にやってきて、夕方までには僕の部屋を去って行った。
彼女が僕の部屋にいる間、窓のカーテンは、決して開かれる事が無かった。

僕と彼女は締め切られた薄暗い部屋で執拗に求め合った。
僕は、おびただしい程の精液を撒き散らし、部屋には薄汚い臭気が立ち込めた。

閉め切られたカーテンの隙間から細長い明かりが射し込んで来る。それは、彼女の裸の身体に線状の模様を描いた。僕は、その明かりの線を指でなぞる。
彼女の身体は、痩せて骨が透けて見えた。薄い胸には、ささやかな膨らみと黒くて大きい乳首があった。
僕はその乳房にすがり付くように唇を這わせた。

彼女は低く擦れた声をあげた。それが、ひどく不快に思えたり、溶けるほどのエロスを思わせたりした。
彼女は、僕の背中に爪を立て、僕の肩や耳を強く噛んだ。まるで僕を憎んでいるようにも思われた。

多分、彼女は僕に抱かれながら、深く傷ついていたのだと思う。そして、それを思うと僕も傷ついた。
でも僕は彼女の身体が欲しかった。ただ、だらだらと彼女の身体に、まとわりついていたかった。

彼女のいない夜に彼女の舌使いや蒸せ返るような体臭を思ってオナニーを繰り返した。
僕はクズなんだ。そして、それを彼女も知っている。

彼女は、ささやくように声を潜めて話をした。
僕は射精後の朦朧とした意識の中で、その話に耳を傾けているふりをしていた。
でも、その話を一つとして憶えていない。

彼女は陰部を明け渡した後でさえ、僕に手を握らせる事はなかった。
彼女は手のひらを見られる事が、ひどく恥かしそうだった。

彼女は僕の前では、必ず両手を握り閉めていた。
あの時、彼女は何を握っていたんだろう?僕から何を守ろうとしていたんだろう?
posted by sand at 15:35| 超短編小説A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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